ホアヒンの今と昔
私が前にホアヒンを訪れたのは、30年も前のこと。
真っ青な空と砂浜。そしてきれいな海が印象的だった。海辺では、上半身裸の若い西洋の女性たちが、日焼けを楽しんでいた。私は少し目のやり場に困りながら、ビーチを歩いたり泳いだりした。
今ホアヒンに来てみて、昔の静かな街はすっかり姿を変えていた。私は当時、列車でホアヒンまでやってきた。そこから歩いてビーチ沿いのホテルに泊まって、数日を過ごしたと記憶している。シーフードレストランが安くて美味しい海産物を提供してくれた。
タイは左側通行なので、バイクを借りて少し周辺を走ったような記憶もある。中型免許しかなかった私が、その制限のないタイで、大型バイクにチャレンジした。
でも今回来てみると、街の中央を片道3車線のまっすぐな道が走っている。これを国道と言ったらいいのか高速道路と行ったらいいのか。3車線のうち中央に近いところが120キロ。真ん中が100キロ。そして1番外側が80キロと言う速度制限がなされている。驚くほど真っ直ぐな道だ。
でも自動車専用道と言うわけではなく、道路の脇には家が立ち並び、中央分離帯はあるものの、時に横断歩道があったりする。日本に横断歩道のある高速道路はない。自動車専用道だから当たり前か。この道を凄い勢いで車が走っていく。こんな快適な道が無料だ。
今回私が泊まったホテルは、この道の脇を少し入ったところにある。ホテルからビールを買いに行くセブンイレブンに行くためには、この道を渡らないといけない。信号はない。私は毎回、強い緊張感を持ちながら、この3車線の道をまず中央分離帯まで渡り、もう一度車を確認して、残りの半分を渡る。
中央分離帯にいると、車がすぐ脇を高速で過ぎていく。自転車にリヤカーをつけたようにしている人も、同じようにして道を渡る。危険だ。この道を渡るのは確かに大変なこと。でもこの直線の道はきっとタイの人たちに、大きな富を授けてくれるに違いない。
道路の脇にはたくさんの未開発の土地がある。そして現在進行形でビルが立ち、ホテルができたり、ショッピングセンターができたりしている。勢いよくこの国が経済を回しているのが伝わってくる。救急車がいつも走っている。私の目の前でもバイクが2台ぶつかった。危険と隣り合わせの発展。
ホアヒンに着いたばかりの時、街中のカレー屋さんでは、昼のランチが300バーツ。私は最初この価格を見たとき、もしかしたらホアヒンは観光地のせいで、バンコクより物価が高いのかと思った。
でも実際ホテルの周りを見てみると、50バーツとか60バーツ位でご飯が食べられる。1番リーズナブルだと思ったのはパイナップル。パイナップルが1個15バーツ。このパイナップルの皮をむいてもらうように頼むと20バーツだと言われた。20バーツでパイナップル1個。丸ごと皮を向いて渡してくれる。
皮の剥き方が面白い。まずは葉っぱを切る。そして皮を剥いでいく。ただ真っ直ぐに皮を剥いただけでは、丸いプチプチが残る。このプチプチの部分を、斜めにカットしながら取り除いていく。全部取り除いた後、葉っぱの反対側の軸の部分から6分の1に割く。真ん中の硬い部分を少し除いて袋に入れて渡してくれた。
他のところでもパイナップルは売っていたが、1個丸ごとで15バーツはここが1番安かった。15バーツと言えば100円しない。1個100以下で、充分に熟した甘いパイナップルを買うことができるのは本当に素晴らしい。
自然の豊かさと経済の発展。そして食べ物の安さ。海は昔ほど綺麗ではなくなり、ビーチにいるのは若者ではなく、歳をとった西洋人が多かった。水着を着てはいるものの、しわしわのおじいさんとおばあさん。かつての観光地の勢いはあまり感じられない。でも私たちが泊まったホテルには、西洋人の若いお客さんがたくさん泊まっており、観光地としては充分機能している。
今の若者のホアヒンは海辺で遊ぶと言うよりは、街の中をきっと楽しんでいるのだ。ビーチは高齢者。若者はどこか別の場所。私は行かなかったが、近くには象などを見ることができるSafari体験や、川下りの体験など、いくつものアウトドア体験ができるようなツアーが用意されている。そんなものを楽しんでいる人たちもいるのだろう。
どうしてこうなったのか。決して海岸沿いにゴミが落ちていると言うわけではない。ビニールは誰かがきれいに掃除をして、浜辺にはきれいな砂が広がっている。でも海自体の色がそれほど綺麗ではない。季節のせいなのかもしれないけれど、海自体がかつてよりも汚れてしまったのか。あるいは私が記憶の中で海を美化してしまっているのか。どちらかなのだろうと思う。ホアヒンの海は昔のようには綺麗ではなかったと言うのが今回の感想だ。
かつて素晴らしく美しいビーチはそれなりに美しいビーチになっていた。
