「ソル・ルウィット オープン・ストラクチャー」(東京都現代美術館)に行ってきました。これは実に興味深い
東京都現代美術館で開催中の「ソル・ルウィット オープン・ストラクチャー」に足を運んでみました。僕にとっては、2026年初のアート展です。
相変わらず「ソル・ルウィットって誰だよ」ぐらいの何も知らない状態で観に行きましたが、思いのほか面白い展示でした。普段はアート展を観に行っても記事を書いたりしないのですが、今回は割と思考が刺激されたので、あれこれ書いてみたいと思います。
というわけでまずは、東京都現代美術館のHPに書かれている「企画意図」みたいな文章を引用しておきましょう。
ソル・ルウィットは1960年代後半、目に見える作品そのものよりも、作品を支えるアイデアやそれが生み出されるプロセスを重視する試みによって、芸術のあり方を大きく転換しました。ルウィットの指示をもとに、ほかの人の手で壁に描かれるウォール・ドローイング、構造の連続的な変化を明らかにする立体作品など、その仕事は「芸術とは何でありうるか」という問いを投げかけています。本展では、ウォール・ドローイング、立体・平面作品、アーティスト・ブックといった代表作の数々を通して、既存の枠組みや仕組みに再考を促し、別の構造への可能性を開こうとしてきたルウィットの思考の軌跡をたどります。
うん、なんのこっちゃって感じですね。
さて今回、僕が観ていて面白いなと感じたのが、「タイトル=制作指示」であるいくつかの作品です。意味が分からないと思うので、まずは個人的に一番面白いと感じた(かつ、最も長い)作品タイトルを示しておこうと思います。
ウォール・ドローイング #283
青色の円、赤色の直線、黄色の直線の位置
青色の円は壁の中心を中心とする直径80インチ(200cm)で、赤色の線は円の中心と円周を結ぶ線分の中点から壁の右上方向へ壁の右上角まで描かれ、黄色の線は赤色の線が円周と交わる点から円周と壁の左辺の中点を結ぶ線分を二等分する点まで描かれる
繰り返しますが、これが作品のタイトルです。そして同時に、作品を制作する際の指示にもなっています。この指示通りに作られたのがこの作品です。


なんとなく、「タイトル=制作指示」の意味を理解していただけたでしょうか?
さらに面白いことに、ソル・ルウィットは「制作指示」を示しただけで、今回実際に展示された作品は彼が手を動かして制作したものではありません。そのことは、作品のキャプションを見ても理解できるでしょう。

以前も同じような趣向の作品(指示のみが存在し、制作者は別の人)をどこかで観たことがあって、でもそれがソル・ルウィットのものだったかは永遠に思い出せませんが、これは作品の残し方として非常に面白いなと感じました。
さて、先の「制作指示」はかなり具体的で緻密な感じがしたと思いますが、そうではないものもあります。
ウォール・ドローイング #46
垂直線、非直線、非接触、最大密度で均一に分散し、壁全体を覆う
そして、この指示によって作られたのがこの作品です。


先程の具体的なものとは違って、こちらは「こういう線で壁全体を覆う」というざっくりした指示だけであり、恐らく制作される度に完成作品は大きく異なるのだろうなと思います。
同じようなものとしてこんな作品もありました。
ウォール・ドローイング #104A
一万本のランダムな直線、長さ約4インチ(10cm)、10フィート(300cm)四方の枠内に描かれる


Artの文字から 青色の線は四隅へ、緑色の線は四辺へ、赤色の線は文字から文字へ

正直、「だから何だよ」って感じではあるし、「それに何の意味が?」って気もするのだけど、ただこんな風に「制作指示」が作品として残ることで、「いつどんな状況でも物質としての作品を再現できる」という在り方は凄く興味深いなと思います。ある意味でこれって「作品を永遠に残す方法」という感じがするし、ちょっと違うけど、伊勢神宮の式年遷宮にも近い思想にも思えて、なるほどなぁと感じたりしました。そういえば、物理の世界で実現している「量子テレポーテーション」なんてのも、結構近い話なんだよなぁ。「物質そのものをテレポーテーションする」のではなく、「物質が持っている情報を遠く先まで送り、そこで元の物質を復元する」というのが「量子テレポーテーション」なわけで、本質的には同じような方向性な感じがします。なんてことを観ている時に考えていたわけではないのですが、文章を書いているとあれこれ思考が浮かんでくるのも面白いところですね。
というわけで、今回はこの「タイトル=制作指示」であるいくつかの作品が興味深く、他はいつものように「よく分からんなぁ」という感じでしたが、行ってみて良かったなと思います。では、最後にいくつか写真を載せて終わりにしましょう。




今年も色んな展示に足を運ぼうと思います!
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