時をかける三角関係!? 第1話

あらすじ
市川新は24歳で唯一の彼女である鈴平佳穂に振られ、36歳でトラックに轢かれる。死んだと思った彼が目を覚ますと、新は高1になっており、20年前にタイムスリップしていた。
「今度は佳穂と添い遂げる!」と誓った新。彼が知る佳穂との恋愛フラグは『初恋相手の綾瀬愛菜に酷い振られ方をすること』。未来の佳穂は振られた新を慰めるうちに恋に落ちたという。
失恋前提で綾瀬に告白したが、綾瀬は「友達から始めない?」と新に興味を持ち、新と佳穂の所属する放送部に入ってくるなど、元の歴史とは違う流れに。さらに、佳穂は元々新が好きなようで・・・・。
こうして未来の彼女と初恋相手とタイムトラベラーとの三角関係が勃発した。

※本作品は脚本形式で作成しました。

1話

高藤高校・放送室 放課後(2004年)

 16歳の佳穂と綾瀬に詰め寄られている同じく16歳の市川いちかわ あらた

新(モノローグ)「鈴平 すずひら佳穂 かほ。元カノ」
佳穂「市川は」
新(モノローグ)「綾瀬 あやせ愛菜 あいな。初恋相手」
綾瀬「市川君は」
佳穂・綾瀬「どう思う?」
新(モノローグ)「2度目の16歳は想定外の事態になってしまった」

カフェ 昼(2019年の回想)

 31歳の新と31歳の佳穂が席についている。

佳穂「別れましょう」

 愕然とする新。

新「なんで?」
佳穂「好きな人ができた」
新「俺じゃダメなのか?」
佳穂「わかるでしょ」
新(モノローグ)「31歳の時、最初で最期の彼女に振られた」

職場 深夜(2019年の回想)

 オフィス内の照明が消え、真っ暗な中、31歳の新が自分のデスクでノートPCのキーを必死で叩いている。

新(モノローグ)「そこからは仕事だけに没頭した」

職場 昼(2021年の回想)

 会社の同僚が数人で出かけようとする。

新(モノローグ)「コミュ障・陰キャな性格が災いして出世コースにこそ乗れれなかったが、会社に居場所を作ることくらいはできた」
同僚1「いつものカレーでいい?」
同僚2「コンビニのとこにラーメン屋できてたけど」
同僚3「あそこびみょーだった」
同僚2「マジか。てか、もう行ったんかい」

 一人残されるコンビニのパンを食べる31歳の新。

自宅 夜(2021年の回想)

 自宅でぼんやりと一人ゲームをしている31歳の新。

新(モノローグ)「友達はいなかったが、会社はそんなものを作るところじゃない」
新(モノローグ)「充実した人生であるとは口が裂けても言えないが、特別不満があるというわけではない。とりあえず仕事に没頭していれば何も考えずにすんだ」

職場 早朝(2024年)

 オフィス内に入る36歳の新。そこはデスク等の什器しか残っておらず、もぬけの殻。

新「ある朝出勤したら、会社が倒産していた」

 呆然とする新。

新「全部なくなった」

大通り 早朝(2024年)

 光を失った目でトボトボと歩く新。
 考えがまとまらず、歩行者用信号が赤なのに歩き続けてしまう。
 トラックの急ブレーキ音。

新「へ?」

 トラックにはね飛ばされる新。

新「あ、死ぬ・・・」

 横断歩道の上で血塗れになり、横たわる。
 そっと目を閉じる。

新「ま、俺の人生こんなもん・・・」

 唐突に目を見開く。

新「そんなわけあるか!! ろくでもねークソみたいな人生だ!!」
新「なんなんだよ! 俺の何がダメだった!!」

高藤高校・中庭 放課後(2004年の回想)

 16歳の綾瀬の前に立つ緊張した面もちの新。

新「あ、ああああああああ、綾瀬さん」
綾瀬「はい」
新「お、おお、俺は、ぼぼ、ボクは綾瀬さんのこ、と、が」
綾瀬「ごめんなさい」
新「す、」
綾瀬「あのさ」
新(モノローグ)「違う! 初恋相手綾瀬さんじゃない、元カノ佳穂だ」

カフェ 昼(2019年の回想)

 31歳の新と31歳の鈴平佳穂が席についている。

佳穂「別れましょう」
新(モノローグ)「もう手遅れだ! もっと思い出せ!!」

新のイメージ

 佳穂と自宅で食事をしている記憶、佳穂と遊園地で遊んでいる記憶、佳穂と寝ている記憶、佳穂に告白されている記憶などが浮かんだ後、高校の教室にいる佳穂が浮かぶ。
 
新(モノローグ)「俺と佳穂は陰キャ同士&低カースト同士で同じ放送部」

高藤高校・放送室 夕方(2007年の回想)

 手にケースに入った卒業証書を持つ18歳の新と佳穂。

佳穂「私、市川のこと、好きだよ」
新(モノローグ)「卒業式のあと、向こうから告白された」
新「ごめんなさい」
新(モノローグ)「断った」
新(モノローグ)「大学への進学は決まっていた。新しい出会いに期待したかったんだ」

大学・学食 昼(2010年の回想)

 一人で食事をしている新。

新(モノローグ)「期待は裏切られた」

 携帯電話にメールが届く。
 内容は佳穂からで「今度会わない?」というもの。

新(モノローグ)「俺の何がよかったのかはわからない。でもその日、再度告白され、付き合うことになった」

カフェ 昼(2019年の回想)

 31歳の新と31歳の鈴平佳穂が席についている。

佳穂「わかるでしょ」

大通り 早朝(2024年)

 血まみれで倒れている36歳の新。

新「今ならわかる。佳穂から告白してきたことに甘えていた。大事にしていなかった。結婚も稼げるようになって一人前になったらなんて思っていた。そう、今ならきっと。きっと・・・」

高藤高校・教室 午前中(2004年)

 机に突っ伏して寝ている16歳の新。
 その前には教師が立っている。
 新が目を覚ます。

新「んぁ」
教師「おはよう」
新「うぇ・・・?」

 周囲を見渡し、自分の服装(学ラン)を見る新。

新「はあ!?」
教師「顔洗ってこい」
新「えーと」
教師「さっさと立つ」
新「は、はい」

 立ち上がる新。

高藤高校・男子トイレ 午前中(2004年)

 洗面台の鏡を使い、自分の顔を見る新。

新「なんだこれ!」

 自分の持ち物を探るとポケットからスマートフォンが出てくる。
 待受画面の日付を確認する。

新「2004年5月・・・高1・・・」

 トイレの窓を開けて外を見る。
 別のクラスが体育の授業を行っている。

新「夢・・・?」

 教室で目覚める直前、トラックにひかれて血塗れな自分を思い起こす。

新「いや、走馬燈だな!」

高藤高校・教室 午前中(2004年)

 勢いよくドアを開けて新が入ってくる。

新「戻りました!」
教師「もっと静かに入ってこい」
新「すいません!」

 新は自席には戻らず、16歳の佳穂の席に真っ直ぐ歩いていく。

新(モノローグ)「走馬燈ならリアルの俺が死んだら終わる!」

 佳穂の背後に立つ。

佳穂「(振り返って小声で)何してんの」

 佳穂を後ろから抱きしめる新。

新「会いたかった」
佳穂「ーーっ!」

 騒然とする教室内。

新(モノローグ)「・・・走馬燈、長くね?」

 授業終了を示すチャイムが鳴り響く。

教師「とりあえず職員室に行こうか」

高藤高校・職員室 午前中(2004年)

 教師の前で新と佳穂が立って話を聞いている。

教師「生徒の恋愛に首を突っ込む気はないんだけどさあ。同意を得ない・・・、ようするに痴漢みたいなことされたら止めないわけにはいかんのよ」

 『あの怪我でこんなに死なないのはおかしい。そもそも走馬燈ではないのでは。となると俺のあの行為はかなりアウトなのでは』といったことをぶつぶつと呟いている新。

教師「市川、聞いてる?」

 両手で自分の両頬を叩く新。

新「はい。すいませんでした」
教師「それは俺へじゃないよね」

 佳穂に向き直る新。

新「ごめん」
佳穂「うん」
教師「鈴平さんは大丈夫?」

 ゆっくりとうなずく佳穂。

教師「次やったら説教じゃすまないからな」

高藤高校・廊下 午前中(2004年)

新「失礼します」

 職員室の扉を閉める新。佳穂は先に早足で歩いている。
 小走りで佳穂に追いつく新。佳穂の顔は赤い。

新「ごめん」
佳穂「なんだったの?」
新「うん?」
佳穂「さっきの」
新「寝ぼけてた」
佳穂「ホントに?」
新「ホントだって」
佳穂「はいはい。そういうことにしておくね」

 教室の扉を開け、そっと教室内に入っていく佳穂。

高藤高校・教室 午前中(2004年)

 自席に座って授業を受けている新。

新(モノローグ)「そうやら走馬燈ではないらしい」
新(モノローグ)「タイムリープ、というやつなのだろう」
新(モノローグ)「これからどうすっかな」

 2024年にトラックにはねられ倒れている光景が浮かび、青ざめ、それを振り払うように頭を左右に振る。

新(モノローグ)「決まってる。この未来を変えるんだ」

 2019年に佳穂に振られた光景が浮かぶ。

新(モノローグ)「思えば、佳穂に振られてから俺の人生は転落していった」
新(モノローグ)「今度こそうまくやる」

 ちらりと前方の席の佳穂を見る。

新(モノローグ)「この時点では同じ部活の友人だった」

新の部屋 夜(2010年の回想)

 半裸で同じベッドに入っている22歳の新と佳穂。

新「佳穂ってさ」
佳穂「ん?」
新「俺のこと、いつから好きだったの?」
佳穂「そんなこと知りたい?」
新「イヤならいいけど」
佳穂「綾瀬さんに振られたとき」
新「ん? なんて?」
佳穂「綾瀬さんっていたじゃない。彼女に振られたとき。酷い振られ方して激落ち込みしてる新をなぐさめてたらキュンとしちゃった」
新「マジで?」
佳穂「マジ。それまではまったく興味なかった」
新「えー・・・」

 肩を落とす新。

佳穂「今は大好きだよ」

 頬にキスをする佳穂。

新「こんなんで元気が出る自分が憎い」
佳穂「彼女のキスをこんなんって言うな」

 笑う二人。

高藤高校・教室 休み時間(2004年)

 チャイムが鳴り、授業が終わる。
 友人たちと談笑している綾瀬を見る新。

新(モノローグ)「綾瀬愛菜。中学時代からの同級生。才色兼備でカースト上位にして」
新(モノローグ)「俺の初恋相手」
新(モノローグ)「俺はこの人に振られている」

お好み焼き屋 ショパン 放課後(2004年)

 お好み焼き屋のテーブルを囲んでいる放送部部員8人。
 テーブルの上にはそれぞれ4分の1程度に切り分けられたお好み焼きとソフトドリンクが置かれている。

北岡「えー。今年は1年生が4人も入ってくれました。あっりがとーございます! じゃ、みんな仲良くがんばっていきまっしょー。かんぱーい!」
部員たち「かんぱーい!」

 それぞれのグラスを合わせる部員たち。

新(モノローグ)「放送部では新入生の勧誘が一段落した5月に新入生歓迎会を行うのが恒例だった」
武田「(小声で)なんか部長テンション高くないですか?」
新(モノローグ)「武田たけだがく。俺とは中学からの友人。必然的に綾瀬さんとも同じ中学校ということになるが、俺と友人なだけあって当然綾瀬さんとはそれ以上の接点はない」
叶「ああ、それはね」
新(モノローグ)「かのうみお。2年生。副部長」
西川「私とココの支払いを賭けたの。3人以上入るか入らないかで」
新(モノローグ)「西川にしかわ清子せいこ。2年生」
都「ということは・・・」
新(モノローグ)「みやこ紀枝のりえ。1年生。佳穂の中学から友人」
北岡「さあ、みんな! どんどん食べて飲んでくれ。そして俺に最大級の感謝を!」
新(モノローグ)「北岡きたおか北辰ほくしん。3年生で部長」
西岡「すいません! 焼きそばも追加で!」
北岡「ま、賭けはともかく、いっぱい入ってくれてよかったよ」
西川「男女二人ずつっていうのもいいね。私らの女ばっかだし」
叶「そうね」
佐木「部長ちゃんも男の子入ってくれてうれしーね?」
新(モノローグ)「佐木さき育美いくみ。2年生」

 親指を立てる北岡。

叶「男子と女子それぞれ知り合いなんだっけ?」
佳穂「はい」
都「あたしと佳穂が同じ中学で、男子二人も同じ中学?」
武田「そっすね。俺が市川を誘いました」
新「誘われました」
佐木「ねね。聞いてい?」
武田「なんでも」

 それぞれ頷く1年生。

佐木「恋人いるの?」

 テンションが上がってキャーキャーいう佐木。
 苦笑いを浮かべる叶、西川、北岡。
 想定しなかった質問にそれぞれを窺う1年生たち。
 空気を察する武田。

叶「答えなくていいからね」
武田「女子はわからんすけど、市川は彼女いない歴イコール年齢っす」
新「なぜ人のを言う」
武田「違うんか!」
新「違わんが!」
佐木「好きな人はいないの?」

 期待を込めたキラキラした目で二人を見る佐木。

叶「イクちゃん、あんまり」
武田「こいつはいます」
叶「聞きましょう」
新「おま」
武田「まあまあ」

 期待を込めた目が増えている。
 ため息をつく新。

武田「こいつ同じ中学でこの高校に来た綾瀬さんって子にずっと片思いしてるんすよ」
佳穂「綾瀬さん!?」
都「同じクラス?」
佳穂「ちょー美人」
都「へえ」
武田「そんなちょー美人なんで告白もできず、ずーーっと片思い」
新「うっさいなあ」
佐木「告白、しないの?」
武田「勝算は限りなくゼロっすからね」
新「だからお前が」
武田「違うんか!」
新「違わんが!」
叶「二人の流行り?」
佳穂「万が一ってこともあるかもよ」
西川「お」
佐木「そーだよ!」
北岡「ずっと引きずるより、玉砕するなら玉砕して次に行った方がいいとおじさんは思うな」
佐木「部長ちゃんもいろいろあったもんねー」
北岡「はっはっは」
新「う・・・」
新(モノローグ)「そう。俺はこの流れで綾瀬さんに告白することになった。となると返答は1つだ」
新「わ、わかりました」

高藤高校・教室 午後(2004年)

 黒板には『球技大会』の文字。

教師「今日は2週間後の球技大会の出場種目を決めてもらう」
教師「それと運営委員を男女1名ずつ出さないといけないんだが・・・やってくれる人」

 挙手を促す教師。
 誰も教師と目を合わせようとしない。苦笑いを浮かべる教師。

新(モノローグ)「あー、こういうのあったなー」

 そっと手を挙げる新。

教師「お、市川。やってくれるか」
新(モノローグ)「生徒側より教師側に感情移入してしまう36歳」
教師「あとは、女子・・・」

 手を挙げる綾瀬。

綾瀬「じゃあ、やります」
教師「ありがとう。さすがだな」
新(モノローグ)「あー。こういうとき率先して前に出られる人だったっけ」
教師「じゃ、二人は前に」

 黒板の前に移動する新と綾瀬。

教師「このあとの仕切りは運営委員に任せた。スポーツの種類と人数はこの紙にあるから」
新「綾瀬さん、書記お願い」
綾瀬「あ、うん」

 一瞬驚いた表情を見せながらチョークを手に取る綾瀬。

新(モノローグ)「昔はこんなの緊張したけど、30越えたあたりから余裕になったよな」
新「えっと、今回行われる種目ですけど、まずバスケ」

 黒板にバスケットボールと書く綾瀬。

新(モノローグ)「正直汚い字さらす方がキツいわ」

高藤高校・3年教室 放課後(2004年)

 黒板には『球技大会運営委員会』の文字。
 運営委員長である3年生が黒板の上で話している。
 新と綾瀬は並んで座っている。

3年生「各競技の審判はその球技の部活をやっている人と先生にお願いしているんだけど、準備を順番にやってもらいたくて・・・」

 ちらりと隣の綾瀬を見る新。
 視線に気づき、にこりと笑う綾瀬。
 ドキっとする新。
 綾瀬は指で前を見るように促す。

新(モノローグ)「やっぱりかわいい、とは思う」
新(モノローグ)「ただまあ、女子高生だよな」
新(モノローグ)「いろんな感情がある佳穂はともかく、親子ほど歳の離れた子・・・」

 ぼんやりと前を見る新。
 そんな新の横顔を見る綾瀬。

高藤高校・グラウンド 午後(2004年)

 サッカーのコートで走っている新。

新(モノローグ)「そして球技大会本番。俺はサッカーにエントリーしていた。ポジションはフォワード」
新「しんどいけど身体が動く! 30代の身体とは違う!」

 周囲を見渡し、スペースに走り込む新。

新「サッカー漫画を読みあさって、代表戦くらいは見ていた俺はかつての俺とは違う!」
サッカー部員「市川!」

 サッカー部員が蹴ったボールに合わせ、ボレーシュートを放とうとする新。

新「もらった!」

 しかし、空振りをして派手に転んでしまう。

新「・・・技術は伴わない」

 サッカー部員が倒れている新の手を取り起こそうとする。

サッカー部員「ナイスプレー」
新「どうも」

 起き上がる新。
 プレーが再開され、サッカー部員は走っていく。

新「こういうときの運動部嫌いだったけど、こっちも拒絶してたんだよな・・・」

 グラウンドの端で佳穂と都が新を見ている。
 二人とも不思議そうな表情を浮かべている。

高藤高校・体育館 放課後(2004年)

 運営委員数人が片づけを行っている。
 新は綾瀬とバスケのスコアボードを運んでいる。

新「重くない?」
綾瀬「大丈夫」

高藤高校・放送室 (2004年の回想)

 歓迎会翌日の放課後。
 放送部員が集まっている。

佐木「ねえ、いつ告白するの?」
武田「あ、マジだったんですね」
佐木「嘘なの?」
新「しますよ」
女子「おー」
武田「できんのか?」
叶「LINEでとか?」
西川「やっぱ直接じゃないと」
佐木「手紙で呼び出しとかしてね」
武田「ラブレターとか書けんのか?」
都「代筆?」
佳穂「よし、女子部員みんなの力を・・・」
新「あの!」

 新を見る一同。

新「自分でします」

高藤高校・体育倉庫 放課後(2004年)

 引き続きとバスケのスコアボードを運び入れている新と綾瀬。

新(モノローグ)「前回はあの流れで女子部員がラブレターを書いて、球技大会中に先輩が机に入れていたはず」
新(モノローグ)「我ながらダサっ!」
新(モノローグ)「それに綾瀬さんにも失礼だ」
新「あの」
綾瀬「なに?」
新「これ終わったら中庭に来てもらっていい?」
綾瀬「え?」
新「あ、都合悪い?」
綾瀬「いいけど・・・」
新(モノローグ)「今告白しちゃうと佳穂がいないからな」

高藤高校・中庭 放課後(2004年)

 中庭の端の人気が少ない位置でぼんやりと突っ立っている新。
 近くの廊下の窓からは放送部員が密集して様子を窺っている。
 横目で放送部員を見る新。
 さっと隠れる放送部員。

新(モノローグ)「よし、佳穂いるな」
佐木「いよいよだね! わくわくするね!!」
武田「イクちゃん先輩、見せ物じゃないっす」
佳穂「むしろ見せ物にした方が市川のためじゃ?」
武田「というと」
佳穂「今から振られるんだから」
都「笑ってあげた方がってやつだね」
叶「望み薄?」
都「前にも言いましたけど、超美人。学年一かもです」
叶「あー」
西川「ま、通過儀礼として煽ったわけだしね」
佐木「やってみないとわかんないよー」
西川「じゃ、イクは成功に賭けるのね。何賭ける?」
佐木「えーっと・・・」
北岡「市川君って初告白?」
武田「たぶん」
北岡「あんな余裕なの?」

 欠伸をする新。

叶「普通はもっとガチガチよね」
都「開き直り、でしょうか」
武田「脳が追いついていない?」
佳穂「・・・」

 綾瀬が走ってくる。

綾瀬「ごめん。お待たせしました」
新「こちらこそ、ごめん。・・・ありがとう」

 顔を見合わせる二人。

新「・・・」
綾瀬「・・・」
二人「あの・・・」

 思わず笑う二人。

叶「雰囲気は悪くないね」
佐木「これってもしかして!? もしかして!?」
武田「いや、ないですよ。・・・ないよな」
佳穂「しっ」

 真顔になる新。

新「好きです。僕と付き合ってください」

 頭を下げ、手を差し出す新。

放送部員「おおーーー!」
西川「さあ」
佐木「どうなるの!?」
新(モノローグ)「言った! そしてここから」

高藤高校・中庭 放課後(前回の2004年の回想)

 16歳の綾瀬愛菜の前に立つ緊張した面もちの新。

新「お、おお、俺は、ぼぼ、ボクは綾瀬さんのこ、と、が」
綾瀬「ごめんなさい」
新「す、」
綾瀬「あのさ」

新の部屋 夜(2010年の回想)

 半裸で同じベッドに入っている22歳の新と佳穂。

佳穂「酷い振られ方して激落ち込みしてる新をなぐさめてたらキュンとしちゃった」

高藤高校・中庭 放課後(2004年)

新(モノローグ)「酷く振られ・・・酷い振られ方!?」

高藤高校・中庭 放課後(前回の2004年の回想)

綾瀬「あのさ。私を呼びだした手紙って自分で書いてないよね?」
新「え・・・あ、え、え、え、っと・・・」
綾瀬「そういうのっていいと思ってる」
新「そ、そ、そ、それは、ほ、ほ、うそ、うの・・・」
綾瀬「言い訳すんな!!」
新「あ、あ・・・」
綾瀬「それとそのしゃべり方。告白? これ、告白だよね。告白するつもりなら、もうちょっとはっきりしゃべってもらえるかな。見てて不快なの。病気とかなら仕方ないけどさ。武田君とかと話している時は普通だよね」
新「う・・・」
綾瀬「放送部に協力してもらうなら話し方の特訓とかすれば? はっきり言って市川君は告白する段階にすらいないから。ただただ不快でした」

 崩れ落ちる新。
 去っていく綾瀬。
 駆け寄る放送部員。

高藤高校・中庭 放課後(2004年)

 頭を下げながら『私を呼びだした手紙って自分で書いてないよね?』『もうちょっとはっきりしゃべってもらえるかな』という綾瀬の言葉がリフレインされる。
 冷や汗が流れ出す。

新(モノローグ)「これは・・・まずくないか!?」
綾瀬「ごめんなさい!」

 勢いよく頭を下げる綾瀬。
 驚いて顔をあげる新。

綾瀬「同じ中学だったのにごめんだけど、まだ、市川君のことよく知らなくて。特に市川君って最近、すっごい変わったよね」
新「え・・・あーそうですか。そうですかねー?」
綾瀬「でも、その変化はすっごい良いと思ってるよ」

 はにかむ綾瀬。

綾瀬「だから、友達から始めない?」

 両手で新の手を握る綾瀬。
 呆然とする新。

新「は、はい・・・」

 笑顔になり手を離す綾瀬。
 
綾瀬「じゃ、後でねっ」

 小走りで駆けていく綾瀬。
 その場から動けない新と放送部員。

放送部員「これは・・・」
新「どっちだ!?」

高藤高校・放送室 放課後(2004年)

 椅子に座り押し黙っている放送部員。

北岡「よし!」

 真剣な表情で北岡を見る放送部員。

北岡「部活をしよう」

 その一言で緊張が解け、立ち上がる放送部員。

叶「そうですね」
北岡「改めてNコンの振り分けなんだけど・・・」

 綾瀬が入ってくる。

綾瀬「失礼します」

 固まる放送部員。

北岡「なんでございましょうか」
叶「なんで部長が緊張するんですか」
綾瀬「(北岡に)部長さんですか?」
北岡「そ、そうだが」
綾瀬「1年2組。綾瀬愛菜です。入部させてください」
放送部員「・・・」
放送部員「えーーー!!」
綾瀬「5月だからダメなんですか?」
北岡「そんなことはないが(ちらりと新を見る)」
叶「部員は多い方がいいからね(ちらりと新を見る)」
西川「確かに、ね(ちらりと新を見る)」
佐木「ねっ(新に話しかける)」

 笑顔で新に手を振る綾瀬。
 新も固い笑顔で手を振り返す。

佳穂「ダメ!」

 佳穂を見る一同。

佳穂「あ・・・」
綾瀬「どうして?」
新(モノローグ)「『今度こそうまくやる』・・・それは佳穂と再び付き合い、添い遂げることだと思う」
佳穂「・・・っ。放送部に興味ないでしょ」
綾瀬「あるけど」
佳穂「嘘だ」
新(モノローグ)「それには綾瀬さんに酷い振られ方をする必要がある」
綾瀬「すっごい興味あるわけじゃないけど・・・高校の部活だよ? なんか面白そうじゃダメなの?」
佳穂「う・・・」
綾瀬「(新に)ね?」

 新を見る綾瀬と佳穂。

新(モノローグ)「中身は大人だし、未来を知っている。余裕だと思っていた」
佳穂「市川は」
綾瀬「市川君は」
佳穂・綾瀬「どう思う?」
新(モノローグ)「2度目の16歳は想定外の事態になってしまった」

 佳穂を見る新。
 綾瀬を見る新。
 ほほえむ綾瀬。

新「なんだこれ!!」

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