【映画】「セブン」感想・レビュー・解説

さて、本作を観ようと思ったのは、ネットの記事で、「映画『セブン』の基本情報を何も知らずに観に行った人」の記事タイトルと冒頭をチラ見したことだ。その記事に関連して、「何も知らないで『セブン』と出会えるなんて羨ましい」「記憶を無くしてもう一回観たい」と言ったコメントが集まっていたりして、「なるほど、それなら観てみるか」という感じになった。

ちなみに、今上映しているのはIMAXにバージョンアップしたものらしいのだが、正直僕にはIMAXの何がいいのかよく分からないので、別にIMAXじゃなくて全然良かった。でも、僕が行けそうな映画館ではIMAX上映しかしてなさそうだったので、仕方なくIMAXで観た感じである。やっぱり、IMAXで観たところで、普通と何が違うのか、僕には全然分からない。

さて、ストーリー的には、「割と良くあるミステリ的な展開」で進んでいく。連続殺人が起き、刑事が犯人を追う、というスタイルだ。刑事の1人が定年間際だったり、殺害の手法が相当えげつなかったりと色々特徴はあるが、中盤以降ぐらいまで「良くあるミステリな感じだな」と思いながら観ていた。

だから、「記憶を無くしてもう一回観たい」となるような何かがいつどう出てくるのか、と思いながら観ていた。

そしてラスト、なるほどこれはなかなかの展開だなと思うような雰囲気になっていく。連続殺人鬼の「狂気」が収まるべきところに収まっていく、みたいな感じがあり、そのやるせなさみたいなものに圧倒された。

が、やはりちょっとハードルを上げすぎたかなぁ、という感覚もある。決してつまらなかったわけではないし、観て良かったなと思う作品なのだが、さらにもっとフラットな状態で観れていたら(つまり「凄い作品だ」と評価されていることを知らずに観ていたら)、もっと「うぉっ」ってなっただろうなと思う。そこは少し残念なところではある。

あと、本作は「キリスト教の七つの大罪」をモチーフにしており、恐らくだが、僕が気づかなかったような様々な示唆・伏線・暗示みたいなものがあるのだと思う。この辺りはやはり、宗教的な知識を持たない人間の限界があるなという気がする。本作では、かなり「七つの大罪」のモチーフが組み込まれている感じがあるので、知識があればきっと、もっと色んな気付きが得られるんだろうと思う。仕方ないことだとはいえ、その辺りのことも少し残念だなと思っている。

物語は月曜日に始まる。とある大都会の殺人現場に、あと1週間で定年を迎える刑事サマセットがいる。妻が夫を殺したと思われる。そしてそこに、今日から赴任することになった新人刑事ミルズが現れる。まだ署にも顔を出していないが、事件だと思ってやってきたという。彼は別の署で5年間殺人課に勤務しており、そして、喧嘩してまでこの街にやってきた。そのことに、サマセットは不審感を抱いている。どうしてこんな街にわざわざやってきたのか、と。

2人は、1週間と短い間ではあるが上司・部下の関係になる。しかしサマセットはミルズに、「1週間は見ているだけでいい」と指示した。捜査をやらせるつもりはないようだ。

そんな中、死体発見の通報があった。なかなか酷い現場で、ミルズの言葉を借りれば「ギネス級」に太った男が、スパゲッティに顔を埋めて死んでいる。ミルズは最初、心臓発作だろうと思ったのだが、手首・足首を縛られていることが分かり、殺人の可能性が高まった。そして解剖の結果、胃が極限まで膨張し、内壁に裂け目が出来ていたことが分かった。現場の状況から、「犯人が被害者を銃で脅し、信じられないぐらいの量の食事を胃に詰め込ませたことで殺された」と判断された。

そして翌日。強欲な弁護士グールドの死体が発見され、死体の傍の床には「GREED(強欲)」と書かれていた。また、食わされすぎて殺された男性の家の冷蔵庫の裏には、「GLUTTONY(大食)」の文字が。これらからサマセットは、「七つの大罪になぞらえて事件を起こしている」と推理。そして、「定年まで1週間しかない刑事の仕事じゃない」と担当から降りることを宣言した。しかし上司はそれを認めず、サマセットは事件に関わらざるを得なくなる。

その後も、同一犯によるものと思われる死体は見つかるものの、犯人の手がかりは一切なし。とある経緯から犯人と目されていた人物も、実は被害者になっていたことが判明した。見通しが立たない中、ある時サマセットが1つの策を思いつき、ついに犯人に肉薄することになったのだが……。

というような話です。

「七つの大罪」になぞらえた殺人はかなり狂気的だし、イカれている。そしてそんな連続殺人鬼を追う刑事2人も凸凹コンビという感じで結構面白い。物語の展開も、基本的には「事件が起こり、刑事が捜査する」という感じなのでシンプルと言えるだろう。そしてそういう事件捜査の合間合間に、ミルズと妻の話だったり、定年を迎えるサマセットの心境なんかが挟み込まれたりする。

全体の中で、僕が一番興味深いと感じたセリフが、サマセットが口にする次のようなものだ。

【救助されたら役立つように、無人島でダイヤ集めだ。】

このセリフだけでは意味が分からないだろう。こう口にするまでに、こんなやり取りがあった。

捜査の後で、疲れた2人がベンチに座り、結果的にそのまま朝を迎えるシーンがある。そしてその際の2人の会話の中で、「『絶対に犯人を見つけてやる』ってさっき言ってただろ。俺にも、そう思っていた時期がある」とサマセットが話し始めるのだ。

ミルズは「犯人を逮捕すること」こそが何よりも大事だと思っているので、サマセットに「犯人を逮捕しないで何をするんだ?」と聞き返す。サマセットの返答は「捜査だ」である。「証拠を集め、書類を書き、もし裁判になった時に使えるように保管しておく」というわけだ。

続けてミルズが、「それで?」と聞くと、「That’s it.(それで終わりだ)」と答えていた。犯人の逮捕が出来るかは分からないが、捜査なら出来るというわけだ。そしてその状態を、「救助されたら役立つように、無人島でダイヤ集めだ」と表現していたのである。

このシーンが描かれるよりも前に、サマセットにある人物(年齢は下だけど上司的な存在だと思う)が「定年後はどうするんだ」と聞いていた。サマセットは「畑を耕したり、家を修繕したりするよ」と答えるのだが、その人物は「刑事はお前の天職だし、止められないだろ」みたいなことを言う。しかしサマセットは「せいせいするよ」みたいなことを口にするのである。

このシーンの時点では、「サマセットがある種の強がりでそんなことを言っているんだろう」と思っていたのだが、「無人島でダイヤ集め」の話を聞いて印象が変わった。サマセットは本当にうんざりしていたのだろう。そりゃあサマセットだって、犯人の逮捕をしたいと思っているだろう。しかし、大体の場合そうはいかない。解決できない事件の方が圧倒的なのだ。そして、そんな現実にうんざりしたということなのだと思う。

そしてだからこそ、血気盛んと言っていい新人のミルズとの関わりの中で、少しずつ何かが変わっていくような雰囲気が生まれるのだと思う。そんなわけで本作では、捜査を行うサマセットとミルズの関係性がなかなか魅力的な物語だと思う。

そして、「ヤバい連続殺人鬼」と「良き関係を築いたサマセットとミルズ」の3人がラスト一同に介すことで、最低最悪な状況を迎えてしまうわけで、その辺りの物語の展開もなかなか良かったなと思う。

しかし、フィクションとはいえ、凄まじいことを考えるものだなと思う。そして、「そんなラストを構想するような連続殺人鬼」をリアルに見せるための連続殺人事件の内容も良かったと思うし、よく出来ているなという感じだった。

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