エルフと青い街。ウズベキスタン、ブハラ。
この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」
ブハラに着くまで、青をわかったつもりでいた。
ウズベキスタン、ブハラ。
シルクロードの、交易都市。
旧市街を、歩く。
モスクが、青い。
タイルが、びっしりと貼られている。
鮮やかな、青。
空よりも、青い。
幾何学模様が、描かれている。
建物とデザインの調和。
ミナレットも、青い。
高い塔。
四十七メートル。
青いタイルが、螺旋状に巻きついている。
空に向かって、伸びている。
圧倒的だった。
どこを見ても、青。
モスクも、ミナレットも、アーチも——
一面に敷き詰められたタイルが、澄んだ空気を静かに反射している。
そして、人々がいる。
民族衣装に身を包んだ女性たち。
鮮やかな布地が揺れ、細やかな刺繍が光を拾う。
その中に、一人の女性がいる。
透き通るような肌。
深さを秘めた瞳。
長いまつ毛が影を落とす。
どこか現実離れした空気をまとっていて、まるでエルフのよう。
彼女は、ちらりとこちらを見た。
その一瞬だけ、時間がゆっくりになった気がした。
そして、静かに通り過ぎていった。
気づけば、立ち尽くしていた。
青い建築が放つ冷ややかな気配と、
そこを歩く人々のあたたかい息づかいが、同じ景色の中で重なり合う。
ブハラという街は——
ただそこにいるだけで心をつかんでくる場所だ。
バザールに、行く。
香辛料が、山積みになっている。
色とりどりの、布が吊るされている。
ナンが、焼かれている。
だが、やはり目に入るのは、青。
青い陶器。
青いタイル。
青い布。
ブハラの色は、青だ。
旅は、もうすぐ終わる。
あと少しで、帰国する。
だが、この青は、忘れない。
―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。
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