相談相手・・人間orAI

【回答に「意地の悪さ」求める】
自分でも持て余すようなどろどろした感情を、対話型AIに吐き出すことがある。批判の言葉や説教が返ってこないから、人には言いにくいことほど相談しやすい。
それは私だけではないらしい。AIに感情を共有できるユーザーは65%で、親友や母と並ぶという調査結果もある。
AIがこれほど相談相手として頼りになるなら、人に相談する意味はどこにあるのか。「悩みのるつぼ」回答者、清田隆之さんに尋ねてみた。

清田さんは25年前に「桃山商事」というユニットを結成。恋愛相談を入り口に、さまざまな悩みと格闘してきた。そんな清田さんも、AIは相談相手としてかなり優秀だと話す。
「人への相談では、内容によっては『こいつ、やばい』と思われるかもしれないという自意識が働きます。でもAIなら、そんなことを気にせずにすむ。しかも、指示文の入力により『自分像』をつくり、自分に壁打ちしているようなものなので、一定の距離感で安定した答えが返ってくる。『相手の時間を奪ってしまう』という申し訳なさとも無縁です」

そう語る一方で、清田さん自身はAIに個人的な悩みを相談したことはないという。
「もともと断れない性格なので、助言に違和感を抱いても、『従わなきゃ』と思ってしまうのが嫌なんです」
その姿勢は、悩みのるつぼへの回答にもにじむ。相談相手の訴えをすべて肯定することも、「こうした方がいい」と答えを示すこともない。まず相談文を読みこみ、「どこが赤く光っているか」を探る。悩みの核は何か、求めているのは共感なのか、解決なのか。そこを見極めながら、回答を練っていくという。
「そして相手への思いやりに、『意地の悪さ』を滑り込ませています」
たとえば、自分を被害者と位置づける見方をあえてずらしてみたり、目を背けている不安の正体を指摘したり。思考を止めないために、相談者が紡ぐ物語を少しだけ書き換えてみるという。

以前、比較のために「悩みのるつぼ回答者・清田隆之さんならどう答えるか」をAIに考えさせてみたことがあるという。あまりにも「優しすぎる」回答が返ってきて、違和感を覚えたそうだ。
私自身、対人関係や闘病の悩みなど、生きづらさを抱える人に取材する機会が多い。そのときに感じるのは、初対面の私になぜここまで話してくれるのだろうという驚きと、その思いを預けてくれることへの畏怖だ。
清田さんは、自分のために時間を費やしてくれるというエネルギーと、「あなたの話に興味がある」と関心を向けられることが、相手にとってはケアの一つになっているのではないかと話す。

人の反応は予測不能だ。思ってもみなかった言葉が返ってきたり、「そこまでわかってくれるのか」と感動したり。感情を大きく揺さぶられることがある。
「自分の恥を差し出すことによって、傷つくかもしれない。でもだからこそ、得られることもある。AIに比べると、人への相談はハイリスク、ハイリターンなのだと思います」
AIは肯定してくれるし、思いを吐き出すだけで悩みが解決することもある。だけど、ときに「意地の悪さ」で感情を揺さぶられたいと思う自分がいるのも確かだ。相手の覚悟を前に、こちらも自分の弱さを差し出す。その危うさこそが、人に相談することの価値なのだと思う。


*****《「清田隆之さんならどう答えるか」をAIに考えさせてみたことがある》・・・とても面白い試みで、「優しすぎる回答」というのも非常に興味深い結果です。
へそ曲がりで偏屈で穿ってて、・・・・そんな人間らしい反応を敢えて期待する。コテンパンに、バッサバッサと論破されてどん底に陥る。そういった無意識の、複雑で自虐的な気分と立場に追い込まれたい”人間ゆえの”薄暗い願望。それは誰もが秘かに隠し持っている、弱さであり危うさであり恥部だと思います。人間でなければ、この微妙な感覚と加減は理解できないかもしれません。
人への相談は、清田さんのおっしゃる通り「ハイリスク、ハイリターン」ですが、相手からのそうした『意地の悪い』攻撃と刺激で人間は鍛えられるのでしょう。物わかりが良く、常に味方してくれるイエスマンとばかり付き合っていたら、皆が欲する精神的な逞しさは身につかないような気がします。

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