パンケーキが、主食。エストニア、タリン。
この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」
タリンに着くまで、パンケーキをわかったつもりでいた。
エストニア、タリン。
旧市街は、中世の街並みが残っている。
石畳。
カラフルな建物。
おとぎ話のような街だ。
レストランに、入りメニューを見た。
「ベーコンとスモークチーズのパンケーキ」
デザートだな、と思った。
だが、メニューの場所が、メイン料理の欄にある。
「これは、デザートですか?」
「いいえ、メインディッシュです」
主食。パンケーキが、主食。
運ばれてきたのは、たしかにパンケーキだ。
だが、甘くない。
ベーコンが載っている。
スモークチーズも載っている。
ナイフで切って、ひと口。
もちもちした生地。
ベーコンの塩気。
スモークチーズの香ばしさ。
思わず、顔がほころぶ。
もう一口、また一口。
気づけば、皿は空になっていた。
ビールも注文した。
運ばれてきたビールは、陶器のジョッキに入っていた。
白い陶器。
つるんとした質感。
なんだか、とても愛らしい。
ひと口。
陶器越しのぬくもりと、やわらかな口あたり。
ガラスのジョッキとは、まるで違う。
手のひらに、ほっとする重みが残る。
その感じが、なんとも心地よかった。
ベーコンとスモークチーズのパンケーキ。
陶器のジョッキのビール。
エストニアの、食。
バルト三国の、最北。
旅は、もう、終わりに近い。
レストランを出て旧市街の石畳を、歩いた。
カラフルな建物が、夕日に照らされている。
おとぎ話のような街。
タリンは、かわいい街だった。
―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。
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