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いつか帰るところ

俺の家って、どこにあるんだ?

今賃貸で借りてるだろう、ってツッコミではなく、なんていうか、びしってハマるような家です。
旅の最後にたどり着く、安住の地です。

街は便利です。静かですし、清潔ですし、なんでも揃います。
Amazonもすぐ来ます。ちょっと怖いくらい来ます。
だけど、ときどき妙な違和感があります。何かが根本的に足りない。

そう、自然だ、自然が足りない!

ふと、『赤毛のアン』の一節を思い出します。
アンは、自分の家を見つけたときにこう言います。

「あたしは木のないところじゃ住めないでしょうよ。
あたしの内にひそむ或る生命力が飢えてしまうのよ。」

この子は、理屈ではなく、身体でわかっているのだと思います。

自然がないと、なんだか調子が悪いなあってことを。

養老孟司先生も似たようなことを言っています。
現代の人は頭で考えすぎて、身体の感覚を置き去りにしてしまった。
だから、ときどき田舎に帰りなさい、自然を取り戻しなさい、と。

身体はもともと自然のものだから、ということだと思います。
言われてみれば確かにそうだ、身体はコンクリートでできてるわけではない。

風や空気を感じて、今日の自分はどうだろう?
どこか力が入ってないか?と身体の声を聞くことが、生き物なんじゃないかなって思います。

そういえば、キジバトの鳴き声を最後に聞いたのは、いつだったんだろう?

子供の頃は、意識しなくても聞こえてきました。
セミの音も、カエルの声も、風の音も。

少し歩くだけで山があり、草の匂いがして、空気が違いました。
あの頃は「自然を探す」なんて発想すらなかった気がします。勝手にそこにありました。

今は違います。
自然は「探しに行くもの」になってしまいました。

なんだか調子が悪い気がして、数年前から家探しが始まりました。



まずは故郷の中古物件から探しました。
故郷であれば頭の中に地図がありますし、どう暮らすかも想像がつきます。

適当に不動産屋さんに行って、内見。

おおかた予想はしていましたが、どこも生活感がありすぎる!
置きっぱなしのベッドやタンス…いろいろついてるキッチン。
これ、売る気があるのだろうか…?という考えは一旦置いといて、想像力を働かせて暮らしを思い描いてみます。

でもやっぱり、案内してくださった物件は、なんていうかこう、
自然!って感じではありません。
住宅地のなんてことない家です。別に買わなくてもよかろうと思いました。


そういえば、うちの近くは別荘地だったな、と思い出して、今度は自然に全振りしました。
中古別荘専門の不動産屋さんに行きます。

案内してもらった物件はどこも、モロ自然の山の中。
空気がおいしい。
それに中も綺麗だ。なんかこう、ちゃんとしてる。
生活感がないぶん、逆に理想に近い。

でも問題はあります。
あまりに自然すぎる。まわりに何もない。

近くのスーパーまで車で20分。
ただでさえ石油が高くなっているのに、毎回これか…?
やはり自分で歩きたい。自転車でふらっと買いに行きたい。

それに、もしこのスーパーがつぶれでもしたら?
そのときはもう、ハンターになるしかありません。

うーん…。

それじゃあ思い切って高級別荘だ、と車を走らせて見に行きましたが、
内装を見るまでもなく、生活とはあまりに程遠いです。
近くにコンビニもスーパーもない。

金持ち特有のネットワークでもあるのかな?
Uber自然版みたいなやつがあるのかもしれませんが、よくわからないです。

結論として、いずれの家も値段に見合った家ではない、ということです。


もしかして1から作ったほうが早いんじゃないかなぁ、と不動産屋さんに聞いてみました。

そしたら
「今は大工の人手不足と資材高騰で、中古で見たものと同じ家を建てるにしても、倍以上はかかります。」
とのことです。

人手不足と資材高騰…その問題の2つは、どうしようもないことです。
新築の値段は、これからも上がり続けるのでしょう。

なんというか、自然に住みたいだけなのに、難易度が高すぎるゲームになってきました。

俺の理想の家ってなんなんだろう。
行動しただけでは、どうもわかりませんでした。

ならゲームの家はどうだろう?

1 ウィッチャー3 ワイルドハント
ゲラルトの家、コルヴォ・ビアンコ


ブドウが取れるからっとした気候、狭いながらも落ち着きのある内装。
芝生の上で読書すれば、1日が穏やかに過ぎていきます。

しかもトゥサンの街、商店、銀行まで徒歩10分とかからない!
あまりに好条件の立地。

ゲラルトさんが長い放浪の後、旅の終着点に選んだのも無理はありません。
それほどトゥサンという御伽の国は、平和で豊かなのです。

おそらく、無理難題な怪物退治や人間関係のトラブルのもつれでも、
人として誠実に向き合ってきたゲラルトさんだからこそ、手に入れられた家なのかもしれません。

2 DORDOGNE(ドルドーニュ)


マイナーなゲームですが、フランス版『僕のなつやすみ』と言うと、なんとなく通じるかもしれません。

主人公ミミは夏休み、ドルドーニュにあるおばあちゃんの家に預けられます。
この家がまた素晴らしい。


見晴らしのいい丘。
近くに山や川。
そしてなにより、市場に歩いて行ける距離。
車いらずです。




これ、さっきまで「スーパーまで車で20分」で悩んでいた自分からすると、ほぼ理想形です。
自然もあるし、生活もちゃんとある。このバランスがちょうどいい。

ゲームの最後で、ミミはおばあちゃんのことを思い出し、この家で暮らす決意をします。
場所って、ただの土地じゃなくて、記憶とか、人とのつながりとか、そういうものが積み重なったものなんだなと思いました。

しかも昔のボーイフレンドもおまけについてきて。
なんてうらやましいんだ…!
家だけじゃなくて、人生ごとセットで完成してるじゃないか。

3 ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム

思えば、家探しを始めたのはこのゲームがきっかけでした。
リンクにできるなら自分にもできるだろう。
剣を振るのも、料理をするのも、そして家を手に入れるのも。

イチカラ村を見下ろせる高台に、自分だけの家をクラフトできる。
ハイラルという、厄災ガノンに目をつぶれば素晴らしい土地に、自分だけの家を持てる。

しかも、自分で作れる。

山と草原と海を見渡せる家を作り、ティアキン中、一番ドーパミンが出ていた瞬間でした。

ぼーっとしながら料理をして、赤い月を待ち、一日中寝てる。

そして、次はどこへ冒険へ出かけようと地図を広げ、
エポナに乗り旅に出る。

自分の好きな場所に家を構えることが、こんなに嬉しいことだとは思いませんでした。

最高じゃないか…!

……厄災に目をつぶれば。


4 GTAオンライン
リッチマンズヴィラ




GTAの大型アップデートで追加された、超ド級の豪邸です。

庭つき、プールつき、
ビジネスを一括管理できるオフィスあり、
車のガレージあり、ヘリの着陸場あり。
犬と猫もついてくる。

ちょっと自然が足りない気もしますが、おそらく「ないものがない」家です。

ここまでくると、もはや家というより「城」です。

問題はひとつだけあります。
というか、ひとつじゃないんですが、一番大きいやつです。

治安が、終わっている。

一歩外に出れば、操縦にミスった戦闘機がドカンと落ちてくる。
避けられないサテライトカノンが空から降ってきて、
街中は戦車やドローン、銃の乱射と衝突事故だらけ。

家の中がどれだけ快適でも、外が世紀末です。

おまけに嫌でも関わることになる隣人は
トレバー、フランクリン、マイケル…。
この町は誰一人まともなやつがいない。
いても警察のヴィンセントくらいかな?


……これはこれで楽しそうではあるけど、住みたくはない。

そして現実で叶えようとすると、
おそらく100億あっても足りないでしょう。

いや、仮に足りたとしても、
この治安までセットでついてくるなら…。




こうして見てみると、どれも日本で叶えるには無理難題があります。
やっぱり理想の家を持つのは、無理なのかなぁ…。

ウィッチャー3 ワイルドハントのゲラルトさんの言葉が、なぜか耳から離れません。

「時として、家とは長い旅路を経て見出すものである…。」

そうなのかもしれません。

いきなり見つかるものじゃなくて、
寄り道したり、間違えたり、変な物件を見たりしながら、
少しずつ近づいていくものなのかもしれません。

だから、たぶんまだ途中です。

それでも、やっぱり家探しは続けると思います。

想い続けていないと、
いざチャンスが巡ってきたときに、
それがどれだけいいものなのか、きっと気づけない。

そんな気がしています。

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