見出し画像

鉄格子の街と、柵のないサバンナ。

この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」


アルーシャに着くまで、サファリをわかったつもりでいた。

ダルエスサラームの街は、牢屋だった。

街全体が牢屋というわけではない。
小さな商店に、鉄格子が張られている。
窓にも、扉にも、鉄格子。

まるで牢屋だ。治安が悪いらしい。
不穏なので、すぐに北のアルーシャへ移動した。

アルーシャ。
そこから、日帰りのサファリツアーを予約した。

朝、ランドクルーザーに乗る。

天井が、開く。
ぱかっと開いて、360度、見渡せる。風が気持ちいい。
車は、サバンナを走る。

動物が、見えた。
シマウマだ。

何頭も、草を食べている。
車が近づいても、逃げない。
ちらりと、こちらを見る。
そして、また草を食べ始める。
わたしたちのことなど、どうでもいいらしい。

動物園とは、違う。
ガラスも、柵も、何もない。

ライオンもいた。
木陰で、寝そべっている。
だるそうだ。

キリンがいた。
首が長い。当たり前だが、本当に長い。
ゆっくりと、木の葉を食べている。

ゾウもいた。
デカい。
ゆっくりと歩いている。地面が、ずしん、ずしんと揺れる気がした。

フラミンゴがいた。
ピンク色の群れ。
湖に、何百羽も集まっている。
圧巻だ。

昼、サバンナの真ん中で、食事タイム。

サンドイッチを取り出した。
ひと口、かじる。

その瞬間。

ばさっ、という音がした。
ハゲタカだ。
サンドイッチを、持っていかれた。

あっという間だった。
ハゲタカは、遠くの木に止まって、サンドイッチを食べている。

日本のカラスみたいだ。
いや、それより凶悪か。

やれやれ。

ガイドが、笑っていた。
「気をつけろって、言ったのに」

言われていたかもしれない。忘れていた。

残りのサンドイッチを、しっかりと握りしめて食べた。
ハゲタカは、まだ見ている。
また狙っている。
こちらを見ている。

もうあげないぞ。

--

日の暮れるサバンナは赤に染まる。

サファリではあくせく働く日本と違い、
ただ生きることの幸せが風のように通り抜けた。

ライオン、キリン、ゾウ、フラミンゴ。
どれも圧巻だった。

そして、ハゲタカ。

―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。


いいなと思ったら応援しよう!

ぶるうす恩田 よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!