【映画】「アトランティス」感想・レビュー・解説

『アトランティス』という映画がいつ完成したのかわからないが、少なくとも、2019年に第76回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門作品賞、東京国際映画祭審査委員特別賞を受賞している。

その事実を知ると、なかなか驚かされるだろう。何故ならこの映画の舞台は、「ウクライナ東部で戦争が終結して1年後の2025年」だからだ。まさに、現実を引き写したような世界と言えるのではないだろうか。

この映画はどうやら、映画『リフレクション』の続編という立ち位置のようだ。僕は『リフレクション』をまだ観ていないが、『リフレクション』は「2014年に侵略戦争が始まった」という舞台が描かれているそうだ。まさにこれは、クリミア併合を指しているのだろう。

つまり、『アトランティス』で描かれるのは、「2014年に始まった侵略戦争が終わった世界」というわけだ。映画でも実際、「侵略戦争に10年掛かった」というようなセリフが出てきます。

だから決して、2022年にロシアがウクライナに侵攻することを予見していた、というわけではありません。

しかし、そのような映画の背景を知らずに観たら、やはり驚かされてしまうでしょう。これほどまでに時代を映し出すフィクションも、なかなかないと思います。

正直なところ、映画全体としてはちょっと退屈だった。セリフがほぼ存在せず、なんとなくしか状況が分からない。物語は非常にゆっくりと展開していくので、申し訳ないが途中でうつらうつらしながら観る感じになってしまった。

ただ、映像は凄く好きだなと思う。

非常に特徴的だと感じたのは、画面の構図だ。まず、映画の間、カメラはほぼ動かない。僕の記憶では、カメラが固定されず空間を動くシーンは2つしかなかったと思うが、それぐらい、カメラは固定されたまま、カット割りもなく、同じショットからのアングルで映画が展開されていく。

さらにそのアングルが、「その場面における『正面』」を絶妙に捉えたものだと感じさせるのだ。これがとても良かった。それが可能なシーンでは、背景はかなりシンメトリーを意識してカメラの場所が決められている。そして、そのアングルが固定されたまま、ワンカットで撮影が続き、画面上で人が動いたり出入りしたりしながら1つのシーンが完成する、という構成になっている。

これはとても綺麗だな、と思った。

「映像が綺麗」という場合、普通は「色彩」とか「照明」とかそういう話になるでしょうが、この映画の場合は「構図」が凄く綺麗で、そこがメチャクチャ良かったです。正直途中から、物語ではなく映像の構図だけ追っているような感じでした。悲惨な状況も描かれるが、「戦争終結後の話」なので、悲惨さよりも構図の美しさの方が目立つ。スクリーンの周囲を「額縁」とした1枚の絵のようなシーンで構成される映画が、非常に印象的だった。

また、映画の冒頭でラストは、サーモグラフィーカメラで撮影されている。これもとても印象的だったと感じる。今まで映画で観たことがない斬新さもありつつ、「周囲が真っ暗である中で展開される時間」が、「人間の体温を感じさせる映像」で描かれるという意味合いみたいなものも感じ、その美しさにも惹かれた。

良いか悪いかではなかなか判断しにくい映画だが、とにかく「構図の美しさ」は間違いなく感じられるでしょう。『リフレクション』についても、どこかのタイミングで観てみたいと思います。

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