念願のビストロ
旅の続きです。
前回、ノルマンディー地方のカーン(Caen)で、お目当ての郷土料理「トリップ・ア・ラ・モード・ド・カーン(牛の第2胃袋のシードル煮込み)」を食べようとしたのですが、残念ながらありつけず…。
その後、シャンパーニュ地方のランス(Reims)にも行きましたが街並みやワインショップに立ち寄る程度に。
:修業時代の愛読書に導かれた、トロワでの素晴らしい出会い
ランスから南下して向かったのは、「トロワ(Troyes)」という街です。
ここには、フランスでの修業時代に買った一冊のビストロ本に載っていた、どうしても行きたい老舗のお店がありました。
Aux Crieurs de Vin
訪れてみると、そこはナチュラルワインのショップとビストロが併設された、素敵なお店でした。
ショップには、日本で手に入れるのが難しい「ラングロール」のような希少なワインも並んでいて、興奮したのを覚えています。(本当は6種類くらい全部買いたかったのですが、あまりに貴重だからと2本だけ譲ってもらいました)

料理も「アンドゥイエット」(豚の内臓のソーセージ)やタルタルなど、まさに王道のビストロ料理。お店の方もすごく感じが良く、本当に素晴らしい出会いとなりました。

:シャブリの地形で知った、ワインの「深み」の理由
トロワを後にして、さらに南下して「シャブリ(Chablis)」へ。
ここも交通の便が良い場所ではありませんが、車ならではの旅です。
シャブリはシャンパーニュのような賑やかさはなく、本当に静かな田舎町。
レストランも数軒しかない中で、たまたま入ったお店が大当たりでした。
シャブリのワインはもちろん、薄くスライスしたフォアグラのテリーヌに、アーティチョークと青リンゴを合わせた、非常にセンスの良い前菜は今でも鮮明に覚えています。

そして何より衝撃的だったのが、シャブリの「地形」です。
シャンパーニュもそうでしたが、シャブリは想像以上に「高低差が激しい」。山のような道を登ったり下ったり、畑が急な斜面に広がっています。この厳しい起伏があるからこそ、あの深く複雑な味わいのワインが生まれるんだなと、知識としてではなく、肌で感じることができました。
:レシピの奥にある「風景」を、今の一皿に込めて
なぜ僕がこうしてフランス各地を巡ったのか。
それは、日本人である自分がフランス料理を作る上で、レシピだけを知っていても意味がないと思ったからです。
シャブリのワインは「なぜ」あそこで生まれるのか。
カーンの郷土料理は「どんな」街で愛されてきたのか。
その「風景」や「背景」を実際に見ているかどうかで、料理に込める「説得力」は全く変わってきます。
その土地で見た景色や感じた空気を思い浮かべながら、料理を作る。
約10年前のこの旅で得た経験は、間違いなく今の自分の料理の「バックボーン(背骨)」になっています。
noteを通じて、そんな僕の想いが、お店のお客様にも伝われば嬉しいなと思っています。
