【映画】「私たちは森の果実」感想・レビュー・解説

うーむ、あんまりおもしろくなかったかなぁ。

「少数民族のドキュメンタリー映画」ぐらいの認識だけで観に行ったのだが、本作で扱われている「ブノン族」は、ちょっと意外な状況に置かれていた。

住民のほとんどが銀行から借金をしているというのだ。もしかしたら、現代ではよくある話なのかもしれないが、僕は初めて聞いたので、「そんなことあるんだ」と感じた。

ブノン族は元々「誰のものでもない森」の「自由なところ」に畑を作り生きてきたそうなのだが、企業により森林開拓により、僅かな土地を残して彼らの「森」が他人のものになってしまった。彼らの土地は「企業の土地」に囲まれてしまっているようで、「もうどこに行けばいいのか分からない」みたいなことを言っていた。

彼らはその狭い畑に様々なものを植え、それをお金に換えているのだが、「市場」の変動により需給が変わると仲買人に言われ、その度に植える作物を変えているという。本作では、この部族出身の若者(年齢はよく分からないが)のナレーションベースで展開していくのだが、彼は「『市場』が何か分からないから、言われるがままだ」みたいなことを言っていた。

銀行は当然土地と建物を抵当に入れており、返済の期限をすぎれば取られてしまう。だから彼らは木を切る。本当は切りたくはない。彼らが信じる「精霊」の棲家である木を切り倒すのは忍びないし、さらに言えば、僅かな森を自ら減らす行動でもあるのだ。

かなり資本主義にさらされてしまっているようだ。

観ている間はよく分からなかったが、本作の舞台はカンボジアだそうだ。現代であれば、どの国でも「先住民」「少数民族」は保護の対象だったりするだろうし、住む土地やその生活は法的な根拠を基に守られたりもするように思うが、カンボジアでは恐らくそのような仕組みがないんだろうなと思う。もう少し違う国であれば、違った対応になっていたのではないかと思う。

さて、ナレーションを語る青年が「住環境」以外に嘆いていた大きな要素が「信仰」である。彼らは元々「精霊」を信じており、「耕作の際には5回、精霊に供物を捧げる」みたいに話していた(映像では、供物はニワトリだったと思う)。また彼らは森を5種類に分類しており、その内の「禁じられた森」で狩りをする場合には、必ず精霊に向けた儀式を行うそうだ。そうしなければ、獲物が獲れなかったり、怪我をしたりするらしい。青年は、「精霊の存在を感じられないとしても、事故が起これば、それを森の力だと思う」みたいに話していた。

しかし今では、ブノン族の7割がキリスト教に改宗しているらしい。資本主義とはまた違った形で文化が侵略されているというわけだ。キリスト教になったブノン族は、「めんどくさいから」という理由で供物を捧げる儀式を避けがちだそうだ。またキリスト教になると、「供物は食べない」と約束させられるそうだ(詳しいことは語られなかったと思うが、供物として捧げたニワトリなどは、その後ブノン族の面々が食べるという慣習なのだろう)。青年は、「食べたとしても、それを彼らは供物だとは思わない」とも言っていた。「供物」などという存在を端から無視しているみたいなことなのだろう。

本作ではナレーションの青年は、「父親の世代では~」という言い方を頻繁にしていた。それは概ね、「父親の世代は良かったのに、今は……」という言い方だった。つまり、ブノン族の変化はここ20~30年の間に急速に起こっているということなのだろう。彼らがいつから歴史を刻んでいるのか知らないが、数百年みたいな単位だろうから、ちょっとあり得ないスピードで様々な事柄が変わってしまったのだろう。

さて、本作を観ながら僕が不思議だったのは「言語」についてだ。青年はナレーションで、「僕たちは『未開地のブノン』と呼ばれている。ブノンというのが悪口になっているんだ。同じ地球に住む人間なのに、存在も言語もまったく尊重されない」みたいなことを言っていた。その主張の切実さも興味深かったが、「言語も尊重されない」という言い方から、恐らく彼らは独自の言語体系を持っているのだと思う(それを「ブノン語」と呼ぶことにしよう)。

で、恐らくこの青年はブノン語で語っていると思うのだが、だとすれば、「企業」「仲買人」「市場」みたいな単語がそもそも存在したんだろうか? みたいに感じさせられた。まあこの辺りは実際には、「必要に迫られて外国語を取り入れた」みたいな理解が最もシンプルだと思うのだが、何にせよ、少数民族の言語の場合「『存在しない概念』を言語化しなければならない」みたいなことも多いだろうから、その辺りも興味深いなと感じた。

全体的にはそこまで面白いという感じではなかったが、「銀行に借金をしている少数民族がいる」というのはなかなか衝撃的な事実だったし、そういう事実が知れたことは良かったなと思う。


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