ボクシングジムは「体験」より先に「見学」へ行こう:25年通った趣味ボクサーの結論
はじめに
「ボクシングを始めたい。まずは体験レッスンかな?」
もしあなたがそう思っているなら、ちょっと待ってください。「体験」の予約をする前に、この記事を読んでほしい。
趣味でボクシングを長く、楽しく続けたい。そんなあなたに3つのジムを渡り歩き、ジム通い25年のキャリアを持つ「趣味ボクサー」のおじさんから、後悔しないためのチェックポイントを伝授します。
この記事の対象者は「趣味でボクシングを始めたい人」全般です。
第1章:なぜ「体験」はアテにならないのか?
ボクシングジムには「体験」の日だけ親切丁寧で、入会後に放置する「撒き餌」のような手口を使うジムが実在するからです。
そういったジムではトレーナーは普段とは違う接客モードになります。
普段はしないミット打ちなどの特別な練習をやらせてくれるんです。
しかし、入会後は完全放置、へたしたら人間サンドバッグとして扱われるかもしれません。
プロ志望者以外は無視されるジム
安全管理の意識なし。初心者をボコボコにさせるジム
私は実際に、それで合計5年以上の時間と月謝をドブに捨てました。
「体験」ではジムの本性が分からないのです。
第2章:ジム選びのコツは「見学」にあり
先に結論を言いましょう。
「ハズレ」を引かないためには、「体験」ではなく「見学」こそが「アタリ」を引くための秘訣になります。
「見学」でトレーナーと会員たちの様子を見てジムの本来の姿を見極めるのです。
「体験」では担当したトレーナーがあなたにずっと付いていますし、初心者のあなたはトレーナーからの説明や指導に集中せざるを得ず、ジム内を観察する余裕はないでしょう。
次の章からは私の3つのジムでの経験談をお話しします。
結論をすぐに知りたい人は目次から第5章の”「見学」で注目すべきポイント”までジャンプしてください。
第3章:2度にわたるジム選びの失敗
ボクシングを始めようとする時、誰だって「まずは『体験』から」と考えますよね。私もそうでした。
以下のような私の失敗談を話していこうと思います。
Aジムでの完全放置
Bジムでの人間サンドバッグ
放置のAジム
私が最初に門を叩いたのがAジムでした。
その体験時、トレーナーがいきなりミットを持ってくれました。
素手で打ち込んだ時の「パーン!」という乾いた音、拳に伝わる確かな手応え。
「明日から俺のボクシング生活が始まるんだ!」
ボクシング未経験者の私は高揚感と共に即日入会しました。しかし、その高揚感は初日で終わったのです。
入会直後、トレーナーは基本のジャブとストレートを教えたきり、二度と私に指導することはありませんでした。
Aジムのトレーナーは一人だけで、会長の息子です。
そのジムは、プロ志望以外は「月謝を払って勝手に練習している人」としか扱わない場所でした。
月一万円の月謝はジムの使用料に過ぎなかったのです。
でも、「プロを目指さない練習生の扱いって、そんなものなのかな…」と諦めの境地で通い続けました。(今なら分かります。それは努力ではなく、単なる「搾取」に耐えていただけの愚かな選択だったと)
なお、Aジムでは 4か月に1度くらいのペースでジム内のスパーリング大会があるのですが、自主的に4年で8回ほど出場しました。何の技術も身についていないのに、我ながら無謀ですね…。
碌な技術も伴わない会員同士なので、素人の殴り合い同然。先に強いパンチを当てた方が勝ち、みたいな滅茶苦茶な状態でした。
結局、4年間通ってミットを持って貰えた回数は「0回」でした。
ボコボコのBジム
就職で上京した私は仕事に慣れてきたころにBジムに通い始めました。
最初のAジムで不完全燃焼の4年を過ごしたのに、まだボクシングに未練があったのです。
Bジムでも、やはり「体験」では手厚くミットを持ってくれました。まさに「撒き餌」の再来です。
入会後は一般の会員である私は基本的に放置されていました。トレーナーはプロやプロ志望者とおぼしき人たちに付きっ切りです。
「まあ、そうだよね」とここでも早々に諦めの境地になりました。
Bジムもトレーナーは一人だけで、やはり会長の息子です。
ただ、Aジムと違って、トレーナーがすごーく暇そうなときはミットを持ってくれました。それには感動しましたね。1年通って3~4回は持って貰ったと思います。
年に3~4回って、今振り返ると酷いもんですが、Aジムの 4年間で0回と比べたら天地の差です。
Aジムではトレーナーは常に暇そうにしているのに、ミット持ってくれませんでしたからね…。
ただ、BジムにはAジムに無い悲劇がありました。
「ちょっとリング上がって。当てない練習(マスボクシング)だから」
そう言われて上がると、相手の練習生はニヤニヤしながら容赦なくパンチを当ててくる。
トレーナーは「おい、当てるなよ」と口では注意するものの、止める気配はありません。
極めつけは、大学ボクシング部出身の社会人相手にスパーリングをさせられ、ボコボコにされたことです。
終わった後のトレーナーが放った言葉が「なんでパリング(※)できないの?」でした。
※相手のパンチを手で払って軌道を変える防御技術
「Aジムでは習ったことないんで、出来ません…」と回答すると、ハァとため息をついて呆れていました。
だからといって、その後、Bジムのトレーナーが私にパリングを教えてくれることはありませんでした。
じゃあ、どこで習えと?!
結局、仕事が忙しくなったのを機にBジムをフェードアウトしました。
第4章:3度目の正直
運命のCジム
数年後、会社の同僚から近くに新しいボクシングジムが出来たらしいと聞いた私はまたボクシング熱がムクムクと立ち上がりました。懲りないですね…
Cジムでも体験に飛び込んだのですが、そのとき担当した若いトレーナーは淡泊な対応でした。
2つのジムを経験しているとはいえ、シャドーを見れば私が碌な指導を受けていないのが分かったようです。
うーん、という顔をされた後、淡々とフォームやスタンスの指導を受けました。
ミットも持って貰いましたが、また最初だけかなーと思ってました。
「まあ、こんなもんだよね。このところ運動不足だったし、サンドバッグが叩ければいいかな」ぐらいに思って入会しました。
ところが、通い始めてすぐに奇異な光景を目にしました。
女性会員にトレーナーがミットを持ってあげてるのです。
体験のときの若いトレーナーとは違う、眼光鋭い40代ぐらいのトレーナーでした。
「ああ、女性だから特別扱いされてるのね。」そう思ったのですが、次はおじさん会員にもミットを持っている。
明らかにプロ志望でもない会員たちにトレーナーがミットを持っているんです。
そしてついに私にもそのトレーナーから声がかかったのです。
「よし、ミットやろうか」
まずはジャブから、次に右ストレート、ジャブ+ジャブのダブル、ジャブ+右ストレートのワンツー、そこに左フックを足したワンツー・フック、、、
3ラウンドもミットを持って貰い、もう腕が上がらないという状態に。
ヘトヘトだけど、楽しい!
「ナイスや! よく頑張った」
終わり際に元気に声をかけてくれるトレーナー。
それが私のボクシングの師となる「塾長」との出会いでした。
Cジムではミット打ちだけでなく、安全に実戦形式で練習ができるマススパー(※)も盛んで、一般会員も多くの人が毎回ボクシングらしい練習を楽しんでいます。
※パンチを互いに軽く当て合う実践練習。頭部を守るヘッドギアとクッションが大きめのグローブを装着して行う。
どんな練習メニューを組むかもまったく自由です。
複数人が合同で練習するレッスン形式に参加するもよし、個人で黙々と基本練習をこなし、ミット打ちだけトレーナーにお願いするもよし。
鏡の前でシャドーをしていれば、適宜フォームの指導もしてくれます。
ジムに来て、その日はまだミットもマススパーもしていない会員がいたら、トレーナーの方から声掛けして誘ってくれます。気分が乗らなければ断ってもOK
好きな時間に来て、好きな練習をかいつまんで実施しつつ、好きな時間に帰る。
そんな状態が心地よくて、入会から約20年経った今もCジムに通い続けています。
ただ、Cジムも完璧ではありません。長く在籍していれば、悪いところをいくつも挙げられるのですが、それでも利用者(会員)側に選択の幅が大きく、AジムやBジムよりはるかに利点があります。
第5章:ハズレを引かないための「見学」
私がCジムに出会えたのはただの運でした。
普通に「体験」に飛び込んでは、「撒き餌」に騙される可能性があります。
先に説明したAジム、Bジムのように入会希望者には「体験」で良い顔をするジムがあるからです。
「見学」で注目すべきポイント
自分と属性が近い会員(おじさん、女性など)にもトレーナーはミットを持ってくれているか?
鏡の前でぎこちないシャドーボクシングをしている会員がずっと放置されていないか?
実力差のある会員同士が無茶な実戦練習(スパーリング)をしていないか?
ジムに所属するトレーナーは複数いるか?
普段の練習でトレーナーがどのように一般の会員に指導をしているかを観察するのです。
特に3つ目には注視しましょう。安全管理がきちんとしているジムであれば、明らかな初心者に厳しめの実戦練習(スパーリング)させることはありません。
「見学」はいつ行くかが大事
あと「見学」には大事なコツがあります。
それはあなたがジムに通おうと思っている曜日、時間帯に必ず行くこと。
ジムは曜日、時間帯によって雰囲気が全然違います。
平日夕方から夜は若者が多く活気がある一方で、午前中や日中はご年配の方々の集まるサロンのようになってしまうことも。
いずれ対人練習をすることを考えるなら、一緒に練習することになるであろう人たちの属性も考慮に入れてみましょう。
また、ジムによっては定刻で行うグループレッスンの枠を設けていることもあるので、興味があればチェックしておきましょう。
そして何より注意するべきは、曜日と時間帯でトレーナーも変わってしまう可能性があることです。
これは4つ目のチェックポイントに関係する話です。
ジムに複数のトレーナーが所属する場合、常勤のトレーナー以外は副業やアルバイトで勤めている方がほとんどです。
そのため、曜日や時間帯によって違う人がシフトに入っています。
トレーナーとの相性もジム通いを続けるには大きな要素です。
私もしばらく、先に紹介したトレーナーの「塾長」がシフトに入っている曜日と時間帯を選んでジムに通っていました。
「見学」に行ったときのトレーナーがイマイチだったときは、別の曜日や時間帯に再度「見学」するのもアリだと思います。
トレーナーが複数いるということは、それだけアタリの人物がいる可能性が高まります。
トレーナーが一人しかおらず、その人がイマイチなら、そのジムはもう用無しです。次を探しましょう。
ジムには大抵、スケジュールが書かれたホワイトボードが壁に掛けられていて、トレーナーたちの名札が曜日・時間帯ごとに貼られていたりするので、どのようなシフト構成になっているかを見学時に確認しておきましょう。
ここまで読んで、ある疑問が湧いた人もいるかもしれません。
「見学の人が来ているときだけ、トレーナーは会員たちに熱心に指導して取り繕うんじゃないの?」と。
いいえ、それはたぶん上手くいかないでしょう。
普段やっていないことをトレーナーがすれば、会員たちの動揺に現れます。
ミット打ちなんて、普段からやっていないと、打つ方と受けるほうの息が合わずガタガタになります。そのぎこちない様子は素人の目で見ても分かるはずです。
第6章:この令和にヤバいジムは存在するのか?
私の2つのジムの失敗談を読んで、下記のような疑問が出てきた人もいるかもしれません。
「いやいや、ぶんちんさんよぉ。Aジム、Bジムの話って20年以上前のことだろう? 今は令和だぜ。
そんなジムは生き残れず淘汰されてるんじゃないの?」
いえいえ、先に挙げたAジムとBジムのどちらも今も現存しているのです。
私のような人たちがせっせと毎月会費を払って、プロの興行があればチケットを1人で何枚も買ってあげるという上納を続けているから、今も生き残っているんです。
Aジムのようなジムは他にも存在します。
Cジムのトレーナーの一人に元プロがいるのですが、彼は現役時代を別のジムに所属していました。数年前のことです。
彼曰く、そのジムでは会長の縁者、もしくは金を持っている会員だけがミットを持って貰っていたそうです。
金持ちはジムのグッズや興行のチケットをたくさん買ってくれますからね。まあ、この資本主義の世界ではお金を多く払う人に対してのプレミアムサービスと考えれば、仕組みとしてアリなのかもしれませんが…
そしてBジムのようなジムも他に存在します。
いや、ジムによってはBジムよりずっとタチが悪いです。
今から3年前、京都市内の某ジムで初心者だった会員がスパーリング後の急性硬膜下血腫で命を落としています。
普通なら実戦形式の練習の中で一番厳しいスパーリングを初心者にさせるなんてあり得ないことです。
そんな安全管理のカケラも無いようなジムがあるんだと知って、唖然としました。
令和になっても、こういったボクシングジムは存続し続けているんです。
第7章:良いジムに出会えれば、人生が変わる
悪いジムを避けましょう。そして、良いジムに出会って人生を変えるのです。
大げさではありません。
良いジムに通い、身体と心を健全に鍛え、ボクシング技術を磨き自らを成長させることは、あなたの生活、ひいては人生に良い影響を与えるはずです。
あなたが現在、会社と家の往復だけの生活をしているのなら、ボクシングジムはあなたの「第3の居場所」になる可能性を秘めています。
私自身、仕事や家庭で行きづまったとき、この「第3の居場所」の存在に何度も助けられました。
今ではCジムの練習仲間と共に他のジムのスパーリング大会に参戦したり、「おやじファイト」に出場したり、誰かのセコンドに付いたり、プロ選手の子の試合を応援に行ったりとボクシングライフを満喫しています。
アラフィフおじさんの人生に彩りを与えてくれているのがボクシングなのです。
第8章:本当に探すべきは良い指導者
ここまでジム選びについて話してきましたが、本当に出会うべきは良いジムではなく、良い指導者の方だと言うべきかもしれません。
私自身、「塾長」に出会わなけば、今日までボクシングを続けられなかったと思っています。
「塾長」の教えについては、きっと皆さんにも得るものがあると思うので、今後の記事に書いていこうと思います。
おわりに
「見学」で見かけた練習生は少し”未来のあなた”です。
そこに理想の姿はありましたか?
皆さんもぜひ「趣味ボクシング」の世界に足を踏み出してみてください。
長くなってしまいましたが、最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
今後も「趣味ボクシング」に関する記事をあげていきます。
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