【創作】余命宣告
余命宣告を受けた。
この世界では死が近づくと全員が受けるものであり、その時間までもが正確に伝えられる。そのため宣告されたものはこれに備えて死を迎える準備をする。
理由が何であれ、かつて余命宣告を受けた者の中で死を逃れたものは1人としていなかった。
1日と12時間後に死ぬことがわかった私は、覚悟を決め、大切な人たちへの別れを済ました。死ぬのは怖かったが、避けられないものだと分かっていたので受け入れることは案外簡単だった。
宣告された時間。とうとう私の死ぬときがやってきたのだ。
しかし、時間になっても一向に死がやってこなかった。
異例の事態だった。死を逃れたことに、私は喜びを感じた。周りの人間も私のことを祝福した。これは、今後私以外の者にも当てはまるのかもしれない。人類に希望を与えた出来事であった。
本当にそうであろうか。
私は本当に死を避けることができたのだろうか。確かに避けることはできたが、一度は余命宣告をされた身である。それだけは事実だった。近いうちに死がやってくる可能性は他の者より高いのかもしれない。1日後には死んでいるのかもしれないし、それは1秒後でもおかしくはない。
これは、本当に人類の希望になり得る出来事だったのだろうか。私たちにとって余命宣告は絶対であった。それ故に人類は皆、余命宣告を受けるとそれなりの覚悟で己が直面する避けられない現実を受け入れることができていた。
だが、私が絶対的な死を逃れたという事実は、余命宣告における正確性を失わせた。宣告を受けても、もしかしたら死を避けられるのかもしれない。これは誰にとっても喜ばしいことなのだろうか。裏を返せば、今後の人類はすべからく、そのような希望を抱き中途半端な心情のまま宣告された時を迎えなければならなくなったのだ。
死ななかった私というたった1人の存在が、人類の死に対する考え方の全てを変えた。
死がもう目の前にやって来ているかもしれない私は、果たして何事もないかのように今後も生を享受できるのだろうか。
【今日の気分。な1曲】
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