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76年ぶりの邂逅 生誕140周年記念企画 Foujita in New York ニューヨークの藤田嗣治 @軽井沢安東美術館 (前編)

藤田嗣治の生誕140周年を記念して、今年は藤田作品を訪ねて、あちこちの美術館を巡っている。推しなんですか?と問われると、困ってしまうけれど。

今月7月は、藤田の作品だけを常設展示する軽井沢安東美術館を訪ねた。ここでは7月11日から翌年2027年1月11日まで、生誕140周年記念企画「ニューヨークの藤田嗣治」が開催されている。藤田作品を多数収蔵するポーラ美術館や目黒区美術館をはじめとする全国の美術館の協力を得て、ニューヨークで制作された作品を中心に紹介する展覧会だ。

日本中が暑さで煮え立っている今夏、流石の避暑地軽井沢も午前中だというのに陽射しが痛いほどに照りつける。飲料水を携帯して、軽井沢駅北口から美術館まで徒歩で向かう途中、木陰に身を寄せて見た矢ヶ崎公園に咲く睡蓮の涼しげだったこと。

矢ヶ崎公園の遊歩道を歩く
まるでモネの睡蓮さながら
駅から徒歩10分程で軽井沢安東美術館に到着
軽やかで洗練された外観
サロン・ル・ダミエ
オリエンテーション動画には
ニューヨークに向けて旅立つ藤田
展示室は1Fと2Fにあり、
左手に見える中庭をぐるりとロの字に囲っている
展示室1 第1章 1940年代
敗戦から日本脱出まで

壁がシックな深緑色の展示室1には、「戦争協力者」の謗りを受けていた時代の作品が並ぶ。

続く展示室2は、第2章 1949年 ニューヨーク滞在記 と題されていた。がらりと変わった明るい黄土色の壁色は、アメリカに渡った藤田の高揚感を表しているのか。1949年、ついにアメリカ入国のビザを得た藤田は、日本を脱出しニューヨークに向かう。藤田63歳の時だ。

<書簡(フランクシャーマン宛) 1949年>
この展示室には、渡米直後に書かれた藤田の絵手紙<書簡(フランクシャーマン宛) 1949年> が展示されている。手紙の中で溌剌と動き回る藤田の、なんともコミカルでチャーミングなこと!

展覧会のフライヤーにも、
る明るい黄土色が使われている

目黒区美術館蔵の絵手紙<書簡(フランクシャーマン宛)>は、3期に分けて展示替をするそうだ。私は藤田の絵手紙が大好きで、時間を忘れて見入ってしまう。

ペン、水彩、紙 1949年4月11日
目黒区美術館蔵
お気に入りの最新の電気アイロンで、
せっせとアイロンがけをする藤田
ペン、水彩、紙 1949年4月18日
目黒区美術館蔵
二重重ねのシチュー鍋をみつけた藤田は、
冷たいご飯を温める蒸し器を作った!
同上(部分)
シチュー鍋の底に穴をあける
hot tea and rice  お茶漬け?を啜る藤田
ペン、水彩、紙 1949年4月26日
目黒区美術館蔵
妻君代の渡米を待ちきれない藤田
ジーンズのつなぎ姿で洗濯してる可愛いおじいさん


芸術的転換となった マシアス・コモール画廊での個展

日本から解放され、豊富な画材に囲まれ、息を吹き返したかのような藤田。ニューヨークでの約半年間の成果を発表したマシアス・コモール画廊の展示を彷彿とさせる。

マシアス・コモール画廊での作品配置図(日記)
木製ベンチを中央に置き、
大作「ラ・フォンテーヌ頌」と「猫の教室」が並ぶ
右手が「ラ・フォンテーヌ頌」1949年 ポーラ美術館蔵
左手が「猫の教室」1949年 軽井沢安東美術館蔵

この二つの作品が共演するのは、1950年のパリのポール・ペトリデス画廊の個展以来で、76年ぶりなのだとか。

 「ラ・フォンテーヌ頌」(部分) 
図録「再生と挑戦のニューヨーク」から複写

「ラ・フォンテーヌ頌」の擬人化された狐の家族の描写も素晴らしいが、この作品の舞台となっている室内の雰囲気は独特だ。実は、フライパンが並んだキッチンや、奥の階段や漆喰壁は、藤田が作った「フランスの田舎家」の模型(1946年)とそっくりなのだ。
もともと普請好きの藤田だが、戦後失意の底にあった彼は、理想とした家を手作りし、それを繰り返し平面作品で表現していた。

家の模型と藤田 1949年 撮影 土門拳
家の模型を様々な角度から部分撮影したもの
ミニチュア模型ですよ、コレ
作品紹介の動画から拝借 「猫の教室」 (部分)
天井の梁や漆喰壁にご注目

そして中央の木製ベンチを挟んで、反対側の壁に展示されていたのが「美しいスペインの女」である。黒衣を纏った女性を描いたもので、黒いヴェールを被っているところもポーズも、何となくダ・ヴィンチのモナリザを思い出させる。特に、ヴェールの描き方が脅威的で、緻密な質感表現は思わず触りたくなる程だった。さすが布好きの藤田嗣治である。額縁も本人のお手製で、周囲には素朴なレリーフが彫り込まれており、ニューヨーク滞在中の濃密な制作態度が想像されたのだった。

「美しいスペインの女」1949年 豊田市美術館蔵


素晴らしい作品が目白押しで長文になってしまった。ここまでお読み下さり、ありがとうございました。
後編では、今展覧会で私が最も好きな作品を紹介したいと思っている。






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