電子起案は、紙の置き換えではない(紙の残る職場、DXの途中①)
行政でもDXが進み、これまで紙で保存されていた文書が、少しずつデータに置き換わっています。
部署によっては、電子化によって逆に仕事が増えるところも出てくるかもしれません。
しかし、電子起案は単に紙をデータへ置き換えるだけのものなのでしょうか。
私は、電子起案の導入によって、仕事の流れや起案の作り方そのものが変わっていくのではないかと考えています。
1.電子化の目的
「電子化の目的は、紙を減らすことでしょう」
そう思う人もいるかもしれません。
しかし、少し発想を変えてみます。
紙や電子の文書を相手に送る場合、どのような方法を使うでしょうか。
起案だけを見ても、紙と電子の違いは分かりません。起案の前に文書がどう届き、決裁後にどう渡されるかまで含めて考えてみます。

おおむねこのようになります。
ここで重要なのは、現在扱っている文書が、紙なのか電子なのかという点です。
紙で受け取った文書を、いちいちPDFにして電子で送るのは手間がかかります。
一方、すでにデータで管理されている文書を送るために、一度印刷して紙にするのも非効率です。
電子化を考えるときは、単に紙を減らせるかではなく、文書がどのような経路で届き、どのような経路で相手に渡るのかを見る必要があります。
2.仕事の導線を変えるという考え方
メールで届いた問い合わせについて、電子起案で決裁を受け、メールで回答する。
この流れは自然です。
最初から最後まで、文書が電子データのまま動いているからです。
一方、紙で届いた依頼書や請求書をPDFにして、電子起案に添付する場合は、かえって手間が増えることがあります。

紙の原本を保存する必要がある場合、電子起案にしても、PDF化と原本保管の両方が残ります。
電子化したはずなのに、工程が増えてしまいます。
この違いは、電子か紙かという形式そのものではなく、仕事の導線が短くなるか、長くなるかにあると私は考えています。
3.紙との違い
紙起案の方が適している場合もあります。

こうした仕事は、しばらく紙起案の方が導線が短いでしょう。
ただし、メールやポータルサイトを通じて届く電子文書は、日に日に増えています。
また、庁内掲示板やシステム上の資料を参照できる場合には、同じ資料を印刷して添付するより、リンクや保存場所を示した方が早く確認できます。
4.電子起案は、経緯を残す仕組みにもなる
電子起案には、決裁の経緯を後からたどりやすいという利点もあります。
起案本文や添付資料、差し戻しの理由などがデータとして残っていれば、後任者も当時の判断材料を確認できます。
数年ごとに担当者が替わることの多い役所では、これは小さくない利点です。
紙の起案でも保存はできますが、保管場所を探し、該当する文書を見つけなければなりません。電子起案であれば、検索や関連付けによって、過去の経緯へたどり着きやすくなります。
電子起案は、現在の決裁を早くするためだけでなく、将来の担当者へ仕事の経緯を残す仕組みにもなり得ます。
電子と紙のどちらが便利かは、固定されたものではありません。
周囲の環境や、文書の届き方が変われば、便利な方法も変化していきます。
5.電子起案の本質は、仕事の導線を変えること
職場に紙の文書が残っている以上、紙起案の方が合理的な場面はなくなりません。
それを無理に電子化しようとすれば、かえって業務が増え、電子化への反発を強める場合もあります。
一方、電子起案にすることで、紙起案では添付しなければならなかった資料を省略できる場面もあります。
庁内のシステムに保存されている資料であれば、その保存場所を示す。
ポータルサイトに掲載されている情報であれば、該当するページを案内する。
過去の電子起案が残っていれば、関連する起案を参照できるようにする。
電子起案では、すべての情報を一つの起案に詰め込むのではなく、必要な情報へたどり着ける導線を作ることもできます。
紙をそのまま電子に置き換えるだけでは、仕事の流れは変わりません。
電子起案に合わせて、添付資料や確認方法、決裁後の文書の動かし方を見直していく。
その判断を重ねながら、電子起案に向いている仕事を少しずつ増やしていく。
役所の仕事は今、その過渡期にあるのだと思います。
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