白痴美の人 ダニエル・ダリュー
1936年のフランス映画『うたかたの恋』をAmazonプライムで鑑賞。
オーストリア皇太子の心中事件の映画である。
この映画は、皇太子の心中事件を扱った作品だったので、1936年は検閲で上映禁止、1946年に日本で公開されたそうだ。
まぁ、メロドラマ、であり、宝塚でも演目の一つになっている。
こう、心中映画、と、いうものは、近松門左衛門の頃から、男女の、或いは同性同士でも構わないが、究極の愛の成就、として人気があるものだ。
文豪だって、心中事件を起こしている。太宰治と山崎富栄、有島武郎と波多野秋子、それから東郷青児も未遂があった。
ロミオとジュリエットだって、まぁ、結果心中みたいなものだし、車谷長吉は、『赤目四十八瀧心中未遂』を書いてるし、心中もの、心中、というのは、ある種、究極のセカイ系だとも言える。死が二人を分かつまで、というか、死ぬことで来世にて結ばれる、階級差の恋、身分違いの恋、禁断の恋……。
波多野秋子は編集者で、この人は谷崎潤一郎も凄い魅力を感じていたのだ。
おそらく、古今東西の心中事件を丁寧に解説した大全など出れば、10000部くらいは売れそうだ。もうあるのかな?
で、まぁ、今作、ハプスブルク家のルドルフ皇太子が、16歳の少女マリーと出会い、心中するまでの話、なのだが、昔の映画なので、スローテンポ、なのであるが、私が一番驚いたのは、ルドルフとマリーが公園みたいな所で輪投げをするのだが(まぁ、今の移動遊園地みたいな感じ、そういえば、『ゆきてかへらぬ』でも、移動遊園地みたいなのあったなぁ)、その輪投げの的が、本物の白鳥だったのである……。本物の白鳥の首に向けて輪を投げる!明らかに白鳥は嫌がっている。これはもう、動物虐待、以外の何物でもないが、まぁ、昔の映画、たまに撮影で動物を殺している、その様を撮る、時代が違うからね……。
さて、マリー役はダニエル・ダリュー、美しい美しいダニエル・ダリュー、であるが、白痴美の人である。
白痴美、とは、表情に乏しい美しい顔立ち、みたいな感じで、お人形さん的な美しさである。知性がない、ことが、白痴、なのかどうかわからないが、完全に放送禁止用語である……。
然し、白痴美の人ダニエル・ダリュー、この言葉通り、陶器めいて、人形めいて、美しい。

ダニエル・ダリューは2017年の10月に亡くなった。ので、『ブレードランナー2049』はギリギリ公開月、であるので、不思議な感覚だ。
100歳で亡くなったのだが大往生である。
美輪明宏様、丸山明宏様の激似、だと思うが、やはり、フランスの女優、戦前の女優、というのは、ある種、今よりも遥かに天上人だ。
今では、白痴美、なんていうと、危険な表現だが、然し、女優さんでも、或いは男優さんでも、こういう人はいる。
今作でダニエル・ダリューは、まぁ、おぼこい娘を演じているが、その可憐さ、美しさ、は、やはり筆舌に尽くし難いが、何よりも、実際の映画よりも、こう、写真、モノクロの写真、などで観るほうが、停まったその姿の方が、よほど美しいのも不思議だ。切り取られたその面の稜線こそが美しいのだ。
実際の映画よりも美しいのは、それが時を隔てことにより生じる霞めいた幻想、その奥に包まれるからかもしれないが。
