少しだけ、見えた。フィンランド、イナリのオーロラ。
この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」
フィンランド。
ラップランド地方、イナリ。
北の、果て。
オーロラを、見に来た。
一日目。
夜、外に出る。
寒い。
氷点下、二十度。
空を、見上げた。
星が、たくさん出ている。
だが、オーロラは、見えない。
数時間、待った。
見えない。
諦めて、宿に戻った。
体が芯まで凍えている。
二日目。
星は、きれいだ。
だが、オーロラは、やはり見えない。
足が、凍える。
三日目。
最後の夜。
寒い。
もう、慣れた。
空を、見上げる。
星。
そして——
緑色の、光。
うっすらと。
地平線の近く。
ぼんやりと、にじむように光っている。
オーロラだ。
少しだけ。
ほんの、少しだけ。
じっと見つめる。
光が、揺らめいている。
ゆっくりと、呼吸するように動いている。
カーテンのような、緑のひだ。
十分ほど、眺めていた。
そして、ふっと消えた。
それだけだった。
三日待って、最後の夜に、わずかに見えたオーロラ。
それでも——胸の奥に、静かに灯るものがあった。
―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。
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