【定期勉強会レポート】成人の下部尿路症状(LUTS)の診療マネジメント
はじめに
河北家庭医療学センターでは、若手医師や専攻医の臨床能力向上を目指し、定期的な勉強会を開催しています。今回は、外来診療において非常に多くのアプローチ機会がある「下部尿路症状(LUTS)」をテーマに、当院の家庭医療専門医であるスタッフ医師が発表を行いました。
プライマリケア医としての臨床知見と、最新のガイドラインを踏まえた包括的なマネジメントについて、活発なディスカッションが行われました。
発表内容の概要
本勉強会では、『過活動膀胱診療ガイドライン第3版(2022)』や『女性下部尿路症状診療ガイドライン第2版(2019)』などをベースに、プライマリ・ケアにおけるLUTS診療のロードマップが示されました。
まず、LUTSを「蓄尿症状」「排尿症状」「排尿後症状」に大別し、プライマリ・ケア医が主に主体となって対処すべきは「蓄尿症状」であることを再確認しました。排尿症状や排尿後症状が主体である場合や、残尿測定で100mL以上の残尿を認める場合は専門医紹介を考慮します。
さらに、診療の鍵となる「排尿日誌(FVC)」の読み解き方について詳細なレクチャーがありました。
24時間多尿(体重1kgあたり40mL超)の鑑別(尿浸透圧による水利尿と浸透圧利尿の分類)や、夜間多尿指数(NPi)の算出、機能的膀胱容量の評価手順など、具体的な問診や検査オーダーの組み立て方が提示されました。
今回の学びとディスカッション
今回のディスカッションでは、特に「性差に応じた治療戦略」と「薬物療法の選択」に注目が集まりました。
女性のOAB治療: 生活指導や骨盤底筋訓練などの行動療法(推奨グレードA)をベースとしつつ、薬物療法では副作用のプロファイル(抗コリン作用による口内乾燥・便秘や認知機能への影響)を考慮して、β3受容体作動薬(ミラベグロン、ビベグロン)や抗コリン薬を選択します。単独療法で効果不十分な場合、ソリフェナシン+ミラベグロンといった相乗効果のエビデンスが確立されている併用療法へのステップアップについて学びました。
男性のLUTS治療: 50歳以上の男性では前立腺肥大症(BPH)の合併を念頭に置き、第一選択としてα1遮断薬やPDE5阻害薬(タダラフィル)を先行投与し、症状残存時に慎重にOAB薬を追加する戦略が共有されました。その際、残尿量増加や尿閉のリスクを定期的な残尿測定でフォローアップすることの重要性が強調されました。また、中高年男性の背景にあるBPHの可能性を念頭に置きつつ、単に薬を処方するだけでなく「夜間頻尿によって睡眠や日中のQOLがどれほど損なわれているか」という患者自身の「病い体験」にも焦点を当てることが議論されました。
今後の展望
下部尿路症状は、患者さんのQOLに直結する重要な問題でありながら、羞恥心から表出されにくい側面もあります。私たち家庭医・総合診療医は、疾患(Disease)としての尿路機能を見るだけでなく、排尿日誌(FVC)を通じて患者さんの「生活の文脈(Context)」を可視化し、共同意思決定(SDM)のもとで伴走します。今後もこうした包括的な学びを通じ、患者さん中心の医療(PCCM)を実践してまいります。
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関連リンク
河北ファミリークリニック南阿佐谷 公式ウェブサイト
