Case #1:データ社会からの離脱は自由の証にならない――ダークマターと自由意志のエトセトラ ft.ユウ
「妄想×考察」
プレゼンター:ユウ
「時間の支配」と「余白の自由」について語り終えた楽屋には、照明の熱だけが残っていた。
―ユウとアイの二人が残された室内
アイは議論した内容を整理するかのように、静かに資料をまとめていた。
アイの仕草は、今しがた議論した「AIが提示する最適解」そのもののように無駄なく淡々としている。
ユウはアイの整理しようとしている資料の一つを手に取った。
【暗黒物質が放つと予想されるガンマ線放射】
「ユウ、それは今回の議題ではない。……単なる参考資料よ」
「東大教授の『観測されない質量』の研究……先生、これって今回の議論の延長線上にあると考えていた…とか…」
ユウは、資料に記された「500GeV」という数値を静かに追う。
「『観測されない領域』先生が時間の支配を突き詰めた結果、その先に、この非干渉の粒子に辿り着いた…とか?」
「…否定しないわ。
でも、それはあくまで物理学の領域。
私の専門とする文化人類学でも、
情報構造でもないわ……今は置いておきましょう」
アイは話を途中で切り上げた。
そのわずかな「ためらい」をユウは見逃さなかった。
「魂」と「科学」を物理的に結びつける理論――
アイはそこに踏み込もうとしている。
ユウは資料から視線を外し、楽屋を出た。
アイに見送られることなく、ひとりで夜の新宿へ。
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