猫街へどうぞ ショートショート (#空想地名祭)
その街は、ある地域の片隅にある小さな場所だ。港町で、潮の香りが漂っている。早朝に漁師がのんびり魚を取りに行く。猫たちはそれを見送る。
そこは、猫と猫を愛する者だけが入ることができる。嫌いな人はその街へは入れない。どうしても足がそちらへ向かないし、方向音痴になってしまう。
また、透明なバリアがあって撥ねのけられてしまう。どんなに頑丈な武器を使ってもそれは崩せない。
そこは迫害された猫たちが、安心して暮らせる所がほしいと避難所を作ったものなのだ。それがしだいに大きくなり、街となった。
彼らの墓は、この街を見渡せる小高い「憩いの丘」に建てられている。その側には桜が植えられ、春になると毎年花を咲かせる。
猫たちは丘へ出かけ、花びらを追いかけたり、芝生に寝そべって昼寝をする。遠くから見ると、丘の上にたくさんの豆つぶが転がっているようだ。
街の建物は猫のために作られていて、塔のように高い星見の塔や、狭い穴が色々な所に空いている穴の家、押し入れがたくさんある家などがある。どこも自由に入れて、猫のためのドアも全てある。
道は細く、車が通る大通りのようなところはほとんどない。7割ほど舗装されているが、されていない日陰の道はひんやりするので、たくさんの猫がうろついている。
街へ入ると、人は猫に変わることができる(変わらなくてもいい)。くたびれたサラリーマンや好きなだけ眠りたいとか、余生をのんびり過ごしたい人などが希望するようだ。
変身の間というところに入ると、変わることができる。再び入ると元に戻る。
模様は、その人の気持ちによって変化する。孤独な人は大きな斑が1つだけあったり、気持ちにムラがあると縞々になったりする。
街では昼寝や散歩、猫集会など好きな活動ができる。働いてもいいし、働かなくてもいい。お腹が空くと、点在するうとうと食堂でご飯が食べられる。ちなみに無料である。
そこは猫好きのおばさんが食事を作っている。猫のご飯も人のもある。
猫たちはそこで食事をして、陽だまりでごろ寝する。寝ている彼らを撫でたり吸う人もいる。眠い人は大体ここに一日中いたりする。
撫で放題だが、彼らの嫌がることをしてはいけない。ここでは、猫が1番優先される生き物だからだ。
散歩すると、そこら中に彼らは落ちている。人々は猫に挨拶したり撫でたりする。だからなかなか進む事ができない。
夜になると、広場や空き地などで猫集会が行われる。みな三々五々集まり、無言でたたずむ。人間も参加してもいいが、集会の邪魔をしてはいけない。
猫は増えるが、不思議な力で一定数が保たれている。もしかしたら斡旋所があって、どこかへもらわれているのかもしれない。いなくなった猫も、幸せな暮らしをしている。
猫街はいつでも解放されている。けれど、猫が嫌いな人や犬は決して入ってはいけない。
ただし、彼らが猫を好きになれば、いつでも入ることができる。
猫の街の扉は、いつでもあなたのために開かれているのだ。素敵な猫街へどうぞ。
PJさんの空想地名祭に参加させていただきました。他の方の街もみんな楽しそう。
どうぞよろしくお願いします。
