【映画】「歩いても歩いても」感想・レビュー・解説
ムチャクチャ面白かったな。マジでビックリした!「台風だし、観ようかどうしようか」とか思ってたんだけど、これは観て大正解だな。ビックリするぐらい面白かった。
というわけで、今日も今日とて国立映画アーカイブでの是枝裕和特集。この特集上映は明日までで、今月はとにかくこの是枝裕和特集を観た関係もあって普段よりも映画観てる本数が多い気がする。僕はあと1回、この後の台風次第だが、もう一回国立映画アーカイブに行く予定である。
さてメチャクチャ面白かったのだが、ストーリーとしては別に全然大した話ではない。要約すれば、「東京で働く良多(だが現在は失業中)が、妻・ゆかりと息子・あつし(ゆかりの連れ子)と一緒に、兄・純平の命日に帰省し、未だに世話を焼きたがる母・とし子や確執のある父・恭平、また姉夫婦とその子どもらと関わる1日(2日?)を描く物語」である。人間関係的には色々あるんだが、物語的には「実家に帰省しただけ」である。
なんだけど、そんな作品がまあ面白いんだよなぁ。凄いもんだわ。
とにかく何が凄いって、会話が徹底的に面白い。客席からも何度も笑い声が上がっていたし、僕も笑ったなぁ。
ただホントに、大した話をしてるわけじゃない。だから、笑ったシーンのことも全然覚えてないんだよなぁ。1個覚えてるのは、「なんで『おばあちゃん家』なんだ?」である。これはメチャクチャ面白い。その後良多の姉・ちなみが口にした「小さい」ってセリフも含めて、これは笑ったなぁ。
まあでも、ホントにほぼ覚えていない。繰り返しになるが、内容的にはマジで大した話をしていないからだ。なので、ホントに随所で笑えてしまう。この会話劇はホントに見事だと思う。
また会話の上手さで言えばもう1つ、「何でもない会話の端々から、彼らが抱えている事情や関係性が理解できる」ということだ。本作には、誰がどんな葛藤を抱えていて、誰とどういう関係性にあるのかみたいなほぼ説明されないが、それらが、「実家に帰省した者たちの自然な会話」の端々から容易に読み取れる。
登場人物は多いし、「誰が誰にどういう感情を抱いていて、でも表向きはそうじゃない風に振る舞っている」みたいなのが結構ややこしいはずだし、たぶん文字で書くと色々説明が大変になる感じがする。しかしそういう結構複雑な情報を、自然で面白い会話だけでちゃんと伝えてしまうんだから、凄い手腕だなと感じた。
さらに、そんな会話の面白さの大黒柱(という表現でいいのかな?)となっている樹木希林がまあ見事だった。ホントに「実家にいる母親(祖母)」を体現しているような存在で、誰が見ても「うんうん、こんな感じだわー」ってなるんじゃないかという造形で、そのあるある感がまず凄い。しかも、娘のちなみ(YOU)との掛け合いも完璧で(脚本通りに喋ってるとしたら自然すぎて凄い)、この2人の会話はラジオ的に延々と聴いてられるかもなー、なんて思えるほどだった。
でさらに凄いのが、全編に渡って「ザ・母親(祖母)」みたいな印象(概ね「良い感じの雰囲気」ということ)を与える存在なのに、ところどころ絶妙に毒気が混ざるところである。悪気(悪意)あってのものから(これはあの太った青年に対するものが顕著)、あるいは悪気が無い(無いように見える)ものまで(これは良多の妻・ゆかりに対するものが顕著)など、その振り幅もさすがで、本当に素晴らしかった。しかもそれでいて、「良い人」みたいな印象が崩れないのも不思議で、こういう雰囲気を出せる役者は本当に少ないだろうなぁ、と思う。とにかく最初から最後まで、「樹木希林すげぇー」ってなってた。樹木希林の凄さなんて元々知ってるわけだけど、それでも改めてそんな風に思わせるところがさすだよなという感じ。
というわけで、ホントに「設定」と「会話」ぐらいしかない作品なので、正直感想として書けることはあまりない。普段なら、良い作品に出会うとあーだこーだ長々と書くのだけど、本作には書けることあんまりないんだよなぁ。という、珍しいタイプの作品。というわけで、感想はいつもと比べれば短いが、メチャクチャ面白い作品だった。何も起こらないと言えば起こらないが、是非オススメしたい作品である。
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