資本主義どうこうではなく"今をどう良くするか"が問題──『逆境の資本主義』読書感想文
書籍データ
要旨と感想
この本にはたくさんの有識者が意見を寄せているが、繰り返し語られるキーワードは下記。
ポピュリズムの台頭
巨大IT企業(いわゆるGAFA)への情報の集中
株主の利益を最優先する企業体質
+時勢柄、コロナ禍
その「悪い結果」として顕在化しているのが主に下記の2つ。
富の格差
地球環境破壊
「今まで(1900年代)とは状況がまったく異なる社会環境」において、資本主義と、それに呼応するように民主主義の形が揺らいでいるのではないか。
というのが本書のテーマ。
ここでは「資本主義自体の良し悪し」という議論は意味がない。
「今後、私たちが良く生きるためには、どうすればいいのか。何が足りないのか」を理解することが重要である。
資本主義の利点を最大限に引き出せるように、私たちが振る舞うべきなのだから。
しかし、環境破壊の抑止と格差の是正は待ったなしの問題だ。
今、特に海外では企業がESGへの積極的関与の姿勢を示すことが投資判断の基本的項目の1つになっている。
つまり、環境・社会・企業倫理。社会への配慮と収益性の両方を兼ね備えた企業が「持続性ある企業」として評価される風潮にある。
正しい方向だと思う。
コモンズの悲劇が描くように、「自分だけでいい」「目の前さえ整っていればいい」そういう近視眼的な個人主義は、いずれ社会から見放され、長続きするわけがない。
日立製作所と京都大学が共同で開発したAIが可視化した未来も、「道徳性」や「利他的行動」がキーワードとして上がっているとのこと。
あくまでシミュレーションに過ぎないので、それが決定的な理由づけになるわけではないが、本書に登場する有識者の意見はどこかでそれと一致しているように思える。
きれいごとではなく生存のために、長期的な視点を持ちながら、自社だけでなく社会全体の最善を考えた経営が必須の時代なんだと思う。
そして、企業だけでなくこの世に生きる私たちの意識も「アップデート」しないといけない時代なんだろう。
良くも悪くも消費者自身が得られる情報は1900年代の比にならないほど増えた。
人間は馬鹿ではないから、嘘はいつか見抜かれる。虚飾はいつか見破られる。長期的な信頼関係を結びたいのなら、情報の公開・透明性が必須になってくるのは当たり前。
本書の中でも語られているが、
企業の目的は利益追求ではない。「良いプロダクト」を効率的に生産する技術を創出することが企業の目的であり、その結果としての利益があるということを忘れてはいけない。
さいごに「資本主義」の是非について。
大切なのは、資本主義の仕組みの良し悪しを議論することではなく、消費主体の資本主義を経た現在において、次に目指すべき仕組みを探っていくこと。
資本主義が悪いわけではない。
ただ、明らかに時代にフィットしなくなった部分や明らかにマイナス面が見えている部分について、みんなの知恵を絞って調整していけば良いのだと思う。
