串焼きを、食べる。ルーマニア、ドラキュラ城。
この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」
霧がかかった、山の中。
中世の、古い城。
ドラキュラの城。
期待していた。
ヴラド・ツェペシュの城。
串刺し公、と呼ばれた男。
人間を串刺しにして見せしめに殺していた。
残虐な、支配者。
だが、案内板を読んで、わかった。
この城は、ヴラド・ツェペシュとは、関係ない。
直接の関係は、ない。
ブラム・ストーカーの小説「ドラキュラ」の舞台になっただけ。
それだけ。
やれやれ。
城の中を、歩く。
観光客が、たくさんいた。
お土産屋が、並んでいた。
ドラキュラグッズ。
牙のついたマグカップ。
吸血鬼のTシャツ。
城を出る。
周りには、飯屋が並んでいる。
串焼きが、名物らしい。
串焼き。
不謹慎なのか商魂たくましいのか。
運ばれてきたのは、肉の串焼き。
ぷりっと焼かれた肉が、串に刺さっている。
ひと口、かじる。
ジューシーだ。
スパイスが効いている。
串に刺さった肉を、もぐもぐと食べる。
残虐なドラキュラになった気分だ。
やれやれ。
ドラキュラ城は、ドラキュラとは関係なかった。
だが、串焼きは、うまかった。
それで、いいのかもしれない。
―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。
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