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ベルセルクについて


ベルセルクの思い出は一言では語りきれない。

私が最初に読んだのは1999年か2000年頃で、中学生の頃だった。
クラスメイトの女子に借りたのだが、一読、凄まじい面白さに驚愕した。
本誌では、『生誕祭の章』を連載していた頃で、ちょうど、ドリームキャストのベルセルクのソフトもその辺りで発売されていた。
このゲームはオリジナルストーリーで、キャスカが正気を取り戻すというストーリーラインで、単独の黒い剣士作品としてはなかなかおもしろい。

その頃単行本は年に2冊のペースで刊行していて、それが2000年代後半から年1冊に、それがいつしか数年に1冊と、いつ終わるともしれない長い休載と僅かの掲載のサイクルに変わっていった。

以下、ネタバレを書きます。

ベルセルクはダークファンタジーで、主人公のガッツは親友でもあり、宿命の相手とも言えるグリフィスに、彼の転生の為に自身と仲間たちを生贄に捧げられるが、辛くも生き残り、復讐の旅に出るわけだが、私はやはり22巻まで、剣の丘の闘いまでが圧倒的に好きである。
ここまでは本当に凄まじい読書体験で、黒い剣士であるガッツの死闘には毎回息を呑んだ。
特に、私は思春期の頃にこの作品を読んで、そして今までたくさんの作品を読んできたけれど、これほど情念に塗れた漫画はなかなかお目にかかれなかった。

ベルセルクは様々な作品に影響を与えていて、『FFⅦ』の主人公のクラウドのバスターソードもドラゴン殺しのようだし、『FFタクティクス』のラムザとディリータの関係、転生する化け物ルカヴィは使徒そのものである。
また、『鬼滅の刃』の鬼も使徒のフォーマットに則っているように思える。

ベルセルク自体も、明らかに『デビルマン』に影響を受けていて、物語や絵柄もそうだが、ガッツとグリフィスの関係性までも、深く影響があって、ガッツはまさにデビルマンの生き写しのようなビジュアルである。悪魔よりも、悪魔的な男である。

これら使徒との闘いの描写は全て画力も相まって素晴らしい。特に、モドキではあるがモズグス様と天使軍団対ガッツ、剣の丘でのガッツとゾッドの剣戟、ガッツとロシーヌとの死闘など、ガッツという不具を抱えてしまったキャラクターが様々なギミックと剣術、そして執念で人外の者を追い詰めていく様は、圧倒的なカタルシスを与えてくれた。

『ロスト・チルドレン』の章はその中にあって、ベルセルクという作品を完全に象徴する最高傑作の章だと思っている。
14巻〜16巻までが当該の話になるが、この話は黒い剣士であるガッツの過去が語られた上で改めて始まる、地獄の単独行の仕切り直しであり、まだ情念に満ちた地獄の中世を旅するほぼ最後の話である(23巻以降、完全なファンタジーへと移行してしまったため)。
ガッツの宿命、妖精パック、使徒であるロシーヌの地獄、そして激闘までを、思春期の少女の大人への成長を軸に描いた、大人の童話に仕上がっている。

『黄金時代』も素晴らしい。3巻〜14巻までが当該の話で、ここは物語が完璧に作り込まれている。伏線のはり方も丁寧で、一つ一つ意味をもっているし、本当に物語を考えた上で描かれているのがわかる。
それが12巻の『蝕』が始まる辺りから、一気にドライヴが加速して、物語に引きずり込まれるような圧倒的な没入感を与える体験を読者に与えてくれる。
全てが終わり、生き残りはしたが、仲間を喪ったことを知って、野や森を駆け回るガッツのシーンは台詞もないが、在りし日の仲間たちとの情景をカットバックさせて、凄まじい喪失感を与える。
また、キャスカを初めて抱いた後、眠るガッツが幼い頃、怪我をした鼻に薬を塗る思い出を夢見るシーンは、郷愁を感じさせて、幸福な思いがあふれる。

今作はダークファンタジーだけあって、人は死ぬし、その死に様と言えば腸が飛び出たり、顎下が無くなったり、悲惨極まりない。
また、死体には蛆が湧き、登場人物は容赦なく蹂躙される。レイプされ虐殺されたり(それもモンスターにである)、おぞましい拷問を受けたり、希望は何もない。そして、敵は圧倒的な力を持っていて、まぁ、神に等しいわけだが、それでも人間一人で足掻こうとする。

その足掻きこそが素晴らしく、ここ30巻以降、少しばかり毒気が抜けてしまったのは否めなかったが、然し、最新巻ではようやく、ヒロインのキャスカの意識が元に戻り、仮初(かりそめ)とはいえ、現実世界での魂の別れから二十年以上の時を経て、ようやく再会に近い形まで進めたのだから、そこまででも描かれただけで、本当に嬉しい。

最新話では髑髏の王様の頃の『蝕』や過去のゴッド・ハンドが顕れて、ついに核心へと迫りそうだっただけに残念でならない。

このように残酷で、暴力的で、美しく、そして面白い漫画を読めて、本当に幸せだと思う。

三浦建太郎先生、本当にありがとうございました。

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