正解のない人の生き死にを見つめる終末期病棟/NHKドラマ『お別れホスピタル2』
春ドラマが続々始まる中で、岸井ゆきのさん主演、魚組長(わかる奴だけわかればいい)が出演する『お別れホスピタル』の続編の感想を記しておきたい。
前シリーズが全4話だったのに対し、今回のシリーズは前編・後編の2話。しかしとても内容の濃い物語だった。
(以下、ドラマの内容を含みます)
前編が、主に元県議・安斎の唯一の後悔を中心に時折コミカルに展開していったのは、後編の重さを考慮したからなのかもしれない。それほど後編は、「死にたくない人」「死にたい人」「死なせたくない人」「死なせたい人(ちょっと語弊があるかもしれないが)」の葛藤が色濃く映し出されていた。
前編後編を通してずっと「死なせてくれ」「死にたい」と訴えていたのは、毒舌のベストセラー作家・桜田。「私の体よ。生きるか死ぬかぐらい自分で決めさせて」ということばが、ずしりと重い。その性格ゆえということもあるが、桜田は自分のやってしまったことへの懺悔ができないまま病床で日に日に弱っていく。それなのに、心の叫びはどんどん大きくなっているのを感じ取れて、YOUさんの演技に圧倒され続けた。
桜田は結局、夢の中で「ごめん」と「ありがとう」を相手に伝えて穏やかに最期を迎える。謝りたくても感謝を伝えたくても、できないまま死んでいく人がいる。自分が死を迎えるときはどうだろう。ちゃんと「ごめん」と「ありがとう」を言える状況で死ねるのだろうか。
桜田とは対照的だったのが、角川だ。夫は泣き虫の幼なじみで、妻主導で夫婦仲睦まじく暮らしてきたのが伺える。角川は末期の間質性肺炎で酸素マスクが欠かせない状態だが、夫が見舞いに来る時だけマスクを外してしまう。苦しみに耐えながら夫と会話し、普段通りに過ごそうとする角川。だがそれも限界に達していた。
角川を演じたのは阿川佐和子さん。明るく健やかなイメージの彼女が、「こんな演技をする人だったのか?」と驚くほどの迫真の演技を見せる。そして妻が重篤であることを受け入れられない夫役には柄本明さん。ちょっと厳つい顔なのに、泣き虫弱虫のまま歳を重ねた男、子どもの頃から好きだった女の子を妻にした男を見事に体現しており、後編冒頭から号泣必至の連続。互いを思いやっているからこそ本音が言えなかったふたりが、ようやく最期に「ごめん」と「ありがとう」を伝え合う。放送から一週間が経つけれど、今にもこと切れそうな妻を前に、子どものように泣きじゃくる(正確には、泣きじゃくりその後、心配する妻のためにもう泣かないと宣言するのだが)夫の顔を思い出しては涙が滲むのだった。
延命を希望しない患者と生かし続けてほしい家族。その逆もまたある。患者がどのように生き切るのが正解なのか。彼らにどう寄り添えばいいのか。主人公の辺見や医師の広野たちの葛藤は続く。
内田慈さんが演じている同僚看護師・赤根のその後には、やるせなさを覚えた。仕事復帰がままならない身体的精神的なつらさ、息子に迷惑をかけたくないという親心、そして死への不安が常につきまとう。赤根を見ていて、以前観た映画『平場の月』を思い出した。手術ができたからといって、そこで終わりではない。むしろそこからがスタートで、さまざまな支障や戸惑いが起きる。死を迎えるまで、病と共存することになる。今まで通りに暮らせないとなったとき、自分はどうやって「生きる意味」を見出せばいいのか考えさせられた。同時に、そもそも生きる意味は必要か、ということも。
内田さんは深浦加奈子さんのような存在感があって、とても好きな俳優さんだ。きたろうさんが演じている古株の患者・大戸屋と赤根のシーンはお気に入り。大きく心をさらけ出し合ってきたわけではないけれど、さらりと気遣うふたりに人間同士のつながりを感じる。大戸屋は声が出ないため、きたろうさんには台詞がない。それでも大戸屋の胸の内が表情に滲み出ていた。なんとなくだが、器用には生きられない男ということも感じ取れる。後編では赤根が生きがいとしてきた看護師を諦めると告白するシーンがあるのだが、大戸屋なりの方法で彼女を励ます様子にはほろりとさせられる。
今回も、その人らしく生き切ることの意味と難しさを感じる内容だった。辺見が希死念慮のある妹に伝えた「死にたいと思いながら生きるのは悪いことではない」ということばは、救いのようにも感じた。それと、悩み続ける辺見と広野の心の拠りどころが、いつもの居酒屋以外にもう一つできたことはよかった(笑)。安斎のおかげ。渡辺えりさんは、こういう役柄がとてもよく似合う。
ぜひまた続編を観たい。
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