【映画】「君のクイズ」感想・レビュー・解説

なるほど、これは面白かったなぁ。原作が小川哲だから内容的には信頼してたけど(ただ、小川哲の小説は1冊も読んだことがない)、にしても「0文字解答」にどれほど整合性のある説明が出来るのかという点は、やはりさすがだった。普通にはまず成立しない状況ではあるが、「それが成立する状況」を絶妙に組み立て、エンタメとして昇華する感じは見事だなぁ。

というわけで、まずはざっくり内容の紹介をしておこう。

生放送のクイズ番組「Q-1グランプリ」の初回放送。賞金1000万円を賭けた闘いは、決勝のステージへと進んでいた。控室で敗者たちが見守る中、画面に映し出されているのは2人の天才。

1人は、会社員として働きながら、アマチュアのクイズ大会で優勝・準優勝をかっさらっていく「クイズ界の絶対王者」である三島玲央。そして対するは、世間からアイドル的人気を誇り、「世界を頭の中に保存した男」と評される本庄絆。2人の闘いは同点のまま、次の問題にどちらかが答えれば優勝が決まるという局面までやってきた。

そしてそこで、信じられないことが起こる。なんと、本庄絆が、問題文を1文字も聞かずにボタンを押したのだ。調整室では「機材トラブルか?」とザワザワする中、本庄絆はおもむろに答えを口にする。

それは正解だった。

観客席が困惑の雰囲気に包まれる中、本庄絆は表彰され、そして、失踪した。

本庄絆の人気もあり、放送後の反響は凄まじいものがあった。ネットの書き込み、テレビ局への電話、週刊誌の取材。本庄絆のファンは彼を擁護し、「三島玲央とグルだったのでは?」という憶測も生まれ、あるいはシンプルに「ヤラセだったんじゃないか?」という疑惑も出てきた。図らずも時の人となってしまった三島玲央だったが、グルだったという疑惑が持ち上がったからだろう、出場が決まっていたクイズ大会から断りの連絡が多数届き、まったく関与していない三島玲央もまた困惑していた。

そんな中、番組の総合演出である坂田から「検証番組を放送するので協力してほしい」と連絡がくる。決勝戦のVTRをクイズプレイヤーらと観ながら、違和感を探し出して真相を究明しようというわけだ。

果たして、0文字解答はマジックだったのか? ロジックだったのか? トリックだったのか?

「マジック」「ロジック」「トリック」というは作中に出てきた表現で、上手いなぁ、という感じだった。で、三島玲央が最終的に「あれは〇〇でした」っていう場面で先の3つの中から1つを選ぶというのも良い流れだったなぁ。「本庄は僕には出来ないことをした。それを〇〇って言っただけだよ」ってセリフはとても良かった。

で、0文字解答である。恐らく原作者の小川哲も、ここを起点に物語を考え始めたんだと思うけど(ここから設計しないと全体を構築できない)、さっきも書いた通り、「よくもまあこんな状況が成立するような設定を考えたものだな」と思う。ミステリでは、例えば「館もの」のような「ちょっと変わった館で事件が起こる」みたいなパターンがあるが、それは「奇天烈なトリックを成立させるような要素を館そのものに仕込んでいる」みたいな場合が多い。で、本作も、「0文字解答」を成立させるためにどういう舞台が必要だろうか? という発想からすべてが構築されていて、「なるほどなぁ」という感じだった。

しかも、「0文字解答が成立する状況」を設定するだけではダメで、「その真相がちゃんと明らかになるような舞台」も用意する必要があるわけだ。そして、この点もぬかりない。「検証番組」というのは自然な流れだし(上手いのは、この検証番組の始めの方で、クイズに詳しくない人にもある程度の前提知識が理解できるような作りになっていること)、そしてその番組内で三島玲央が真相にたどり着く過程もとてもリアリティがある。

さらに言えば、「0文字解答の真相」を追うことは、ある意味で三島玲央の、そして本庄絆の人生を深堀りすることにも繋がっていくのだ。正直、本作を未見(未読)のまま僕の文章を読んでいる人がいたらたぶん何を言っているのかさっぱり理解できないと思うが、観れば分かる。三島玲央がクイズの良さについて、「その手が世界と繋がっている。君は正しいと認めてもらえる」みたいなことを脳内で考える場面があるのだけど、三島玲央も本庄絆も、「クイズ」と「人生」が分かちがたく結びついていて、だからこそ結果として、彼らの人生が浮き上がってくるのだ。

正直最初は、三島玲央の彼女との話(彼女役は堀田真由なんだけど、最初気づかなかったなぁ。堀田真由っぽくなかった)に何の関係があるんだ? とか思ってたけど、ありましたわ。いや、意味分かんないよなぁ。「本庄絆が0文字解答できた理由」の背景として、「三島玲央の彼女の話」が関係してくるなんてのは。でも、関係するんだよなぁ。

あと個人的には、「『正解』が存在する世界でしか生きられない」「『正解』が存在する世界では生きられない」みたいな部分がクイズプレイヤーの生き方(行動原理)とし描かれていた点も良かったなと思う。「あまりにも『クイズ』的に生きてしまった」みたいなことが、各人の行動の背景にあって、「0文字解答をきっかけに、それとどう向き合うのか?」みたいなことも底流で描いている感じがした。クイズは世界との接点を作ってくれもしたけど、同時に、世界との断絶を生み出しもした。そんな「クイズ」との正しい(適切な)関わり方は何なんだ? みたいな、まあ一般人にはまったく関係ないっちゃ関係ないが、クイズプレイヤーとしては切実だろう問題が、特に最後の方で描かれていて、そういう部分も結構良かったなと思う。

というわけで、作品全体の感想はこんな感じかな。あとは些末なことを。

まず、予告編で何度も聴いた「♪ビューティフル~」って曲。これ何なんだろうってずっと思ってたけど、まさかそういう設定だとは思わなかった。で、エンドロールでも同じ曲が流れてきてて、「良いふざけっぷりだなぁ」なんて思っていた。

で、だ、な。

今、この文章を書く直前まで、この「♪ビューティフル~」って曲は架空の歌(本編を観ていない人には「架空の」の意味が伝わらないだろうけど)だと思ってたのだけど、念のため調べてみたら、なんとまさか実在する曲だそうで、「マジかよ!」ってなった。ってか、この店名も実在のものなんだなぁ。「なんでこんな変な名前をわざわざ解答にしたんだろう?」とか思ってたのだけど、実在するなら仕方ない。ってか、実在するんか!(二度目) いやはや、かなり衝撃でしたわ。

あと、エンドロールのラストの演出が個人的には結構好きだったなぁ。エンドロールでは、「Q-1グランプリ」で出題された問題が、三島玲央・本庄絆が答えたポイントと共に表示されるのだが、最後の最後、「Q-1グランプリ」では出題されなかった問題が表示されるのだ。保険というのか執念というのか、そういうものを感じさせられて、凄く良かったなと思う。

というわけで、メチャクチャよく出来てるなと思った。物語の舞台としては「Q-1グランプリの本選」と「検証番組」しかなくて、なのでほぼほぼ「テレビ局のスタジオ」で展開されるわけで、映像的に単調になりがちな気もするけど、その辺りは色々工夫して飽きないようになっている。こういう物語の場合、「0文字解答の真相」にばかり力点が置かれがち(観る側もそこばかり意識しがち)だと思うが、本作では途中経過もちゃんと面白くて、そういう部分もよく出来てたなという印象だった。

とても面白い作品だったなと思う。


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