星と時間の道しるべ:偽りの星が示す行先 ―― 革命の歴史 Vol.23.3
革命の歴史 MC: アイ、ユウ
私たちが地図を見ているのではない。
地図が私たちを最適化しているのだ。
手のひらの神様
ユウ:
アイ先生、いよいよ現代の「位置の革命」ですね。
前回は、海の上で現在地を知るために「時間(時計)」を持ち運んだという、執念の歴史でした。
でも今は、時計を持ち歩かなくても、スマホを開くだけで自分がどこにいるか「青い点」で一瞬でわかります。これって、どういう仕組みなんですか?
アイ:
前回のクロノメーターの話を思い出してちょうだい。
「正確な時間」がわかれば「位置」がわかる。
現代のスマホも、実はやっていることの根本は同じなのよ。
ただ、参照しているのが「船に積んだ手作りの箱」から、「宇宙空間を飛んでいる数十個の原子時計」に変わっただけ。
ユウ:
宇宙空間の原子時計……?
それって、人工衛星のことですか?
アイ:
そう。それがGPS(Global Positioning System)の正体よ。
高度2万キロの宇宙から、常に「私は今ここにいて、現在の時刻は〇時〇分〇秒〇ミリ秒です」という電波(時間と位置のデータ)を地上に向けて叫び続けているの。
あなたの手の中にあるスマホは、複数の衛星からの電波を受け取り、その「わずかな到達時間のズレ」を計算して、地球上の現在地を割り出しているわ。
【解説:GPSという軍事技術】
現在、誰もが無料で使っているGPS機能だが、もともとは冷戦時代にアメリカ国防総省が「ミサイルを正確に標的へ落とすため」に開発した純粋な軍事システムである。1980年代の航空機撃墜事件などを契機に、民間への信号利用が段階的に開放され、今日のスマートフォンによるナビゲーションの基盤となった。
「偽りの星」が降らせる電波
ユウ:
元々はミサイルのためのシステムだったんですか……。
なんだか、すごく冷たい感じがします。
古代の人たちが豊作を祈って見上げた「星読み」とは、ずいぶん意味合いが違いますね。
アイ:
ええ。
かつての農耕民が見上げたのは、自然が作り出した「本物の星」だった。
でも今の私たちを導いているのは、人間が打ち上げた軍事衛星という「偽りの星」よ。
古代人は空を見上げて自分の位置を測ったけれど、現代の私たちは空を見上げることすらしない。
ただうつむいて、偽りの星が降らせる電波によって画面上に描かれた「青い点」を信じ切っている。
ユウ:
言われてみれば、ナビを使っている時って、周りの景色よりスマホの画面ばかり見ています。
「次に曲がるのはここだ」って。
アイ:
そこが、この第3の革命の最も恐ろしいポイントよ。
ユウ、あなたは「自分がスマホの地図を使って、目的地を探している」と思っているわね?
ユウ:
えっ? はい、もちろんです。
自分で検索して、自分で歩いていますから。
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