異種連携が技術発展のカギ──『よくわかる人工知能』読書感想文
異種の対談形式になっているので、どの分野の人が、どういう立場で、どのように人工知能というものを見ているのか(もちろん分野だけでなく個人の考え方も大いに関係する)がわかりやすい本です。
この本は少し古いので、現状については別なところから仕入れるとして、
とりあえず〜2016年時点の整理として。
※以下、感想部分は私の脳内処理を介しているので、認識が間違っているところもあるかもしれません。
書籍データ
感想
人工知能の派閥
人工知能は、大きく分けてウェブ分野などに活用されている記号処理(大人の人工知能)と機械学習(子どもの人工知能)の2つの流派がある。
現状、人工知能の研究者の多くは前者の研究を主としており、後者は異端として扱われがち。後者は人工知能自らが「勝手に学び取り、学びを深める」仕組みのため、その技術が高度化すればするほどアルゴリズムの発見などに寄与してきた研究者の地位が下がることも諸手を挙げて迎え入れられない一つの理由。
だから、驚くべきことに上記の両者の間の溝は大きいらしい。(両者には長短や、向き不向きがあるんだろうから一緒に成果を上げればいいのにと素人目には思うのだけど)
HPCとwebの業界も今までは全然繋がりがなくて、ディープラーニングの流行を通してようやく繋がり始めた、とのこと。
人工知能の発展に寄与したもの・するもの
プラットフォーム、ハードの技術革新が重要。大容量で高速の処理が可能になったこと、そのための機材や消費電力が「日常」により近いレベルで入手できることになったことがディープラーニングの発見に寄与したし、さらなる今後の研究・実用化にも必須。人間3年分の学習に本当に3年かけてたら100年かかっても研究しきれない。そういうスピード感を実現しないといけないのでそっちも鋭意革新中。
子どもの人工知能の鍵であるニューラルネットワークを飛躍的に進化させたのが、誤差逆伝播法(と、それを深層でも可能にするオートエンコーダのアイディア)。これにより、記号処理の世界では目的を達成するために「全棚卸」しなければならなかったパターン抽出を、ショートカットすることができるようになった。※AlphaGoの例
人工知能分野は研究成果がオープンであることが、送り手・受け手双方に必要な分野である。それが業界的なイニシアチブの獲得、優秀な研究者の獲得、研究に必須な一般エンジニア(もしくは一般人)からの大量の情報提供につながるから。フレームワークしかり、最近で行けば、chatGPTのような一般にも親和性の高いUIを介して「より多くの人」に使われることが、技術の進化に必須。(学習データ収集のため「中身は知らんけど使ってみた」を増やすことが重要)
対談の中で特に心に残った箇所の感想
松尾さん(東京大学大学院 准教授)
情報路線での活用はアメリカのGoogle、FBなどにかなうわけがない。だから、日本ではモノづくりとの接続、運動路線にふって行った方が良いのではという論。
(人工知能自身の学習がまださほどではない)現状では、教師データの質が重要。教師データを決めるのは人間なので、研究者や企業がどこに取り組むかを決める際は、発想や技術が高いレベルにある分野を担うのが最適。
→上記は多分こういうこと言っているのではないかという私の解釈を含めた要約ですが、同感。
岡島さん(元TOYOTA RESEARCH INSTITUTE エグゼクティブ リエゾン オフィサー)
大人の人工知能すなわちアルゴリズムで出力を定めていたときは、人工知能が出す解答は100%でなければいけなかった。けれど、ニューラルネットワークを用いた解答は、その中身のブラックボックス性も含めて100%でありえるわけがない(人間の脳を模しているのだから当然とも言えるし、そこをそもそも許容している・・・のだよね?)。
実用化にあたっては、それを前提として強く認識する必要がある。例えばトヨタの自動運転技術で言えば「人工知能を使う」ことが目的でなく、「乗って楽しい・乗って安全な車をつくる」が目的であり、その手段としての人工知能なのだということを忘れない。
→「目的」達成のための人工知能の活用であって、逆はないということを忘れないでほしい。
田島さん(ヤフージャパン研究所 所長)
「下手すると追っかけているだけで、なんにも自分はつくれないまま、インプットだけで終わっちゃうっていう怖さはありますね」
→その心情を思うと、私は研究者ではないけど辛くて泣ける。研究って、人工知能のテーマに限らず今までもそういうものだったのだろうな。
前野さん(慶応義塾大学大学院 教授・工学博士)
「人工知能に意識は実装できるか」が対談テーマ。前野さんは物的一元論支持なので、あくまで意識は脳内のロジックにより吐き出された結果という。
→改めて「意識ってなんだろう」って思ったので、前野さんの著書を読んでみる。
満倉さん(慶応義塾大学理工学部 准教授・工学博士)
ホルモンを加えたニューラルネットワークを研究。ディープラーニングの理論で説明できない箇所に納得いかず懐疑的。そのため、より人間の判断に近づけるための方法を医学の観点から模索している。
→人工知能を人間に近づけていくという行為に、私はどうしてもメリットを感じないのだけど、何かメリットがあるんだろうか。松尾さんのいうように「結果的に人間に近づく」ことはあるかもしれないけど、それを目的にする意味って……。
齊藤さん(PEZY computing 代表取締役社長)
基本的には、複雑な系の中で、人間が見出せるパターンなんで1対1の相関関係しかないとも言えるくらい、単純なものがほとんどです〜〜〜こういった”人間では立案することが不可能な仮説”を、高速な人工知能エンジンがあると作り出していける。
→その仮説を人間が理解できるかはわからないけど、人工知能の可能性としては本当にここだと思う。そしてそれは世の中に言われる「シンギュラリティ」とは全然違うものだと思う。
