【映画】「LOST LAND/ロストランド」感想・レビュー・解説
最終的にはとても興味深い映画だったなと思う。
これは僕のせいなのだが、冒頭はしばらく眠かった(基本的に、常に眠い)。だから、ところどころウトウトしながら観てしまっていた。のだけど、途中でバキッと目が覚めた。「そんな話になるのか!」という感じだったからだ。
本作は、「ロヒンギャ難民」を扱っている。「ロヒンギャ」という名前は映画を観る前の時点で知っていたが、どの国の話なのかは知らなかったし(僕はなんとなくアフリカだと思っていたのだが、どうやらミャンマーらしい)、そういう「全然知識ない人」として本作を観た。冒頭ウトウトしていたからかもしれないが、結局「ロヒンギャが何故難民になり、何故迫害されているのか?」みたいなことも未だによく分からない。
というわけで調べてみた。このサイトにまとまっている。酷いものだ。
さて、僕が本作を観ようと思った理由の1つは、本作の監督が日本人だという点にある。本作は、全編に渡って外国人が出演し、外国で撮影されているわけで、普通に観たら「日本人監督の作品」とは想像出来ないだろう。僕は予告で本作の存在を知ったのだけど、そこで監督が日本人だということも知り、驚かされてしまった。
で、予告の段階で「ロヒンギャ難民が出演している映画」だということは知っていたのだけど、鑑賞後に公式HPを見て驚いた。本作にはなんと、200名ものロヒンギャ難民が出演しているというのだ。本作はドキュメンタリー映画ではないが、「ロヒンギャの迫害を、ロヒンギャが演じている」という意味で、かなりドキュメンタリーに近い作品と言ってもいいのではないかと思う。
さらに、これも公式HPを見て知ったことだが、主演の姉弟は、実際の姉弟らしい。僕は鑑賞前の時点で、この主演の2人がロヒンギャだろうなとは思っていたので、「演技経験ないだろうに、演技上手いなぁ」と思っていたのだが、実際の姉弟だというならその辺りも割と納得である。
というわけで、「実際に起こっていることをリアルタイムで追いかけている」という意味でのドキュメンタリーではないのだが、「当事者が自身の置かれた状況を自ら演じている」という意味で、限りなくドキュメンタリー感の強い作品だなと思う。
さて、冒頭からしばらく眠かったのは、僕が常に睡魔に襲われているからということもあるのだが、「演技未経験のロヒンギャたちによる映画」だったという点ももしかしたら関係しているかもしれない。また、冒頭からしばらくは、「ロヒンギャの家族たちが密航船に乗り、マレーシアを目指すのだが、途中で警備艇に見つかり、それでもどうにか振り切ってマレーシアを目指す」みたいな展開で、正直「彼らの背景説明」的な要素も含んだ展開だと思うので、そういう意味でもあまり興味が持てなかったということもあるだろう。
ただ、彼らがマレーシアへの仲介業者から森の中で金を要求され、払えずに拘束されてから物語は大きく動く。彼らは、丸太を緩く組み合わせた檻みたいなところに入れられるのだが、身体の小さな子どもならスルッと抜けれてしまう隙間があり(まあ、大人も抜けれそうではあったが)、そこから、主人公の2人、9歳のソミーラと5歳のシャフィが抜け出すのだ。
で、彼らは、たった2人でマレーシアを目指すのである。
しかし、マレーシアまではたぶんまだ全然遠い。さらに彼らは、「マレーシアに叔父がいる」ということでマレーシアを目指しているのだが、彼ら自身はその叔父に関する情報を持っていない。だから端から全然無理な話なのだ。
しかし、姉のソミーラは弟に「家に帰るよ」と言って勇気づけ、パスポートもお金もないまま、どうにか前進し続ける。物語の中盤からは、そんな2人の命を懸けた旅路が描かれるわけで、僕はそうなってからギュインと眠気が吹っ飛んで、それからは画面を凝視するように見させられてしまった感じである。
しかし、これは日本人だからの感覚なんだと思うが、「民族が違うから迫害する」みたいなことの意味がよく分からない。日本にもアイヌ民族がいるけど、少なくとも僕は「アイヌの人だから」みたいな区別をしているつもりはない(身近で関わることがないから認識できないだけかもしれないが)。あるいは、これは民族の話ではないが、日本の「部落差別」もマジで意味が分からなすぎる。そもそもどんな理由であれ差別とかは良くないが、しかし例えば「過去に罪を犯した人」とかは多少なりとも「差別されても仕方ないよなぁ」と思える部分はある。けど、「民族の違い」には、全然そんな風に感じられない。意味不明すぎるんだよなぁ。
ホロコーストの映画を観たりするとよく思うことなんだけど、「ユダヤ人かどうか」みたいなことは外見で分かるんだろうか? この辺りも、外国人である僕にはピンと来ない部分だ。ロヒンギャにしても、「ロヒンギャである」ということが、外見で区別出来るんだろうか? 「区別出来れば差別していい」なんて主張をしたいわけではないが、外見で分かるならまだ「差別してしまう気持ち」を理解する糸口にはなるなと思う。けど、もし「外見じゃ分からない」としたら、本当に一体何を以って差別が生まれ得るのか、全然理解できない。
ホント、世の中は大変お狂いになっていますわよね。
映画の最後に、「旅の過程で命を落とした者とロヒンギャの未来に捧ぐ」という字幕が表示された。また、ちゃんとした文章は覚えていないが、「取材に応じて下さった方に感謝します」みたいな字幕もあった。恐らく、色んなロヒンギャから聞いて話をミックスして作り上げた脚本なんだろうし、だとすれば、個々のエピソードは実際にあったことだと考えていいのだろう。「子どもたちだけで逃避行を続ける」というのも、きっと実際にあったんだと思う。
もう何が最悪って、子どもが被害に遭うことが何よりも最悪だし、そんなクソみたいな世界は滅びればいいのになと感じる。本作では、弟はかなり辛そうだったが、そんな弟を宥めたりする姉はどうにか明るくしようと頑張っていて、そういう健気な感じは良かったし、同時に、9歳の女の子に背負わせていい現実じゃねーとも思った。
そんなわけで、「映画としての出来」みたいな話をするなら、「演技未経験者が多く出演している」という点も含め、どうしてもクオリティが高いものにはなり得ない。が、「フィクションではあるが、圧倒的なリアリティがある」という意味では非常にインパクトの強い作品だとも感じた。映画としてどう受け取るかは人それぞれだろうが、「こんな現実が世の中に存在しているのだ」という知識を得るという意味でも触れておくべき作品ではないかと思う。
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