拝み屋郷内 怪談始末|怪異を始末し、怪談とす
またホラージャンルの感想へと舞い戻って参りました。
しばらくあっちとこっち行ったり来たりな感じの感想が続くのではないかと思っております。
今回は郷内心瞳さんという初読の作家さんです。
私はミステリ系で国内の作家さんなら、結構お名前を知っているし読んでいる自負があるのですが、ホラーとなるととんとダメですね。恥ずかしながら知らない方ばかりです。
まぁその分、これから読んでいく楽しみがあるとも言えるのですが。
それでは本書のあらすじをどうぞ。
――語ることが、おそらく供養にもつながる。
戸の隙間から覗く女の目。悪質な霊能者に傾倒した家族の末路。著者が長年つきまとわれている謎の少女。毎年の盆に名前を呼ぶ声。決して語ってはならない封印怪談。
東北の山中で拝み屋を営むかたわら見聞きした鮮烈な怪異を書き上げる。自身の体験談をも含む怪談実話集。
本書を何の予備知識もなく、ほとんどタイトルだけで手に取ったのですが、ストーリーものと思っていたらなんと怪談実話の掌編集だったのですね。作者さんが実際に拝み屋を営まれていることも、読んでから知りました。
この時点では正直あまり本書に良い印象はありませんでした。というのも、怪談実話系の掌編集はこれまでに何冊か読んで来てはいるのですが、どうにもあまり楽しめた経験がなかったからなのです。
何故なのかを独自に分析してみたのですが、それは一冊に収められているお話のクオリティにあまりにも差があるからではないかと。
こういった掌編集の性質上、書き手がプロ・アマ問わず複数になることが多いのですが、当然怖いなと思う話もあれば、「なにこれ」と思うような話もあったりします。自分に刺さらない話が余りに多く連続したりすると、それだけで読書意欲を大きく削がれる結果になります。最初の方に刺さる話が来たりすると、次もと期待を込めてページをめくってはがっかりする。そして期待するような話にはそうそう行き合わない。みなさんはそんな経験はないでしょうか。
結果お話はたくさんあったのに正直よかったのは数話だった、なんていう怪談掌編集には何冊も当たりました。
なので本書が掌編集だと知った時、ちょっとテンションが下がったのは事実です。
それが、いい意味で裏切られました。
拝み屋の郷内心瞳さん
あらすじにもあるように、作者である郷内さんは拝み屋を営んでおられ、職業柄たくさんの怪異や怪談を見聞きするらしいです。ご自身も様々な体験をされているとのこと。
それらが事実かどうかは分かりません。昨今流行りのモキュメンタリーホラーの手法のひとつと言われたらそんな気もしてきます。
ただ全てのお話が実際に見聞きした作者自身の視点を通して語られているため、他の怪談掌編集とは違って軸が一本通っている感があります。こういった体裁の本はお話ごとに年齢・性別・職業・時代・文体が違っているのが当たり前ですが、視点が統一されていることで読み易く感じました。
ふと思いましたが、私の好きな加門七海さんの作風に似ているかも知れませんね。あの方も普段から色々なものを見ていて、その内容を小説として執筆されていますので。
全74話
今数えてみましたがお話は全部で74ありました。どのお話もバリエーションに富んでいて飽きさせません。ほとんどが数ページで終わるお話ばかりですし、文章も読みやすいです。
純粋に怖い話、ちょっと不思議な話、ほっこりする話、理不尽な話、様々です。
中でも『桐島加奈江』関連の話はなんとも不気味ですね。生者か死者なのかも分からないのは謎過ぎます。
他の個人的に印象に残ったタイトルを挙げますと、『いいよね』、『真夜中の電話』、『フランソワ』、『水着とラーメン』、『人を殺した人の顔』とかでしょうか。
しかもラストの引きがとても上手い。これは『人形と花嫁にまつわる話』も読まねばという気にさせます。
気になった方は是非ご一読下さい。
上で挙げた加門七海さんに関連して『怪談徒然草』の蛇足話を載せようかと思ったのですが、書いていて感想よりも長くなってしまったので割愛。また何かの機会にお話ししたいと思います。
それではまたの感想をお楽しみに!
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