超一流シェフ×ムショメシで描くヒューマンコメディー/NHK土曜ドラマ『ムショラン三ツ星』
約1ヵ月、風雪厳しい尽果の地を観ていたせいか(メインのふたりもよかったが、坂東龍汰さんもこういう役がハマる)、先週から始まったこのドラマがやけに賑やかに感じる。とは言え、世間とは距離を置いた「閉ざされた世界」という点では同じかもしれない。
(以下、ドラマの内容を含みます)
NHK土曜ドラマ『ムショラン三ツ星』は、現役の刑務所管理栄養士・黒栁桂子さんのノンフィクションをドラマ化したものだ。主人公は、小池栄子さんが演じる銀林葉子。数々の賞を受賞した高級イタリアン店の腕利きのシェフだが、ワケあって男子刑務所の管理栄養士に転職する。勢いのある「The ポジティブ破天荒」な役は、小池さんの当たり役である。
ドラマでは知られざる刑務所の食生活に目を向けつつ、受刑者たちの背景にあるものを一話ごとにクローズアップしていく。刑務所内の献立にバナナはNGなど初めて知ることも多く、とても興味深い。
食事をつくるのは、炊事工場(通称・炊場)担当の受刑者たち。体が大きい者もおり、罪を犯したイメージから最初は怖がった葉子だが、料理初心者の彼らの引き起こす珍騒動に巻き込まれるうちに、頭を悩ませながらも「食べることは生きることだ」と伝え、彼らの更生を願うようになる。一日3食を543円以内で賄わなければならない中で、いかにバランスよく美味しい食事を平等に食べてもらうか、そして塀の中で毎日を送る彼らに、故郷や季節を思い出させる食事を提供できるかを考える葉子。そんな彼女と接するうちに、受刑者たちは少しずつ変化していく。
一風変わった経歴の葉子を快く思っていないのが、はい、きた、生瀬勝久さんが演じる総務部長の入江と塚本高史さんが演じる矯正処遇部部長の斉藤。ふたりあわせて「風神・雷神」と呼ばれるほどの堅物で、事あるごとに葉子に難癖をつける。生瀬さんと小池栄子ちゃんといえば、『リーガル・ハイ』シリーズの名コンビぶりが焼き付いている。最近では『新宿野戦病院』でバトルを繰り広げていた。再び同じドラマで観られるヨロコビよ。
炊場を取り仕切る刑務官の杉山役には、中村蒼さん。昔から多くのNHKドラマに出演し、昨年も大河ドラマ『べらぼう』や『東京サラダボウル』に出演。これまで真面目な好青年、やさしい眼差しの中に影のある役などさまざまな役を演じてきた。杉山は最初こそ破天荒な銀林に呆れるが、彼女がいわば異世界で多くの制限がある中でも、変わらず「美味しいもので笑顔にしたい」という気持ちで料理と受刑者たちに向き合う姿を見て、少しずつ感化されていく。杉山だって、受刑者が更生することを願っているのだ。
炊場で働く受刑者たちが、これまたかなりの個性派揃い。第1話の主人公となったのは、玉置玲央さんが演じている川口。今まで何もかもが「無」だった彼が、葉子のスープを飲んだ第1話、そして第2話と料理や食べることに興味を持ち始め、徐々に自身の罪に向き合うようになる。第2話は、関口メンディーさんが演じている母児家庭で育った尾藤が主役。母に複雑な感情を持つ役柄で、幼少期にいつもひとりで食べていた苦々しい思い出のカレーが、葉子の考えた献立「七夕カレー」によってよみがえる。
炊場を担当する受刑者は、他に温水洋一さんやひょうろくさん、山内圭哉さん、板橋駿谷さん、阿佐辰美さん、DOTAMAさんがそれぞれのキャラクターを演じ、なんだか現場は独特の雰囲気(笑)。葉子を試して事件を起こした初回はどうなることやらと思ったが、料理に真剣に取り組む受刑者たちのことがすでに愛おしく感じられる。今後も、何かしら彼らの演じる人物の背景が描かれると思われる。「食べる」ことがただの行為と習慣だった彼ら。食事をつくって美味しく食べることで、自分の罪や過去を顧みる。受刑者たちに更生の道は開かれるのか? 仕事にやりがいを感じ始めた葉子には、この先どんな難題が立ちはだかるのか?
と書いたところで、このドラマは全5話しかないことを思い出した。8話ぐらい観たいんだけど。
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