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なぜ、ここにいるのか。建前と本音の間で。

この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」


ギニアビサウの首都、ビサウ。
ガンビアからさらに南へ進んで、たどり着いた街。

建物は、ポルトガル領だった名残を残している。
ヨーロッパ風の、古い建物。だが、朽ちている。壁は、ひび割れ、ペンキは、はがれている。かつては、美しかったのかもしれない。
だが、今は、ただ古いだけだ。

街を歩く。
炎天下。じりじりと太陽が照りつける。
重いバックパックが、肩に食い込む。汗が、じっとり、だらだらと流れる。

道は、砂埃まみれだ。
車が通るたびに、ぶわっと砂が舞い上がって、目に入る。口に入る。

街を歩いていると、若い男が声をかけてくる。
「困っているのか? 俺が案内してやるよ」
親切そうに見えた。
だが、もうわかっている。

案内してもらった。市場、港、いくつかの建物。
どれも、特に見るべきものではなかった。
そして、当然のように、言われた。

「ガイド料、払ってくれ」

それから、カフェに連れて行かれて、飲み物をおごらされた。

こういうことが、何度もある。どこでもある。
西アフリカに入ってから、ずっと。

長距離移動に、バスがない。
タクシーを探す。値段を交渉する。ぼったくられる。また交渉する。
配車アプリなんて、ない。すべて、対面で、だるい。

国境では、賄賂を要求される。
「これがないと、通せない」と、にやにやしながら言われる。

言葉が、通じない。
フランス語、ポルトガル語。
身振り手振りで、なんとかする。疲れる。

バックパッカーとして、一人旅をするなら、これらのことは、受容しなければならない。そんなことは、わかっている。

でも、それを上回る高揚感や喜びを、見いださなければ、モチベーションが続かない。限界かもしれない。

小さな食堂で、魚のシチューを食べた。
カシューナッツが、少し入っている。ご飯にかけて食べる。
味は、悪くない。感動もない。

宿に戻って、ベッドに横になった。
天井を見上げる。シミだらけの天井。

日本は、安全だ。
電気は、常に使える。水道から、お湯が出る。
バスは、時刻表通りに来る。タクシーは、アプリで呼べる。
値段は、明示されている。ぼったくられることはない。
賄賂を要求されることもない。
夜、暗い道を歩いても、襲われる心配はない。

西アフリカは、その正反対だ。
休まることのない、この心。

なぜ、わたしは、ここにいるのだろう。
何を見ているのだろう。
何を感じているのだろう。

しいて建前を言えば、「二十一世紀に最も発展するであろうアフリカ地域の、今を見ておく」ということか。そう、自分に言い聞かせる。

だが、正直な感想は、ちがう。
西アフリカの国々は、五十年たっても、何も変わらない気がする。

この街も、この国も。
朽ちた建物、砂埃、停電、蚊。
すべてが、そのまま、放置されている。

変わり映えしない景色。
観光資源は、皆無に等しくたいていショボい。

それでも、わたしは、南へ進む。
なぜなら、もう引き返せないから。

アフリカ縦断、と決めた。
だから、進む。ただ、それだけ。

夜、また停電した。
暗闇の中で、蚊の音を聞きながら、目を閉じた。

明日も、また、重いバックパックを背負って、砂埃の中を歩く。
また、交渉して、また、疲れる。

―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。


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