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想像力があれば、私は生きていける━━『赤毛のアン』読書感想文

今回は「過去に読んで印象に残っている好きな本」がテーマです。
同テーマでは以前に『源氏物語|帚木』を取り上げています。

さて、本題の『赤毛のアン』シリーズですが、
小学生の頃はこの翻訳で、

中学生以降はこの翻訳で何度も読みました。


一人の女の子と取り巻く周囲の人たちの、個性ある生き生きとした描写が好きです。
はじめは幼いアンの突拍子もない言動や行動にハラハラして、ドキドキして、圧倒的な行動力に痛快さを覚え、思い通りにならないことに一緒に大泣きしているうちにいつの間にか彼女が成長していることに気づくストーリー展開は、何度読んでも心揺さぶられます。

農場の働き手として男の子をもらうはずだったカスバート家に「手違いで」来てしまったアン。
結局、すったもんだの末に受け入れることになったそのアンが、わかりづらいけどとても大きなマリラとマシューの愛を受けて成長する一巻のハイライトは、
引き取られて数年後、勉学に励み試験をトップの成績で通過し、大学の奨学金を掴み取ったアンにマシューが最高の言葉を贈ったこのシーンだと思います。

「もし私が男の子だったら、いま、とても役にたって、いろいろなことでマシュウおじさんにらくをさせてあげられたのにね。」と、アンは、悲しそうにいった。
「そうさな、わしには、十二人の男の子よりも、おまえひとりのほうがいいよ。」と、マシュウは、アンの手をさすった。
「いいかい? ──十二人の男の子よりいいんだからね。そうさな、エイブリーの奨学金をとったのは男の子じゃなくて、女の子ではなかったかな? 女の子だったじゃないか──わしのじまんのむすめじゃないか」

講談社1973年版|村岡花子訳『赤毛のアン』より

人見知りで無口で、他人との交流を厭うマシューがアンに向けて語った「1ダースの男の子よりお前が大切」という言葉は、私が人生ではじめて本を読んで号泣した言葉です。
(今回改めて読んで、やっぱり号泣して子どもたちにドン引きされました)

人の愛情に飢えて育ったアンが、人とうまくコミュニケーションを取ることのできなかったマシューが、互いに出会い、互いに影響し合うことで自然に生まれた愛の言葉。
きっと、マシューにとってもアンにとっても、それぞれのそれまでの人生においてこれ以上の言葉はなかったのだと思うと、胸がいっぱいになります。

赤毛のアンの一巻最後、
奨学生として一度はひらけた進学の道を目の悪いマリラのために断念しながらも、ギルバートに地元での教職を譲り受け、長年いがみ合っていた彼と仲直りをした直後の場面。

アンは、その夜、満足することの幸福を、しみじみ味わった。アンの地平線は、クイーンから帰った夜をさかいとしてせばめられた。しかし、その道にも幸福の花がさきみだれていることを、アンは知っていた。
しんけんな仕事と、りっぱな望みと厚い友情はアンのものであり、だれも、アンが生まれつき持っている空想と夢の国をうばうことはできないのだ。そして、道には、つねにまがりかどがあるのだ。

講談社1973年初版|村岡花子訳『赤毛のアン』より

これは私がはじめて読んだ時から一番心に残っているフレーズで、自分が辛い時に支えにしてきた言葉でもあります。

自分の築いてきたものこそが唯一自分のものといえるものであり、自分の内面は誰にもおかせない。そして、どんな状況においても幸せは自分自身が決めるもの。

もはや私の座右の銘と言えるかもしれません。


赤毛のアンシリーズはかなりの長編で、最初の子どもを生まれたばかりで亡くしたり、最愛の息子を戦争で亡くしたり、マリラとマシューに引き取られて平凡な幸せを取り戻したとアンの生涯には、たくさんの幸せと共に、たくさんの「まがりかど」──悲しみが訪れます。

悲しくても笑わない瞬間はないし、幸せでも泣きたい時もある。

そのような人生を、一人の人間として豊かな空想力をもって時に留まり停滞しながらも前向きに生きるアンの生涯に、私は共感するのだと思います。


if the path set before her feet was to be narrow she knew that flowers of quiet happiness would bloom along it. The joys of sincere work and worthy aspiration and congenial friendship were to be hers; nothing could rob her of her birthright of fancy or her ideal world of dreams. And there was always the bend in the road!

原文より

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