【映画】「RRR」感想・レビュー・解説
半端じゃない面白さだな、これ!昨日観た『MONDAYS』は、そのミニマムさでメチャクチャ面白い物語を生み出してたけど、『RRR』はその逆、とんでもない壮大さでぶっ飛んだ映画にしてる。
なにせ、制作費が7200万ドル(約97億円)で、インド映画史上最高なのだそうだ。ハリウッド映画だともっと制作費が掛かるだろうが、ハリウッド映画の場合はキャストへのギャラが高額という要因もあると思う。『RRR』の役者がインドでどれぐらいの人で、どのぐらいのギャラをもらっているのか知らないが、普通に考えればハリウッド俳優よりは遥かに少ないだろう。そう考えると、制作費のほとんどは、メインの役者ではなく、セットやエキストラなどに注ぎ込まれていると考えていいのではないか。
それも納得の、超絶スペクタクル映画である。
まずは物語をざっと紹介しよう。
物語の舞台は1920年のインド。当時は、イギリスが植民地支配しており、インドの人たちは「褐色人種」と呼ばれ、人ではない扱いを受けていた。
ある日、総督を引き連れた御一行が、アーディラーバードに住む部族の元を訪れた。マッリという少女は、歌いながら絵を描くのが得意で、その特技を総督の妻に披露するのだが、妻はそれを痛く気に入り、夫である総督に「暖炉の上に飾ってもいい?」と尋ねる。言葉の分からない部族の者たちは、妻が投げ捨てたお金を「絵の代価」と考えたが、その後すぐにマッリが総督一行に連れ去られてしまう。彼らは最初から、マッリを連れていき、総督府でも絵を描かせようと考えていたのだ。
わが子を守ろうと車に身を投げ出す母親に、兵士が銃を向ける。しかし総督がそれを止めた。その中の中に入っている銃弾は、英国の金属で作られ、7つの海を越えた。ここまで届くのに1ポンド掛かっている。そんなものを、褐色人ごときに使うのはもったいない、というのだ。そこで兵士は、そこらにあった木で母親を殴り倒し、一行はそのまま立ち去った。
一方、首都デリーでは、革命家の拘束に反対する民衆が兵舎を取り囲み、一触即発の状況を迎えていた。兵舎の内側では、イギリス軍のために働く現地採用の警察官もおり、その中にラーマという男がいる。
外の群衆の1人が兵舎の中に石を投げ込み、総督の肖像画が破壊された。それを見たイギリス兵の上官が「あの男を捕えろ」と下命した。すると、鉄格子の向こうで数千人はいるのではないかという人の渦の中に、なんとラーマは身一つで飛び込んでいき、石を投げ込んだ男を追いかける。当然、民衆は皆ラーマを食い止め、抑え込もうとするのだが、怪力を誇るラーマを止めることなどできない。ラーマはついに男を捕え、兵舎の内側に引きずり込んだのだ。
しかしその後、貢献のあったものを表彰する場で、ラーマは呼ばれなかった。彼はあからさまに失望した顔をする。
場面は変わり、あるインド人太守が総督の部下であるエドワードに忠告を届けにくる。なんでも、以前に連れてきた部族の女の子マッリを返した方がいい、というのだ。エドワードが理由を問うと、彼はこんな話をした。彼らはゴーンド族の者たちで、群れで暮らしている。そして彼らの生活を守る「羊飼い」と呼ばれる者がおり、仲間同士に何かあればその「羊飼い」が必ずややってくる。マッリを返さなければ、その「羊飼い」が執念深く追いかけてくるというのだ。
しかしエドワードは、褐色人がこの白人をどうにかできるはずもないと高をくくっている。
その「羊飼い」であるビームは、森の中で虎と闘っていた。もちろん、マッリを奪還するために手を尽くしている最中のことだ。半年間、探しに探しているが、未だに成果がない。しかし絶対に諦めるつもりなどない。
エドワードは警察官たちに向けて、太守の忠告を一応伝えた。しかし、その「羊飼い」の素性はまったく分からない。分からない者をどう捕えればいいのかと皆困惑するが、総督の妻が勝手に、「その『羊飼い』を捉えた者を特別保安官に任命する」と宣言した。それに反応したのがラーマだ。ラーマは、必ずやその「羊飼い」を探し出すべく、独自に捜査を開始する。
そんなある日、デリーの街を流れる川に架かる橋を進む電車が爆発炎上し、そのすぐ下で魚釣りをしていた少年が燃え盛る炎に囲まれて命の危機に瀕してしまう。たまたまその場に居合わせたラーマとビームは、その少年を救うべく、超絶無謀な救出作戦を即席でやり取りし、ついに誰も怪我することなく少年を救うことに成功する。
こうして彼らは、「追う/追われる」身であることに気づかないまま、唯一無二の親友となるのだが……。
というような話です。
かなり内容に触れたように思うかもしれないが、これは映画の冒頭も冒頭、ここからようやく話がグイグイっと展開していくというその入口に過ぎない。この少年を救出する場面は、この映画で初めて出てくる「超絶アクロバティックシーン」と言っていいが(ラーマが数千の群衆と闘ってる場面も凄まじいが)、映画が展開していくにつれ、その規模がどんどんと大きくなっていき、最終的にとんでもないレベルになる。そりゃあ100億円も掛かるよなぁ、と思うような映画である。
この物語、何が凄いって、「これからどんな展開になるのか想像ができる」ということだ。物語そのものはメチャクチャシンプルで、しかもご都合主義的な展開でも全然恥ずかしげもなく出してくるので、「こういう状況であれば、次はこうなるだろう」っていう展開が容易に想像できる。つまりそれは「王道の物語」というわけで、そういう意味で「万人が面白いと感じるだろうテンプレ感満載のストーリー」と言ってしまってもいい感じがある。
なんか凄く悪口を言っている気もするが、そうではない。この映画の凄いところはここからだ。「こういう展開になるんだろうな」という想像はもちろんできるのだが、「じゃあそれをどうやって実現するんだ?」っていう具体的なやり方が全然想像が付かない。で、あらゆる場面で、観客の予想を遥かに上回る「は???」と感じるしか無いやり方で、「いやいや絶対無理やん」と感じるような状況をなぎ倒していく。
この、「物語の展開の方向性は誰もが想像できるけど、それを実現するやり方は誰も想像つかない」という点が、この物語の最大の面白ポイントだと思う。
例えば、ビームはある場面で、「総督府から強引にマッリを救出する」という計画を立てる。その日は総督府でパーティーが行われており、人がとにかく多いし、警備もたぶん厳しい。そこに、ビームと仲間2人のたった3人だけで正面突破で乗り込んでいくのだ。こそこそ侵入するとかじゃない。正面の門をトラックでぶち破って侵入するという、正真正銘の正面突破である。
ただ、普通に考えて、たった3人で出来ることなどたかが知れている。ビーム以外の2人は別に喧嘩が強いわけでも武器の扱いに長けているわけでもない、普通の人だ。戦闘要員はビームしかいない。その状態でどうやってマッリを救うねん……って思うんだけど、これがまた想像もつかないぶっ飛んだやり方で実現していく。もちろん、「それどっから持ってきたん?」っていう謎は新たに出てくるわけだけど、でもそんなことはもうどうでも良くなる。総督府を一瞬でカオスの渦に叩き込んで、ビームがハチャメチャにかっ飛ばしていく。
最高だぜ。
3時間もある映画で、途中「INTERRRVAL」って表記されるから、「なるほど、ここで休憩なのね」と思ったら、全然休憩じゃなくてそのまま物語は進んでいった。あの「INTERRRVAL」って表記は一体なんだったんだろう???
3時間もあるとなかなか退屈に感じられる場面も出てきてしまうように思うが、この映画はホントに、最初から最後までずっと面白い。「飽きるポイント」が見当たらないのだ。で、こんなに超絶スペクタクル映画なのに、ちゃんと泣かせる物語にもなってるんだよなぁ。後半、ちょっと泣いちゃったわ。王道中の王道の話だから、普通に良い話なんだよなぁ。良い話なんだけど、あまりにもぶっ飛んでて途中笑っちゃうっていう、なんか変な映画。
特に良いなと思うのが、「INTERRRVAL」って表記以降濃密に描かれるようになったラーマの過去。このラーマの過去だけでも、ちょっとした中編映画になりそうなボリュームと濃密さがあってグッとくる。それまでなかなか理解できずにいた、「ラーマがイギリス軍の側に付き続ける理由」が明らかになり、さらにこの事実が明らかになることによって、ラーマとビームの関係に新たな展開がもたらされることになるという展開も良いよなぁ。
インド映画らしく歌って踊る場面も出てくるのだけど、この映画が良いのは「踊る理由」「歌う理由」がちゃんと示されているということ。
メチャクチャ踊るシーンは、ビームが総督府に住む女性から誘われたパーティーでの場面。その女性はイギリス人にしては珍しく、現地のインド人との交流も分け隔てなく行う人物で、彼女はビームに助けられたお礼にとパーティーに招待するのだ。
パーティーの場で、その女性と踊ろうと思っていたイギリス人男性が嫌がらせをしてくる。インド人なのに意中の女性とダンスをしているのが気に食わなかったからだ。彼は、フラメンコやタンゴなどのダンスステップを踏んでみせ、「教養のないお前らに、このどれか1つでも踊れるのかよ」と言ってくるのだ。
ビームは英語が分からないのでイギリス男性が何故キレていて、何をけしかけているのか理解できないのだが、英語を解すラーマがその態度にブチ切れ、インドの伝統的な踊りであるナートゥの音楽をドラムで叩き、ビームと共に踊りまくる。パーティー会場は、彼らが踊るナートゥの熱狂に包まれ、メチャクチャ盛り上げる、という展開だ。
この場面は、「お前らにはダンスなんか踊れないだろ」というイギリス人の蔑みを吹き飛ばすという重要な意味がある。こういう風に、必然性があるとかなり受け入れやすくなるなと感じた。
さらにある絶望的な場面でビームがその絶望を感じていないかのように歌う場面もある。ここでも、彼が歌う理由を観客は理解できるだろうと思う。そしてビームが歌うことが、さらにその後の展開を左右することになるのだ。
僕は、ミュージカル映画のように、「脈絡も必然も無いようにしか感じられないのに歌ったり踊ったりする映画」があまり得意ではない。インド映画は、なんとなく「まあいいか」と思えたりもするんだけど、『RRR』の場合はちゃんと脈絡も必然もあるところがとてもいいと思う。インド人の観客向けに歌と踊りをちゃんと入れ込みつつ、外国人の観客向けにちゃんとその理由付けをしているのかなと勝手に想像した。そういう作りも素晴らしい。
というわけで、最初から最後まで素晴らしいの一言だった。メチャクチャ楽しい。元気がない時に観たらスカッとできそうな映画だなと思う。「観る精神安定剤」みたいな。
あと、エンドロールもいいですね。インド映画らしく、出演者を含めた大勢の人間が巨大なセットを前に歌い踊っているんだけど、なんだかこのエンドロールの制作費だけで、そこそこの日本映画を1本ぐらい撮れるんじゃないかと思ったりしてしまった。
これは観た方がいい。『RRR』の公開に合わせて、『バーフバリ』も再上映するみたいだから観ようかな(観たことないのだ)。
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