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煽り方は最高──『共産党宣言』読書感想文

書籍データ

およそ100ページのボリュームの本なのですが、36ページまでさまざまな版の序文が占めてるんだ……めくれどもめくれども序文。
という感想はおいておいて。

さすがに時代と多くの人を動かした「宣言」だけあって、
非常に要点のまとまった文章で主張と反論のバランスも良く、思わず「うまい、なるほど!」と思ってしまう本でした。

論説文のお手本にしたい。

感想

すばらしいと思ったところ〈その1〉

──問題提起の的確さ──

産業革命を経て資本主義が台頭し、ブルジョア階級とプロレタリア階級の対立が明確化していた時代。プロレタリア階級の置かれた状況に「搾取され続ける存在で良いのか?」と疑問を投げかけ、実際に活動に導いた文書。

この文書は「あなたは今こういう立場に置かれているんです」と的確に指摘し、「それはあなた自身の力で変化させることができるんです」「だからあなた自身が行動を起こす必要があるんです」とその必然性を上手に解く。

啓蒙とでもいうのでしょうか。
主張がわかりやすいし、理想すぎず現実すぎない、その絶妙な言葉選びがすごい。

すばらしいと思ったところ〈その2〉

──敵対化せず合流の余地を残すところ──

この文書は一見するとプロレタリア階級の解放にフォーカスされているように見えますが、実はそうではないのではないかと。

ブルジョア階級を一方的に敵と見做してひたすら攻撃することもできるのに、文書中で「資本主義の発展は、一見その恩恵を受けているように見えるブルジョア階層をも実は追い詰めている」という記述を見るにつけ、そうではない方針を選んでいるのかなというふうに感じました。

ブルジョア階級は恐慌を何によって克服するか? 一方では、一定量の生産能力をむりに破壊することによって、他方では、あたらしい市場の獲得と古い市場のさらに徹底的な搾取によって〜中略〜(こうして)もっと強大な恐慌の準備をするのであり、そしてまた恐慌を予防する手段をいっそう少なくするのである

「このままの世の中であり続けたら、あなたたちにも未来はない(だからブルジョア層であるあなたがたも、この革命に協力する必要があるんです)」

ブルジョア階級に待ち受けるシビアな未来をただ浮き彫りにすることで、ブルジョア階級を巻き込み利用してやろうという賢い魂胆があるような気がします。

すばらしいと思ったところ〈その3〉

──クールな煽り──

共産主義は「私有財産の廃止」という一言に要約される

実際にマルクス・エンゲルスはここが一番の反発を食らう場所であろうことを意識していたようで、それに対する反論が本当にイケてるなと思いました。

働いてえた、苦労してえた、自分で儲けた財産! ブルジョア的財産以前からあった小市民の、小農民の財産のことをいっているのか? われわれはそんなものを廃棄する必要をみとめない。工場の発展がそれを廃棄したし、また毎日廃棄しつつある。

「今のお前たちにそもそも私有している財産なんてないだろ?」という発破の掛け方が、痺れます。

なんでうまくいかなかったのか

共産主義の末路は、20世紀の世界の様子を見れば解ります。
なにがいけなかったのかはおそらくさまざまな論説があるのでしょうが、本書を読んだ限りでは、私は「その時点の状況」に重きを置きすぎていたことが原因かなと思います。

この宣言が発された当初は、問題や対立構図がわかりやすくて明確だったのでしょう(国による多少の差異はあれど)。その対立構図を利用すれば、人を動かすことは比較的容易かったのだと思います。
しかし、共産主義を推し進めていくとその構図が変化します。

変化するのは良いことですよね。
本来の目的である労働者の権利が増幅したということなんですから。
でも、そうなると共産主義を推進する理由は当然のように減ります。

うまく行けばいくほどいつの間にか当事者が解決したい問題は入れ替わってしまうんです。

「搾取される時代は終わった。なのに、なぜ我々はこれ以上豊かにならないのか」

それに対する答えまで、この『共産党宣言』には用意されているようには見えませんでした。

現実を的確に捉えすぎていたからこそ、そこだけの解決だけに終始してしまった。そして、変化に対し、変化できなかった。

だから共産主義(≒社会主義)を掲げた国々は……。
この流れはけっして他人事ではなく、いろいろな教訓にできそうです。

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