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複雑な問題に対処するために意識しておきたいこと──『決断の本質』読書感想文


書籍データ

要旨と感想

エベレスト遭難事件、コロンビア号の爆発事故など、組織が決断を誤った実例を取り上げながら、なぜそうなったのかを丁寧に解説していくスタイルで"決断の本質(その裏側)"が描かれる。

その決断の成功と失敗を分けるのは、決断の瞬間にあるわけでなく、そこまでのプロセスにあるのだというのがこの本の趣旨。

聡明な人材の集まっているはずのチームが、少しずつの内部のズレを是正できないまま大きな判断ミスを犯すまでストーリーは、なかなかに怖い。


リーダー向けに書かれているが、メンバーレベルでも意識すれば飛躍的に今日の仕事が上向くと思う内容。

具体的にいえば、メンバーレベルでも意識し実行できることは下記の3つかなと。

  • 策や手段を探すことではなく、目標に目が向いているか

  • 認知的でなく、感情的な対立になっていないか

  • 偏見を自覚しているか、その上で、建設的な意見を発信しているか


以下に、個人的に重要だと考える本書のポイントをまとめました。

リーダーシップへの挑戦

リーダーとして意識すべきこと

  • リーダーが必要とするのは、障害が起きたときに計画を修正して代替案を見つける能力を、組織の全員が備えていることである。理解が共有されていれば、こうした協調性のある自主的な行動が自然に生まれる。逆に、共通の理解があってもコミットメントがなければ同じような問題が生じる

  • 私たちが偏った判断をしてしまうのは、人間の頭脳の認知・情報処理能力に限界があるからであり、それが意思決定の力を弱めているのだ。(決断は、人間の認識の力で行っていると見られているが、実際は常に社会的、感情的、政治的影響力を受けている)

  • 「現実を直視せよ〜〜〜こうあって欲しいという目で見てはならない

決定する方法を決定する

リーダーとして必要な態度

  • 判断のソースになる情報はフィルタリングがどの程度かかっているか、偏った分析になっていないかを見極める。

  • 多様性と同質性、どちらがよいということではなく、意思決定プロセスの節目ごとに、主な参加者の構成について最適化する。

  • 他者との議論と自身の決断のバランスも、眼前の事態の必要性に合わせる努力をする。

  • 失敗した時には、どう誤ったのかではなく、なぜ誤ったのかにフォーカスする。

アイディアの衝突を促す

どう振る舞うか

  • 重要なことは、リーダーが「ある結論を望んでいる」という印象を与えることなく、活発な討議を促す意思決定のロードマップを作成できるか。

  • 「シナリオ分析」「概念モデル」など目に見える(想像しやすい)形のオブジェクトを介することで、新しい発見を促し、議論を建設的にする。

  • 落とし穴としては、「メンバーの飼い慣らし」「出席者相互ではなくリーダーを介した対話」「時間制限のプレッシャー」「時間をかけすぎた故の不要な愛着」「目的のないデータいじりに時間を費やす」などがある。

  • 活発な討議を、組織内での例外ではなく日常茶飯事にする。

我々の存在は、我々が繰り返しおこなっていることそのものだ。したがって〈卓越〉とは行為ではなく、習慣の中に宿るのである(アリストテレス)

対立を建設的に解決する

  • 場の空気を適切なものにする質問の重要性。
    (白熱した議論の最中にいる人に対し、リーダーは)目標や前提、理論的根拠、立証資料などについて自ら質問しながら、グループの雰囲気を全員で討論しようという状態に切り替えなければいけない。

  • 過ちについては反省を促し、必要な参加者には事後フォローをし、成功は周囲に広めて記憶に残す。そうすることで、組織は正しく「次」のステップを踏み出す。
    「正しい対立の管理に熟達」する人を増やす。個人から組織の行動へ。

優柔不断の力学

  • ノーの文化:批判的な意見を言う方が周囲に知的だと思われる。プラスではなく、ただアイディアを打ち壊す傾向を奨励する

  • イエスの文化:その場での沈黙によるうわべだけのコンセンサス。問題の蒸し返し

  • おそらくの文化:リスク・不安の回避のため、表面的な確実性を求め続け、決断を遅らせる
    →「類似性による判断」「経験則の適応」「他社の模倣」など決断への近道はあるが、根本的な改善は組織の文化を変えること。リーダーとして、手本を見せる。

正しいプロセスを追求する

  • 他人の意見を尊重している姿勢をはっきりと見せる
    「討論ですべての人の意見が通ることがないのは言うまでもないが、正しい結論を得るためには、すべての意見が貴重なのです」

  • (意思決定のプロセスが操作されていると判断され、人のやる気を削ぐ)形だけの選択肢を無くす

  • 対立とコンセンサスは矛盾しない。コンセンサスは参加者が最終決定を理解し、採択された行動方針の遂行に全力を尽くすことを誓い、その計画が全員のものであるとの意識を持ち、その実行活動において進んで他の人たちと協力しようという意志を持つこと。全員一致の結論に至ると言うことでない。議論において、公正感や妥当性の印象を強めることが重要。

チームのメンバーが共通の目標に向かって活動するときは、自分たちの個人的な勝ち負けより、他のメンバーの意見を性格に聞き取って、他人から学ぼうとする傾向が強くなる。

実行につながる決断

  • アイゼンハワーに対するドイツの評「彼の最大の長所は、人々の性格をうまくすり合わせ、正反対の考え方でもたくみに折り合いをつけることだと言われている」。
    彼は複雑な問題を対応できる範囲に分割することによって(小さな成功の積み重ね)、結論に導いた。できるかぎり議論の着地点を求め、重要な事実や前提、判断基準の合意点をいつも模索しながら、紛糾する議論の舵取りを行った。
    →飛躍的な進展ではなく、多くの小さな合意を積み重ねることで、大きな合意につなげる。

自制心を持って導く

  • 決断はリーダーだけの仕事ではない

今日の企業や公的機関が直面する問題は、一人で解決するには複雑すぎる
(ウォレン・ベニス)

  • リーダの役割とは

部下に議事の内容についていろいろな意見を述べる機会を十分に与えると同時に、意思決定プロセスを自ら主導するのが、真のリーダーだ
(デビット・ナドラー)

  • リーダーは最善の解答を見つけるプロセスを掌握する

リーダーは意思決定の準備をしなければならない。計画を立て、意思決定プロセスが展開するにつれて、状況に応じてその計画を修正しなければならない。どんなに聡明でもすべての答えを持っているわけではない
(著者)

さいごに

良書だったので、ついつい備忘録的な要約が長くなってしまいました。
でもどれも大切。

20代は組織というものの理解のために、30代は確認のために、40代は反省のために。
10年に一度は読み返した方が良いのではないかと思えるほど、良い本です。

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