見出し画像

旅の翌日から始まった話ー『面白くなりそうだなぁ』のその後ー

10年ほど前に起きたあの旅を書き終え、
この旅の”続き”を書き終えたら、
私はようやく前に進める気がしていました。

息子は帰ってきた。
確かに、大きく成長して。

けれど、
本当に動いていたのは、
その“後”の時間だったのだと思います。

あの時は、まだ言葉にできなかったこと。
書くには、少し時間が必要だったこと。
そして、
公に書くかどうか、迷い続けたこと。

少しずつ、立ち止まりながら、
書いていくしかないと思いました。

——

ここから先は、
感動的な旅の続きではありません。

選択があり、
衝突があり、
正解の分からない現実が続いていった話です。

軽い気持ちで読んで頂いたらいいのです。
こんな家族の形もあるのだと。
しかし、
誰にでも勧めたい話でもありません。

それでも——
もし、
「その後」を知りたいと思ってくださる方がいたら。
この続きは旅と一つと思っています。

これは、
四国一周の“続き”ではなく、
旅のあとに始まった
私たち家族の、もう一つの冒険の記録です。


家を出る朝

息子が8日間の四国一周自転車旅を終えた翌朝。
前日の夜からまとめていた荷物を見た。

スーツケースが二つ。

帰ってくるつもりのない人間の荷物とは思えないほど、少ない。
必要なものは、ほんの少しだった。


朝、娘を送り出す前に言った一言。
あとになって、何度も思い返すことになる言葉。

「母さん、今日、家出るから」

娘は、いわゆる【母さん子】だった。
私のいる場所にいるものだと、疑いもしなかった。

「ついてきてほしいんだけど」
「はぁ?
もー!!!」

そう言い残して、学校へ向かっていった。
そりゃあ、突然そんなことを言われたら、怒るしかない。

その時は、それ以上考える余裕がなかった。



家には、他にも人がいる。
それなのに、その日は異様に静かだった。

家の中だけじゃない。
外の喧騒まで止まっているような気がした。

前日までの過酷な旅を癒すため、
ゆっくり寝かせていた息子を起こしに行く。

小さな声で、
「ちょっと起きて。話がある」

布団の中で目を開けて、
「ん? なに?」

「ごめんごめん。体起こして」
んー、と大きく伸びをして、体を起こす。

「どしたん?」

「母さんな、この家出る」
「は? どしたん?」

眠そうだった目が、一気に覚めた。

今まで、毎日辛くてな、、、

伝え方は決めていない。
言葉はポロポロとこぼれる。

——旅の間に過呼吸を起こしたこと。
体が限界だったこと。
帰ってきたら出ると、決めていたこと。

「——そうなん?
んで、どうしたらいい?」


「ついてきてくれる?」
「もちろん!」

あっさりと、話は終わった。
なんとも”軽い”!

パジャマのままの息子と、
遠足の準備でもするかのような、妙なテンション。

「あれいる?」
「これは?」

言いながら、
私が忘れていたものを一緒に詰めていく。



「お世話になりました」

心の中でそう言って、一礼し外へ出た。

振り返る。
もう自分の家ではなくなる、この家。
17年過ごした場所。

この家の“家族”にはなれなかったのだと、
もう一人の私が、静かにそう教えてくれた。



荷物を車に積みながら、明日からの話をする。

入学式は、一人でここから行ってもらうこと。
そのあと、ゆっくり話す時間があること。
子どもたちの引っ越しのこと。

神妙に聞いていた息子が、
ウーン!と伸びをしながら、
ふと、

「なんか、面白くなりそうだなぁ!」

と、いつもの屈託のない笑顔を見せた。

その一言で、張りつめていたものが緩んだ。
怒涛の一年間の幕開けは、なんとも軽い。

ここから先は

9,660字 / 9画像

¥ 980

Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

なんと‼️ そんな神みたいな方がいらっしゃるとは😭 いいのですか?😭💦 嬉し過ぎます❣️❣️❣️