見出し画像

魚眼レンズ越しに見た「汝の薔薇は名もなき薔薇」|Report

会社の後輩と海の話をした。彼の趣味はスピアフィッシング、すなわち銛突きだ。だから魚の名前や海況の情報には詳しい。だけどサンゴの名前はほとんど知らないと云う。

気持ちはわかる。サンゴの種類は膨大にあり、見分けるのが難しい。造礁サンゴで18科、120属、800種以上に分類されている。隔壁の模様や配列で属や種を区別するんだから、そりゃあ細かくもなる。

彼は海を眺めるものではなく潜るものだととらえる稀有なウチナーンチュだ(ほんとは地域を問わず世のマジョリティが海に潜らないのだがね…)。末頼もしいと思う。

だからせめて、オレ流サンゴ分類学をシェアしよう。イノーからピシ(リーフ)にかけて多く見られるサンゴが対象だ。オレ流だから界・門・綱・目・科・属・種なんて知ったこっちゃない。「だいたいこんな見た目のやつはこのサンゴだと思えばいいよ」レベルだ。

けれど名づけることが文化の本質だ(とソシュールが言っていた)。海の中で出会うサンゴが少し身近な存在になるくらいにはきっと役立つだろう。



*写真は「宮古島サンゴ礁ガイドのなかまたち」サイトから勝手ながらお借りしています。詳しく勉強したいときはこのサイトへ飛べ!

ハマサンゴ

イノーの中の代表的なサンゴ。多くは塊状で、よく見るものは直径数10㌢から2㍍程度。高さが干潮潮位まで成長すると干出部分が死んでしまい、平坦なマイクロアトール状になる。また、ブダイ類にかじられた白い傷跡を持つ個体も多い。イシサンゴ目ハマサンゴ科で、いくつもの属や種に分岐するが、全部ひっくるめてハマサンゴとおぼえておこう。

ユビエダハマサンゴ

ハマサンゴの中ではこいつは形が枝状なので一目瞭然(ハマサンゴ属の一つの種)。むしろミドリイシや枝状のコモンサンゴとの見分けがつきにくい。ただイノーの中に限ればこいつだと思っていい。群生して大きくなる。捕食を避けるためスズメダイ類が隙間に入り込む。命のゆりかごだ。ユビエダを含むハマサンゴ科は高水温にもオニヒトデにも強いので白化しにくい。

キクメイシ

イシサンゴ目キクメイシ科。多くは塊状だが、ハマサンゴほど大きくはならない。イノーの砂地のところにも出現する。隔壁が規則正しく配列している。昔の木造家屋では雨端という縁側の庇部分を支える礎石として利用された。似たものにサザナミサンゴ科ノウサンゴ属があり、一応区別できるが、一緒くたでもいいかなとも思っている。

クサビライシ

これも一発で見分けられる。大小のひだを規則正しく放射状に配列していて、シイタケの傘の裏側に似ている。それもそのはずクサビラとはキノコの古語だという。単体の円形もしくは楕円形で、長さはせいぜい20㌢程度。イシサンゴ目クサビライシ科。

トゲサンゴ

枝状サンゴのひとつで、枝の先端が尖っているのが特徴。群体全体は半球状をなすものが多い。浦添ふ頭の礁池にいくつかある群体がトゲサンゴだと思っているが、枝状のコモンサンゴだとする記述もあって自信がない。沖縄でも生息域はかなり減少しているらしい。トゲミドリイシ属(ミドリイシ科)も先端が尖っており、それと混同しているのかもしれない。ハナヤサイサンゴ科トゲサンゴ属に分類される。

ハナヤサイサンゴ

そのハナヤサイサンゴ属は大概が小型のカリフラワー似。ずんぐりむっくりでかわいい。高水温に割と強い。イノーにいることもあるが、多くはミドリイシに混じってピシ付近に分布する。赤紫、青紫、ピンク、水色、緑など色鮮やか。命名者に座布団10枚あげたい。

コモンサンゴ

曲者。ミドリイシ属に次ぐ種の豊富さを持っていて見分けにくい。枝状、被覆状、複合系など様々な形を持つ。

ウスコモンサンゴ

オレ流なので、葉状のものは全部ウスコモンサンゴだと思うことにしている。センベイサンゴやシコロサンゴ、キッカサンゴにも葉状の種があり、このへんが見分けられるようになりたい。

エダコモンサンゴ(追記)

波穏やかな海域に生息し、樹枝状あるいは指状突起のある群体を形成する。沖縄島の中南部のイノーの中にいる枝状のサンゴ群体は、これかユビエダハマサンゴである可能性が高い。ハマサンゴの仲間である後者のほうが、より塊状のフォルムを持つ傾向にある。

アオサンゴ

アオサンゴも葉状にみえる柱状だが、造礁サンゴとなるイシサンゴ目ではない。1属2種のレアタイプ。石垣島の白保海岸に大きな群体があり、これもあって白保は空港移設先の候補から外れた。世論を動かしたすごいやつ。骨格が青で、色のバリエーションは少ない。

クダサンゴ

これもイシサンゴ目ではなく、ウミトサカ目の一科に分類される。どうやらソフトコーラルらしい。薄い管状の鞘が並んで束になるというわかりやすい形状を持つ。英名ではパイプオルガンに例えられているが言い得て妙。あまり目立たない。

ミドリイシ

最大の鬼門がミドリイシ科。属・種が多すぎるし、形も多すぎる。形に応じてテーブルサンゴとかエダサンゴと総称してもいいが、分類学上は存在しない。ひとまず次のミドリイシだけは忘れないようにしている。

シカツノサンゴ

これはトゲスギミドリイシとのこと

文字どおりの長く成長する枝を持つサンゴ。 波浪の影響が少ない場所で育つ。見た目が似ているスギノキミドリイシ、トゲスギミドリイシもあるが、区別がつかないのでオレはすべておぼえやすいシカツノサンゴと呼んでいる(ハナヤサイサンゴの仲間に、ヘラジカの名を持つ太い角状のサンゴがあってややこしい)。

オヤユビミドリイシ

指の先程度の長さの樹枝が集まってひとつの群体をつくる。黄緑や水色、ピンクなど彩りも豊か。波浪にも強く、リーフの緩斜面や礁原に多く分布する。成長期の勢力争いをしている頃はまるでお花畑のよう。ツツユビ~、コユビ〜などの近縁種がある。

ホソエダミドリイシ

これまた「ザ・珊瑚」のイメージを具現する種。円形群体で、礁斜面の浅い場所で普通に見られる。これも淡色から濃い緑や紫まで色彩に富む。オヤユビたちよりも枝が細く、多少は長くなる。ウスユビ~などの近縁種がある。


最後になるが、アナサンゴモドキには気をつけよう。

毒があり、刺されると火傷のように痛い。板状や塊状、被覆状、枝状と形も様々で同定しにくい。刺されたことがあるが、目に見えない小さなクラゲの仕業かと思った。ポリプが伸びていると、表面に産毛が生えているように見えるそうだ。

こんなやつ、マンジュウヒトデに食われてしまえ! はにゃにゃフワーッ!


いいなと思ったら応援しよう!