刑務所の中|元受刑者が解説|リアル体験談
懲役刑を言い渡され刑務所へ収監される。それは映画のような暴力的な世界でもなければ単なる宿泊施設でもありません。
私は2010年頃に約2年間、関東圏にある刑務所に在監していました。
そこにあったのは徹底した管理と退屈そして自由を奪われることの本当の意味を突きつけられる日々でした。
今回は過度な恐怖も不必要な美化も排除し、あくまでフラットな視点で体験した「刑務所のリアル」を記録します。
刑務所とは

社会復帰のために矯正教育や作業を提供し、再犯を防ぐ場所。つまり更生のための矯正施設と言えます。しかしその本質は「24時間の監視の中、自由を奪われ規律を植えつけられる場所」と言っても過言ではありません。
そんな建前と本質の両面から刑務所を紹介していきます。
まず、中での生活は大きく3つの段階で進みます。
新入訓練:入所直後、社会の垢を落とすための期間です。大声での挨拶、行進、布団や衣服の畳み方まで指導の対象となります。ここは理不尽を感じることも多いですが、刑務官によるマインドセットの書き換え作業とも言えます。
工場配属:訓練を終えると、刑期や適正に応じた工場へと配属されます。居室から工場へ移動する際も規律ある行進が義務付けられ、腕の振りや腿の上げ下げなどを監視している刑務官に注意を受けることもあります。工場に到着後は俊敏な着替えが要求され、自由な会話は一切出来ません。
出所準備:社会復帰に向けた教育や、身元引受人の調査などが行われます。私がいた刑務所では出所準備の受刑者が15名ほど集められた棟で出所後のカリキュラムを受講しました。
刑務所の暮らし
刑務所生活を一言で表すなら「単調」です。毎日同じ時間に起床し似たような食事を摂り、同じ作業をする。その生活の繰り返しに小さな喜びと大きなストレスが混在しています。
1.食事
「臭い飯」という言葉がありますが、実際は栄養バランスの取れた「質の素朴な給食」といった印象です。麦飯は腹持ちが良いですが、おかずの量は厳格に決まっており、若者や体の大きな人間は物足りなさがあるでしょう。また冬場などは配膳の都合で冷え切っていることも多く、ただ「カロリーを摂取する作業」になりがちです。だからこそたまに出る甘味や祝日の特別メニューが異常なほど輝いて見えます。
2.人間関係
雑居房での生活は、刑務所内で最もストレスが溜まる部分です。暴力沙汰こそ厳しく罰せられるため少ないですが、「起こした犯罪による序列」や「受刑者同士の独自ルール」は存在します。気の合わない人間とも膝を付き合わせて生活しなければならない閉塞感。賢い人間は余計なトラブルを避けるため感情を殺して「空気」のように振る舞う術を身に付けます。
因みに、刑務所で最も低い序列に属するのは性犯罪の受刑者です。蔑称でピンクと呼ばれることが多く、簡単にいうと誰からもナメられる存在です。
3.差し入れ・面会
外部との接触は、心の安定剤であると同時に「自分はここに閉じ込められている」という現実を突きつけられる瞬間でもあります。面会のアクリル板越しに見る家族の姿に安堵しつつ、帰り際彼らが自由な世界へ戻っていく背中を見送るときの虚無感は言葉にし難いものがあります。
刑務作業

平日の日中は、工場で刑務作業に従事します。これは労働であると同時に懲罰的な意味合いも含んでいます。
作業の内容:紙袋の加工、洗濯、木工など様々ですが基本的には「単純作業の反復」です。考えることを止め、手を動かし続ける忍耐力が求められます。
私が印象に残っているのは神社の破魔矢を作る作業でした。罪を犯した人間たちが無言で「家内安全」や「厄除け」の縁起物を組み立てていく。その光景にはなんとも言えないシュールさとある種の皮肉が漂っていました。
作業報奨金(給料のようなもの)は微々たるもので、月数千円程度。労働の対価というよりかは「お小遣い」程度の間隔です。
出所について
刑期が終わりに近づくと、話題は「外に出た後」のことに集中します。しかしそこには現実的なハードルがあります。
仮釈放
刑期の満了前に出所できる「仮釈放」は受刑者の最大の目標です。しかしこれは権利ではなく「恩恵」です。工場担当の刑務官の評価や、日頃の行いが全て。少しの反抗的な態度で出所が数か月遅れることもあります。そのため皆必死で「模範囚」を演じます。
しかし、帰る先がない人間や、仮出所を希望していない人間も少なからず存在します。そのような受刑者は周囲から「満期上等」とも呼ばれ、いつ破裂するか分からない「腫物」として距離を置かれることが多いのも事実です。
身元引受人と仕事
仮釈放には、引受人の存在が不可欠です。先述した「満期上等」の彼らは家族に見放されているため、本人の希望通り満期まで務めることになります。また出所後の仕事についても、建設業や介護など人手不足の業界への斡旋はありますが選択肢は多くありません。「前科」というハンデを背負っての再出発は決して甘いものではないというのが現実です。
最後に
刑務所とは、社会から隔離され「自分の無力さ」と向き合わされる場所でした。暴力や飢えに怯えるような地獄ではありませんが、自分の人生の時間をただ浪費しているという焦燥感は、ボディブローのように精神を蝕みます。
自分が居た社会の情報が分かるのは手紙か面会だけ、それを聞いても何もできない、電話も出来ない。ただ白い壁を見つめながら自作のカレンダーを一日ひとマス埋めていく。一般的な価値観を持っている人間であれば、その経験は再犯の抑制に大きく役立っていると私は考えます。
もし、ご家族が中にいらっしゃる方がいれば。 彼らは「安楽」とは言えませんが、ルールに守られた最低限の生活の中で、なんとか日々をやり過ごしています。 ただ、出所後の社会復帰には、刑務所の中以上に厳しい現実が待っています。その時、支えになれるのは、やはり周囲の理解とサポートなのだと思います。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
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