自分にとっての成功法則にもおきかえられる──『ビジョナリーカンパニー』読書感想文
「成功している企業に成功の法則があるのか」という問い。
本書は成功している企業に対する神話の否定から入る。
企業の成功には「すばらしいアイディア」も「カリスマ的指導者」も「利益を最優先する考え方」も「誰にとってもすばらしい職場である」必要もない。
では何が「他の企業と違うのか」。
書籍データ
要旨と私的解釈
組織をうごかすこと < 組織を築くこと
ビジョナリーカンパニーの創業者はえてして「ビジョンを持って指導力を発揮する(時を告げる)」タイプではなく、「組織を築く(時計をつくる)」タイプが多い。
(本書の調査チームは調査の途上において)会社を製品の手段として見るのではなく、製品を会社の手段として見るように、発想を転換することになった。
陳腐化しないサービスはない。いずれ必ず時代遅れになる。
いまある製品のライフ・サイクルを超えて、会社として変化し、発展し続ける力があるかぎり、時代遅れにはならない
だから、必要なのは、変化し続けられる組織をつくること。
利益を超えて行動する。ただし利益も放念しない
第二次世界大戦後、メルクは日本に結核の治療薬「ストレプトマイシン」を持ち込んだ。このことにより、メルクは利益を得ていない。しかし、今日メルクは日本でアメリカ系製薬会社の最大手の立ち位置を獲得している。
長い目で見て同社の事業のプラスになってもならなくても、メルクはこのプロジェクトを進めただろう。しかし、こうした善意の行動が「なんらかの形で……報われる」と計算して、メルクが行動したのも事実だ。
後半の文章は、意外に忘れられがちな観点なのではないかと思う。
理想と現実、どちらも忘れない決断が、成果を生む。
人のやらない仕事、困難であるがために人が避けて通る仕事に、勇敢に取り組む。
われわれが会社と呼ぶ組織として存在しているのは、人々が集まれば、個人ではできないことができるようになるからだ。
理念をいかに保持できるか
ビジョナリーカンパニーの理念に不可欠な要素はない。
理念が本物であり、企業がどこまで理念を貫き通しているかの方が、理念の内容よりも重要である。
保ち続けられる理念とは何か。
それは、「組織の内部にすでにあるもの」の言語化であり、「(理念の)価値観を掲げていては不利になる環境になった場合に変更でき、捨て去ることができるもの」を省いた形である。
本物であること
それは企業の進歩を促すための目標(Big Hairy Audacious Goals)も同様である。BHAGは単に所持するための目標ではなく、思わず怯むほど大きな課題に挑戦することそのもの。達成するための決意がきわめて固いもののみをBHAGという。
合わない人は、合わない
企業は、所属する人すべてがハッピーでいられる職場であるべきなのだろうか。
(当社が求める行為に抵抗があるのであれば)当社に合っていないのです。そうであれば、入社しないほうがいい。当社ではだれも、顧客サービスの英雄になれと説教したりしません。社員であれば、そうなるのが当然なんです。
進化論は企業にもあてはまる
繁殖し、変異し、強いものが生き残って弱いものが死に絶える
生き残るためには、生き残ってきた生物が行ってきたことが参考になる。
大量に試して、うまくいったものを残す
現状に満足しない(常に変化する)
ビジョナリーカンパニーの唯一の共通点
大切なのは、ビジョンをつくることではなく、組織の隅々まで浸透させること。
驚くほど広範囲に、驚くほどの一貫性を、長期にわたって保っていくことである。
感想
1995年発行。ほぼ20年前に「成功している」と本書で挙げられている企業が、現在でも「成功している」とは限らない。だから本書の説は間違っていると結論づけるのは短絡的だと思う。
「成功し続ける」企業というものもまた絶対に存在しない。
いくつかの浮き沈みを経て今後飛躍する可能性も含めて、その立て直しには組織として何が必要なのかという観点で本書の内容を見るのが適当なのだろう。
未来に向けて挑戦し続けられる体質(ある種小さな小さなことを積み重ねていく訓練)が必要であることは、企業だけでなく個人にも当てはまる。
自分にとって、「守るべき」「変わらない」「捨てることのできない」ビジョンは何か。
改めて問い直すのも面白いかもしれないと思った。
