お盆の夜の怪談
今日からお盆の入り、盆提灯を見ていたら友達から聞いたゾッとする話を思い出した。

追ってくる女
お盆の入りの夜、暴走族のカップルが工場沿いのカーブに車で差し掛かった。
いつものように音楽を大音量で聞きながら運転していた彼氏は、ご機嫌上々で奇声を発してハンドルを切る。
この時助士席の彼女は、車の後方に何者かの存在を感じたという。
二人がバックミラーを見ると、白いワンピースを着て髪を振り乱した女が猛スピードで追ってくるではないか。

恐怖にかられた彼氏はアクセルを踏み込み、女を振り切ろうとするが女の足は凄まじく速く、車のリアに両手をつくのが見えた。
その時工場の壁が目の前に来たのが見えた彼女は、彼に向かって叫んだ。
「危ない、ブレーキ!」
慌てた彼は目を見開いて、最期の言葉を発した。
「ハンドルが動かない、ブレーキが固定されてる!」
炎上した車の中から彼女だけが助け出され、彼は車と共に真っ黒になってしまった。
病院に見舞いに行った友人は、顔面中包帯を巻いた彼女からこの話を聞いたという。
山の一軒家
別の友人に聞いた話だ。
盆の入りの夜、彼は車でコンビニに行き焼酎とおつまみを買ったという。
通り馴れた道を走り、家路に着くつもりであった。
ところが、いくら走っても広い国道が延々と続き、自宅方面に曲がる交差点にたどり着かない。
「おかしいな」
自宅から車で5分程度の距離にあるコンビニに来たというのに、交差点のない1本道を延々と走っているのだ。
少し行くと路側帯が広くなり、脇に自販機があるのを見つけた。
彼は広くなった路側帯に車を止めて、自販機で飲み物を買って一息つき、Uターンするつもりでドアを開けた。
その時彼は、外の景色を見て息をのんだ。
なんとそこは、今まで走って来た国道沿いの路側帯ではなく、山の中の一軒家の中庭だったのだ。

古い古民家の一軒家は灯も無く、人が住んでいる気配はない。
バックして中庭から出ようにも、正面には屋敷があり残り三方は漆喰の外壁に囲まれている。
門はあるが、カンヌキがはめ込んであるので車を降りて外さなければ門は開かないのだ。
いきなりヘッドライトが何の前触れもなく消灯した。
ぼんやりと雲に隠れた月明かりが辺りを照らし、時が止まったように物音ひとつ聞こえなかった。
「このままでは帰れない」
意を決してカンヌキを外しに外に一歩出ると、いきなり辺りは陽光で明るくなり、彼は自宅の前に愛車と共に立っていたのだった。
盆の夜は何かある

以上は二人の友人から聞いた話である。
本当のことか、二人の作り話か私にはわからない。
しかし盆の入りの夜は、何だか胸騒ぎがするのは確かなことなのだ。
今日は盆の入りだ。
どこかで誰かの身の上に、奇妙なことが起こっているのかもしれない。
