海外で働きたい大学生へ ― 「benefits package」から見える日系と外資の違い
外資系企業や海外で働いてみたい。そんな大学生には、英語力や企業研究と同じくらい、知っておいてほしい言葉があります。
benefits package
会社の英語資料を読んでいて、私はこの言葉に改めて引っかかりました。
benefitが「福利厚生」を意味することはわかります。しかし、なぜ package なのでしょう。
日本語では「福利厚生一式」なんて、まず言いません。
この小さな違いを調べてみると、単なる英単語の問題ではなく、日本と海外では「会社から何をもらって働くのか」という感覚そのものが少し違うことが見えてきます。
日本では「会社にある福利厚生」
日本で福利厚生といえば、健康保険、住宅手当、退職金、育児支援、社員食堂など、会社が従業員のために用意している制度という感覚が強いと思います。
もちろん役職や雇用形態による違いはありますが、同じ条件の社員なら基本的には同じ制度が適用されます。
仕事のできる上司も、そうでもない同僚も、健康保険や社員食堂の基本条件は同じです。
つまり福利厚生とは「自分に与えられた報酬」というより、その会社に入れば利用できる共通の環境として捉えられやすいのです。
海外では「あなたのpackage」という感覚が強くなる
私は以前、日系の企業でアメリカで働き、日本では外資系企業にも勤めていました。そこで感じたのは、給与以外の待遇についても、日本より「自分に提示された雇用条件」という意識が強いことです。
給与だけではありません。
salary + bonus + health insurance + retirement plan + paid leave + equity
などを含めて、自分が会社から受け取る total compensation を考えます。
米労働統計局(BLS)も、賃金とbenefitsを合わせて total compensation として扱っています。ここで package という言葉が生きてきます。
会社に福利厚生制度が「ある」だけではなく、
「この会社は、自分に何を提示しているのか」
という視点で待遇全体を見るのです。
就活生ほど「年収」だけを見ないでほしい
これは、これから外資系企業や海外企業を目指す大学生には特に知っておいてほしいところです。
たとえば、
A社は年収15万ドル+RSU+退職制度への会社拠出+充実した医療保険。
B社は年収17万ドルだけれど、株式報酬は少なく、その他の条件も違う。
どちらが「給料のいい会社」でしょう。
単純には決められません。
外資系では、stock optionsやRSUなどの equity compensation が重要になる職種もあります。ほかにもbonus、retirement plan、insurance、paid leaveなど、基本給以外にも会社が提供している価値があります。
だから、
How much is the salary?
だけではなく、
What does the compensation package look like?
という発想を持つ必要が出てきます。
packageは「福利厚生一式」ではない
辞書的には benefits package = 福利厚生(制度) などと訳されます。
でも、海外で働いた経験からすると、packageを単に「一式」と訳してしまうと、大事な感覚が抜け落ちる気がします。
「会社があなたを雇うために提示する、複数の待遇を束ねたもの」
くらいに考えるとわかりやすい。
だから英語では、
compensation package
benefits package
relocation package
severance package
と、packageがさまざまな場面に登場します。
「あなたに対して、会社は何を提供するのか」。
そこにpackageという発想があります。
外資を目指すなら、「会社を選ぶ側」の目線も持とう
私が大学生に一番伝えたいのは、実はここです。
就職活動というと、
「この会社に入れてもらえるだろうか」
「面接で評価してもらえるだろうか」
と考えがちです。
もちろん、それも必要です。
でも外資系や海外で働くなら、少しずつ、
「この会社は、自分の能力や時間に対して何を提示しているのか」
という反対側の視点も持ったほうがいい。
それは偉そうに会社を値踏みするという話ではありません。
会社が人を選ぶように、働く側も、自分の人生の時間をどこに使うのかを考えるということです。
salaryだけを見るのではない。bonusも見る。benefitsも見る。equityも見る。休暇も見る。そして仕事内容や成長機会も見る。
それらを含めて、自分に提示された package を考える。
英単語一つに、働き方が見える
日本では福利厚生を、会社に備わっている制度として見ることが多い。
一方、アメリカや外資系で働いていると、それも含めて、自分が会社から受け取る条件として意識する場面が増えます。
もちろん、日本企業がすべて一律で、海外企業がすべて個人別というわけではありません。
それでも私は両方の環境で働いてみて、この感覚の違いは確かに感じました。
だから、外資系企業や海外就職に興味のある大学生が benefits package という言葉を見つけたら、「福利厚生」と訳して終わらせないでほしい。
なぜ、わざわざpackageなのだろう?
そこまで考えてみる。
英語を学ぶというのは、単語の日本語訳を覚えるだけではありません。
その言葉を使っている人たちが、仕事や会社をどう見ているのかを知ることでもある。
海外で働きたいと思っているなら、そんな英語の学び方も、きっと役に立つと思います。
