【映画】「カプリコン・1」感想・レビュー・解説
メチャクチャ面白かった! 相変わらず、ほぼ内容を知らないまま観に行ったが、これはホントよく出来てるなぁ。1978年公開というのも絶妙な時代設定である。現代では成立しない物語だからだ。
というわけで、本作は「午前十時の映画祭」での鑑賞。大体いつも10時前後に上映しているのだが、今回は何故か夜の部もあった。そういうパターンもあるのか。
ちなみに「タイトルに1がついてるから、シリーズモノなのかな?」と思ったのだが、そういうことではないらしい。「カプリコン1号」という名前の有人火星探査宇宙船が登場する作品で、それがそのまま映画のタイトルにもなっているということのようだ。
さて、本作は「冒頭」「第1幕」「第2幕」に分けられると思う。で、ネタバレを避けたいので、本当なら「冒頭」だけの紹介に留めたいのだが、さすがにそれだと何の話も出来ないので、「第1幕」の内容には触れようと思う。ただ「第2幕」の手前までで内容の説明は終えるつもりだ。
物語は、人類初の有人火星探査のため、「カプリコン1号」の打ち上げが間近に迫ったところから始まる。冒頭の時点で、あと32分で発射、というタイミングである。宇宙飛行士3人も準備を整え、宇宙船へと乗り込んだ。あとは発射を待つばかりである。
しかしそんなタイミングで見知らぬ人物が宇宙船の扉を開け、中にいる3人に「緊急事態だから今すぐここを出ろ」と言われる。3人はまったく事情が呑み込めないまま宇宙船を出て、ヘリへと乗せられた。
さて、そんな事態が起こっていたにも拘らず、何故かロケットの発射準備は止まっておらず、というか、船内の宇宙飛行士ともやり取りが続いている。この計画の総責任者であるケラウェイ博士も何事もないかのように発射準備を見つめ、そしてついにロケットは発射した。実際には宇宙飛行士は乗っていないにも拘らず、まるで3人が乗ったまま発射したかのような状況が作られているのである。
一方、連れ去られた3人は砂漠の中の建物へと連れて行かれ、会議室みたいなところで待つように言われる。まったく状況が理解できない中、やってきたのはケラウェイ博士である。3人の内の1人とは、もう16年にもなる長い付き合いで、「火星を目指す」と言って周囲から笑われていた時代からの関わりである。
そしてそんなケラウェイ博士から驚きの事実が明かされる。宇宙開発に巨額のお金が費やされていることへのプレッシャーも背景にあるのだろう、なんと、企業から納入された生命維持装置が欠陥品だったという。その事実に気づいたのが20日前、そのまま飛び立てば3週間で命を落としてしまうような代物だ。
もちろん、その事実を公表し、計画自体をストップすることも出来た。が、そう簡単にはいかない。国内に様々な問題が山積する中、「夢にお金をつぎ込むのか」みたいな批判があるからだ。また大統領からも2週間前に「絶対に失敗は許されないぞ」と念を押されていた。そういう中で「ロケットは飛びません」とは言えないのだ。
だったらどうするのか? ケラウェイは、3人が拒否するような驚愕の計画を提案するのだが……。
というような話です。
少し前に『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』という映画を観たが、描き方や状況設定などは色々と違うものの、近いテーマを扱っていて、「アメリカではやはり、こういう話はテーマとして出てくるんだな」と思う。もちろんこれは、明らかに「月面着陸の映像は地上で撮影したフェイクなんじゃないか?」みたいな都市伝説を背景にしている。
そう本作でも、宇宙飛行士たちは仕方なく、「映像の捏造」に協力することになるのだ。これが「現代では不可能な設定」の理由だ。というのも、当時はまだスマホもないし、ビデオカメラもきっと大型で性能も高くなかっただろうから、「宇宙飛行士の状況を常時カメラで映す」ということがない。だから彼らは、「20分遅れで映像が届くという設定の、火星着陸時の映像(これはテレビ放送される)」と、「地球への帰還時に、地球に近づいているからこそリアルタイムでやり取り可能な状況で妻と会話する」という2つの状況さえ乗り切ればいいのだ。
いや、他にも色々問題はあるが、ケラウェイはぬかりなく準備している。宇宙センターのスタッフが宇宙船の宇宙飛行士と会話しているように装えているのは、訓練中に録音していた様々な音声を流しているからだ(にしても、地球への帰還までの259日間をそれで乗り切るのはかなり無理があるよなとは思うが)。また、帰還時は、「救助ポッドが海に落水してから引き上げるのに1時間半かかる」ことを利用し、「救助ポッドの落水後に、ヘリで3人を救助ポッドまで運び、ずっとそこにいたかのように装う」という計画を立てているのだ。ケラウェイ自身も「運が良ければバレない」と、このミッションが成立する可能性が低いことを理解しているのだが、この新たなミッションに関してはケラウェイが責任者なわけではなく、もっと上位の存在に命じられているようなので、ケラウェイもまた「やるしかない」という立場に置かれているのである。
みたいな設定が、まず絶妙に素晴らしいなと感じた。
で、勘の良い人ならきっと想像できるだろうが(僕は勘が悪いので全然分からなかったが)、「第2幕」も「なるほどなぁ!」という展開になっていく。「第1幕」のテーマが「葛藤」だとすれば、「第2幕」は「逃走と追跡」であり、「第1幕」とはまた全然違った展開になっていく。
後半は後半でマジでぶっ飛んでて、特に「カーチェイス」ならぬ「エアチェイス」(でいいのか?)は圧巻だった。凄いな、これ。マジでどうやって撮ってるんだろう? しがみついてるのも凄いけど、ヘリを岸壁にぶつけて大破させるシーンも「よく撮ったな」って感じだった。実は小さいラジコンヘリで撮影してるとかなんかなぁ。あるいは、実物大のヘリをラジコンみたいに遠隔操作できるように改造したとか?
で、彼ら宇宙飛行士の物語と並走する形で、「『なんか変だぞ』と感じて取材を続ける記者の物語」が描かれる。こっちも結構面白いんだよなぁ。
このミッションを計画した人物(か組織)は、非人道的なことも平気でやっちゃうみたいなところがたぶんあって、そういう意味でもメチャクチャ危険なのだが、やはり「バレたらマジで国家の威信に関わる」みたいな秘密だったりするので、徹底的に秘匿しようとする感じもある。たぶんかなりデカい組織が裏で動いているっぽくて(FBIも絡んでるっぽいしなぁ)、だから普通には追えない謎なのだけど、本作で探偵役を務める記者は、実にちょっとした違和感を気にして繋ぎ合わせて、少しずつ真相に迫っていく。
まあもちろん、「それだけで、無理あるやろ」って感じはあるのだが、ンなこと言ったら、本作は全編に渡ってそんな印象があるわけで、だから「記者の取材が無理すぎ」みたいなことも大した問題じゃない。違うかもしれないが、「木を隠すなら森を作れ」的なことだろう。
いやしかし、冒頭で整備士みたいな人が「240億ドルも掛かってるんですから」みたいなことを言っていたが、そんな超ドデカイプロジェクトを「やっぱり駄目でした」みたいに言うのは相当勇気要るよなぁ。だからまあ、隠したくなる気持ちは分からんではない。が、にしたって、「さすがに259日間も隠し通すのは無理だろ」と思うし、だから全然リアリティはないのだが、それでも、「こうなっちゃう可能性もゼロではないかぁ」とも感じる。
そんなわけで、「ンなアホな」という話なのだが、「極限状況だとそうなっちゃうかもね」とも思うし、さらに「完全に巻き込まれただけの宇宙飛行士たちの葛藤や逃避行」が実に興味深い作品だったなと思う。これは観て良かったなぁ。ホント、ところどころで「何コレ?」って笑っちゃうぐらいアホみたいな話なのだが、作中ではみんな真剣だし、そのアンバランス感もとても良かった。
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