紙起案の撤退線はどこなのか(紙の残る職場、DXの途中④)
電子起案を進めた場合、同時に考えないといけないことがあります。
紙の運用をどこまで縮小するかです。
なんとなく電子化する。
なんとなく紙も残す。
その結果、二重管理になる。
こうした不合理を減らすことが、電子化によって仕事を増やさないためには重要です。
しかし、どれを電子で管理し、どれを紙で管理するのか。その判断は、担当課に丸投げされているのが現状ではないでしょうか。
今回は、請求書を例に、紙の撤退ラインを考えてみたいと思います。
1.請求書は、ぱっと見では電子化しやすそう
仕事をしていると、見る頻度が高い書類の一つに請求書があります。
請求書には、共通する項目があります。
請求者。
金額。
日付。
振込先。
必要な項目がある程度決まっているため、一見すると電子化に適しているように見えます。
2.バラバラなのは、請求書ではなく請求者
継続的に取引し、毎月請求書を送ってくる事業者がいます。
こういった請求書は、電子化の恩恵を受けやすいでしょう。
継続的に取引する事業者に、いつまでも紙ベースの請求を求め続ける必要があるのか、という話にもなります。
しかし、役所からお金を支払う相手は、毎月請求書を送ってくる事業者ばかりではありません。
川掃除や廃品回収の報酬。
土地を借りた際の支払い。
地域団体へ年1回支払う補助金。
こういったものまで、すべて電子化することは可能でしょうか。
3.紙をなくせば、問い合わせがなくなるわけではない
仮に、一つのシステムを導入して、こうした請求まで電子請求へ移行させたとします。
「ログインできない」
「パスワードが分からない」
「どこに入力すればいいのか分からない」
「PDFにする方法が分からない」
「ちゃんと送信できていますか」
こうした相談が増えることは、十分に予想できます。
こうした地域住民からの請求一つ一つに、細やかに対応する余力が、今の自治体にあるのでしょうか。
4.内部だけ電子化する方法もある
大前提として、人間は年1回しか行わない手続きは忘れます。
同じ「年1回程度の手続き」として、確定申告があります。
確定申告は、相談会場を設け、人員を確保したうえで問い合わせに対応しています。
地域住民などからの年1回の請求まで、そこまで問い合わせに答えながら一律に電子化することは現実的ではないでしょう。
そうした場合には、
相手からは紙で受け取る。
庁内では電子起案で処理する。
検索や支払履歴は電子で残す。
こういった運用も考えられます。
これは不完全な電子化ではありません。
相手とのやり取りと行政内部で、紙の撤退ラインを分けた運用です。
5.問題は、二重管理による負担増大
一番、保管や検索に負担がかかるのは、なし崩し的に次のような運用へ陥ることです。
請求書をすべて紙で受け取る。
PDFに変換する。
電子起案に添付する。
紙原本も保存する。
さらにコピーも残す。
これでは、紙の工程をまるまる残したまま、電子の工程を増やしただけです。
ありていに言えば、仕事を増やしただけの状態になります。
6.撤退ラインを相手別に決める
相手に合わせて業務を組む場合、以下のようなイメージになります。

同じ「請求書」でも、相手によって事情はまるで違います。
一律に紙、一律に電子と決めるのではなく、相手や取引の性質によって運用を変えていく。
そのくらいが現実的なのかもしれません。
7.紙をなくすのではなく、撤退ラインを決める
役所を飛び交う紙は、請求書だけではありません。
申請書。
契約書。
説明資料。
議事録。
図面。
こうした書類でも、紙と電子がしばらく混在することになると思います。
だからこそ、「電子化するか、紙を残すか」の二択だけでは足りません。
紙を残すなら、なぜ残すのか。
電子化するなら、どこまで電子にするのか。
紙と電子が混在するなら、どちらを保存・検索の中心にするのか。
その境界線を、あらかじめ決めておく必要があります。
紙を残すこと自体が問題なのではありません。
問題なのは、理由もなく紙を残し、電子の工程だけを上乗せしてしまうことです。
撤退と総崩れは違います。
紙の撤退戦とは、紙を無理にゼロにすることではなく、紙でなければ困る場所まで、その役割を縮めていくことなのだと思います。
電子起案もまた、紙を画面に置き換えるための仕組みではありません。
仕事の流れを見直し、紙と電子の役割を組み直す。そのための仕組みとして使っていく必要があります。
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