公然と話題にできることのありがたさ──『Femtech』読書感想文
今回の記事では女性の生理など身体の問題について直接的に触れていますので、そのような話題が苦手な方は閲覧はお控えください。
書籍データ
ハードル高すぎな婦人科受診
女性特有の課題をテクノロジーによって解決しようという試み全般を差し(今のところ類義語のフェムケアも含め、定義はやや曖昧)、2020年頃から世間一般にも認知が広がり始めた「フェムテック」。
そのフェムテックの現状を、産婦人科医である著者が解説しているのが本書です。
月経管理アプリや生理用品、妊活・不妊のサポート、更年期の悩みに応えるサービス、女性特有の病気予防──フェムテックに分類されるサービスは多岐に渡ります。
日本でも徐々に浸透してきてはいるものの、下記のような理由からアメリカに比べるとやはりその速度は遅めだと著者は指摘しています。
未病段階のサービスが育ちにくい国民皆保険の医療制度
サービス・商品の信頼性を裏付けるためのルールの未整備
女性の健康問題を「恥ずかしいもの」「秘めておくもの」と扱う風潮
自身の経験も交えて語りますと、
女性の大半は何かしら婦人科系に不調をきたしたことがあると思いますが、その時にまず立ちはだかるのは「婦人科受診」のハードルの高さです。
具合は悪いが病気かもわからない、妊娠でもない、他の診療科みたいに気軽にいけない、いつでも超混んでる。そしてあの……屈辱的ともいえる内診台(苦笑)
そこを超えて受診しても「異常はありません」と診断されたら、解決の術なくすごすごと帰って黙って不調を抱えながら生きなければいけなくなるやるせなさ。
そのような「病気じゃないけれど、あきらかにそこに存在する女性の不調」に対して、このフェムテックはきっと救世主になる存在なのではないか。
私自身、更年期手前なので、少しでも不調解消の希望が持てるだけで、なんだか目の前がキラキラしてきますね。
そして。
何よりもフェムテックという言葉が普及する恩恵だと思うのは、著者も指摘するように「今までタブーとされて公然と発言できなかった身体の悩みを、女性が表に出して語れるようになること(しかも深刻にならずに)」だと思います!!
女性の悩みは「知れば解決すること」が結構ある
10代の頃は、一ヶ月の間に自分でコントロールできない気分のアップダウンが生じることに本当に戸惑っていました。
生理前にやる気が本当に失われて何もできない状態になると、それだけで自分がダメな人間になったような気がして、「やっぱり私はダメなんだ」と自分のすべてを否定してしまったりなんてことも。
20代になって、月経管理アプリを入れることで、自分のメンタルの上下が生理周期と合致していることを実感してからは、かなり気が楽になったと思います。
例えば私は生理の直前に言い知れない不安に襲われるのですが「あと2日ほど我慢すれば本来の自分を取り戻せる」とその感情の期限を確認できるだけで、根本的な対処はできなくてもだいぶ救われるものがあるのです。
もちろん不調自体も辛いですが、「黙って耐えるしかない」「他者から理解が得られない」──このことが女性の悩みの大半を占めているのではないかと思います。
次の世代と何をどう語るか
この記事のはじめの方に書いたように、フェムテックのサービスや商品が市場に出回ることで、そのことを公然と話題に出せる免罪符となる効果が生まれていることが、私は非常に良いことではないかと思います。
最近思うのは、少なくとも家庭の中では性的(嗜好的な意味ではなく、生理的な意味)なタブーは少ない方が良いだろうということ。
家庭は、男女の関係性における一番の最小単位です。なので、そこで情報を交わすことに躊躇してしまったら、その先、外に開いた関係の中にその話題を展開していくことは難しいと思うのです。
私は男の子1人、女の子2人の子どもがいますが、小さい頃から入浴の際などに生理のことを隠したことはありませんでした。
子どもは経血を見て驚きますが、「女の人には月に一度必ずあること」と説明すると、「ふーん」と納得します。
「痛くないのか」「どこから出るのか」「なぜ出るのか」
年齢が上がるに応じて生理についての質問は変化しますが、その都度きちんと答えればいいのです。その子の成長に応じた回答を与えれば、それをごく自然に受け入れているように見えます。
「だから今日はママ、イライラしてるんだね」って言われるくらいに笑
最近、小4の長女が、自分の身体についての授業を受けたというので、
「そういう授業は今、男の子と女の子と別々なの?」
と夫と一緒に聞いたところ、
「一緒だよ。女の子にしかわからないことを、女の子だけに教えて何になるの?」
との回答。
なんだか頼もしいなと思います。
もちろん性にまつわる話題はセンシティブな内容を含みますから、場所や関係性によって言ってはいけないこともあると思います。個人的には、セックスについては子どもにどこまで話すべきかいまだに迷いがあります。
けれど本来ならば公然とコミュニケーションしないいけないことも、今は変にタブー視されているというのも事実だろうなと思うのです。
中高生が親に対して「お金がないから避妊具ちょうだい」って言えることの方が、黙って危険な性交渉を重ねて妊娠するという事態よりもよっぽど健全だし、
パートナーと月経周期を共有することは、身体や心のことを理解してもらい、余計な詮索を避け、配慮を引き出す上で重要なことだし、
不調があったら、ピルでもミレーナでもどんどん自分に合うもの試せばいいって男の人も含めて世の中全体がそう思う風潮になればいいし、
更年期がどうしようもなく辛いからこういう対処をしていると、同じような悩みを持つ仲間で大っぴらに明るく語れることは精神衛生上良いことだろうなと思います。
フェムテックがフォローする分野は、女性の誰にでも訪れるもの。
だから子どもたちにはより多くの「よく生きる」ための選択肢を与えられるように、たくさん身体の悩みを話していきたいなと思います。
ちなみに最近買ったこの本。
こういうこともなかなか公には語りづらいんですよね。タイトルがタイトルだし、書店で購入するのもちょっと躊躇してしまうけど、オンラインショップなら買いやすい。そういうところもテクノロジーの進化の恩恵なのかもしれません。
