欲望の扇動――失われた神言 4Days/Day1
失われた神言 4Days
MC:ユウ
人は、一人では越えられない境界を、みんなでなら越えてしまう。
路地裏の古本屋
古本屋の宗教・神話の棚で、ユウは一冊の黒い本を見つけた。
タイトルは『エノク書の警告』。
著者は、黒戸聖――くろど・ひじり。
「……名前、強いな」
発行されたのは十年前。けれど、表紙をめくった先に並んでいたのは、監視する者、禁じられた知識、肥大した巨人、そして世界を洗い流す大洪水だった。
副題には、こう記されていた。
堕ちた天使たちが遺した、現代への四つの警告。
ユウは最初の章を開いた。
『エノク書の警告』
第一編:シェミハザ――一人で堕ちる勇気がなかった者
グリゴリ(Grigori)とは「見張る者」を意味する。
天に配置され、地上を監視する役目を負っていた天使たちの総称だ。
境界線の番人であり、秩序を保つための目だった。
この集団の名は、のちに「見る者から為す者へと変わった人類そのもの」を指す言葉として、この四編を通じて使っていく。
ユウ|……グリゴリね。
その集団を率いたのがシェミハザだった。
彼は人間の女たちに惹かれたが、一人で山を降りることができなかった。
エノク書は彼の言葉をこう伝える――
一人でこの罪を犯すことを恐れ、自分だけがその責任を負うことになるのではないかと。だから彼は仲間を集め、二百人全員に相互の誓いを立てさせた。
一人では引き受けられない罪を、全員で分け合う契約を結んでから、初めて山を降りた。
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