かつて中東のパリと呼ばれた街で、タブーリを食べーる。
この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」
ベイルートに着くまで、パリを期待していた。
「中東のパリ」そう呼ばれていた街。
だが、人が、いない。
歩いても、歩いても、人がいない。
店も、閉まっている。
シャッターが、下りている。
二〇二〇年の爆発事故。
港で起きた大規模な爆発。
その影響が、まだ残っている。
街は、静かだった。
ようやく、開いている店を見つけた。
小さなレストラン。
中に入る。
客は、わたしだけだった。
タブーリ。
レバノン料理の定番らしい。
運ばれてきたのは、緑色のサラダのようなもの。
パセリだ。
細かく刻まれた、パセリ。
たっぷりと、山盛りになっている。
その中に、トマトの赤い粒。
タマネギの白い粒。
そして、ブルグル。挽き割り小麦。
ぷちぷちとした食感のある、小さな粒。
レモン汁と、オリーブオイルが、かかっている。
ひと口、フォークですくって、口に入れた。
爽やかだ。
パセリの香りが、ぶわっと広がる。
レモンの酸味が、ぴりっとくる。
オリーブオイルの、まろやかなコク。
トマトの甘み。
タマネギの辛み。
そして、ブルグルの、ぷちぷちとした食感。
全部が、混ざり合っている。
さっぱりしている。
パセリの量が、すごい。
日本なら、パセリは添え物。
だが、ここでは、主役。
パセリを、こんなに食べたのは、初めてだ。
そして、うまい。
タブーリを、食べーる。
「うまかったです」
「よかった」
店を出た。
街は、まだ、静かだった。
人が、いない。
店が、閉まっている。
「中東のパリ」かつて、そう呼ばれた街。
―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。
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