ネクスト・ワールドプラン —— 鏡の中の歪んだ虚像 Ⅰ
インサイト・eye//妄想×考察
MC:アイ
Guest:ミライ・ユウ
「未来を予測する最良の方法は、
それを発明することだ。
だが、未来をシミュレートする最良の方法は、
君の自由を奪うことだ」
最後の晩餐、あるいは0.1秒の防衛線
ミライ:
アイさん……始まってしまうんですね。
脱・ホモサピエンスが……。
どうしよう、私、最後に何食べよう。
やっぱりお肉かな、それとも……。
アイ:
ミライちゃん、落ち着きなさい。
それは100万年という時間軸の話よ。
明日から人類の遺伝子が書き換わるわけではないわ。
どちらかと言えば、あなたの連載テーマである「0.1秒の逡巡」の方が、今の私たちにとってはずっとリアルで、差し迫った問題よ。
ミライ :
……えっ、どういうこと?
アイ:
AIスタートアップ「Simile」が1億ドルを調達したニュース。
彼らが作ろうとしているのは、実在の人間をモデルにした数百万のエージェントによる「社会シミュレーター」よ。
【解説:
シミュレーションが「意思決定」を独占する?】
Simileが150億円もの資金を集めた最大の理由は、単なる仮想空間遊びではありません。
彼らが提供するのは、経営判断や公共政策の「究極のカンニングペーパー」です。
例えば、企業のIR(投資家向け広報)。
新製品の発表やCEOの交代を、現実に行う前に「数百万人の投資家エージェント」が潜む箱庭でテストします。
「株価が何ドル動くか」「どのタイミングで発表すれば批判を最小化できるか」を100万通りシミュレーションし、最も利益が出る「正解」だけを現実にドロップする。
これは公共政策でも同じです。
増税や法改正に対する国民の反発を事前に測定し、反対派の動きを封じ込めるための最適な広報戦略をAIに導き出させる。
そこには「対話」も「議論」も存在しません。
あるのは、計算し尽くされた「失敗しない管理」だけなのです。
政策や商品の反応を「事前に」検証する――つまり、あなたが悩んで答えを出す前に、AIの箱庭の中で「答え」はすでに出ているということ。
ユウ:
……横からごめんなさい。
アイさんの言ってること、こういうことですよね?
私たちが「お肉にしようかな、お魚にしようかな」って迷ってる0.1秒の間に、AIが「ユウなら87%の確率でお肉を選ぶ」ってシミュレーションを終わらせて、店員さんにステーキを焼かせ始めてる……みたいな。
アイ:
その通りよ、ユウ。
意思決定の「フライトシミュレーター」。
彼らはそう呼んでいるけれど、その飛行機に乗せられているのは、私たちという名の「データセット」なのよ。
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