亀に乗ってホテル浦島へ
鬼ヶ城、花の窟神社、熊野速玉大社、神倉神社とまわってきた。時刻は16時くらい、少し早いが10月2日の行程を無事に終える。
自分は旅をするとき、予定を詰め込みすぎてしまう。そうして時間が足りなくなって断念するスポットがあったり、夜頃まで動き回ってへとへとになってしまったりする。今回はもう少しゆとりを持たせてもいいんじゃないかと考えていた。
温泉、宿に泊まらなくても、日帰り湯でのんびりして疲れを癒やす。あとに予定がつかえていない状態でゆっくりできることを想像すると、それだけで極楽気分になってくる。足は港へと向かった。

「ホテル浦島」は、那智勝浦にある狼煙半島(のろしはんとう)をほぼまるまるホテルにした超巨大な温泉リゾート施設。狼煙半島は急峻な岩山となっており、各所に温泉が湧いている。本館から迷路のように伸びた長い廊下はそれぞれの地形を活かした別館につながっており、山上館へと向かう高低差77mのエスカレーターはちょっとした名物だという。
ホテルへは車でも行けるが、港から船で向かうこともできる。船は龍宮城に向かうというコンセプトなのか、亀のようなデザインで作られているらしい。港特有の潮と魚の匂いが混じったぬるい風が吹く。夕日があたる海面は白く光りながら揺れて、油のように見える。「見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮」(新古今和歌集、藤原定家)。
ほんとうに船が来るのか不安になってきた。気だるそうに西日を背にしている警備員のような人に尋ねると「ホテル浦島行きの船はもうすぐ来るよ」とのこと。ほっとしてぼーっとしていると疲れが出てくる。

亀のお船がほんとうにやってきた。小さな子どもがいれば、どかっと盛り上がる瞬間だろうなと思う。思いながら大人の自分もテンションが上がる。今から亀のお船に乗る。その先で温泉に入る。今日はもう歩かなくていい。これはすばらしい時間の使い方。
つづく
